激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

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第9部 倒錯のイグニス

#71 基礎訓練 応用編③

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 駅から隣町へ向かうバスは空いていた。
 通勤の時間帯は過ぎていたし、会社や学校のある市内とは方向が逆だからだろう。
 出口に近いベンチ式のシートに座って脚を組むと、しばらく物思いにふけった。
 ブレザーのポケットから、今しがた購入した媚薬の箱を取り出して、ためつすがめつ眺めてみる。
 本当にこんなものが効くのだろうか。
 以前ヤチカにもらったのは、いかにも効き目のありそうなアンプル剤だった。
 なのにこれは、名前からして丸薬っぽい。
 その証拠に、耳元に近づけて振ってみると、カサコソ音がした。
 試してみようか。
 どうせ、500円なんだし。
 思い切って、セロハンを破り、蓋をあけてみた。
 透明なビニール袋が6包ほど、入っていた。
 袋の中には、赤い丸薬が5つずつ入っている。
 下痢止めみたい、と杏里は思った。
 ひと袋だけ残し、あとはポケットにしまって、リュックの中からペットボトルを取り出した。
 袋を破り、中身を舌の上にあけ、スポーツドリンクで喉に流し込む。
 粒々が喉にひっかかって飲み込むのに若干苦労したが、何の味もしなかった。
 シートにもたれ、目をつぶる。
 媚薬の効果なんてものはね、しょせんブラーボ効果にすぎないのよ。
 もっくんのオネエ言葉が耳の奥によみがえる。
 じゃあ、効かないよね。
 私、正直、疑ってるもの。
 だって、ワンコインで買える媚薬なんて、どう考えても…。
 そこまで思いを巡らせた時だった。
 ふいに火が点ったように、身体の芯が熱くなった。
 胸の鼓動が徐々に高まってくるのがわかった。
 何もしていないのに、息が苦しくなる。
 呼吸が心なしか、せわしくなっているのだ。
 杏里は火照った頬を両手で挟んだ。
 え…?
 これって、まさか…?
 ふと目を開けると、向かい側のベンチシートに座っている中年男の姿が視界に入ってきた。
 茶色のジャンパーに薄汚いシャツとズボン。
 髪は頭頂近くまで後退し、年齢不詳の顔は下唇だけが異様に厚い。
 杏里の身に起きた変化に気づいたのか、男は食い入るような眼で、杏里の膝のあたりを見つめている。
 見られてる…。
 そう意識したとたん、うねるような快感が突き上げてきて、杏里は組んでいた足をほどき、男の期待に応えるようにそろそろと左右に開き始めた。
 男の陽に焼けた顔に、信じられないといった表情が浮かんだ。
 あまりの僥倖に、不自然なほど大きく身を乗り出してくる。
 靴を脱ぎ、両足をシートの上に引き上げると、杏里は両手で足首をつかんで、ぐいと更に股を広げてみせた。
 ただでさえ短いスカートが腹の上までめくれあがり、極限まで薄いショーツが空気にさらされる。
 男が狂ったようにズボンのファスナーを下ろし、汚れた下着の間から黒光りする肉棒を引きずり出した。
 貧相な外見にそぐわぬ、立派な一物だった。
 カリの部分が十分に張り出し、発達した亀頭が赤黒く充血している。
 獣のような唸り声を発して、男が両手でそれをしごき始めた。
 もっと、見て…。
 シートに深く身を沈め、杏里はぐいと腰を突き出した。
 ちっちゃなショーツに包まれた”唇”が、熱い涎を滲ませるのがわかった。
 薬の効果なのか、風邪を引いた時みたいに頭がぼうっとして、視野が狭くかすんで見える。
 そのゆらぐ視野の中心で、男がうめき、前かがみになった。
 床に大量の白濁した液体が飛び散ると同時に、青臭い臭いが杏里の鼻孔を突いた。
 嗅ぎ慣れた栗の花の匂いに、杏里ははっと我に返った。
 効いた…。
 股間を押さえて床にうずくまる男の背中を呆然と見下ろしながら、思った。
 もっくん、効いてるよ、性露丸…。
 すごい。
 おっかなびっくり、ブラウスの胸のあたりに指を這わせてみた。
 ブラジャーの上からでも、乳首がびんびんに勃っているのがわかった。
 当然、蜜壺の中は熱い蜜で溢れんばかりである。
 これなら、いけるかも。
 ただ、問題は、持続時間。
 ひと袋分で、どれだけの間、もつのだろう。
 ー次は、曙中学校前ー
 アナウンスに、よろめきながら杏里は立ち上がった。
 浄化された者の常で、男はうずくまったまま気を失っているようだ。
 空気が漏れるような音とともにドアが開くと、杏里は危なっかしい足取りでタラップを降りた。
 股間が疼き、そのせいでひどく内股になってしまっていたのである。

 



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