70 / 463
第9部 倒錯のイグニス
#69 基礎訓練 応用編①
しおりを挟む
翌日、杏里は早めに家を出た。
土曜日だから授業はないが、レスリング部の練習はある。
しかも、ほかのメンバーとは別に、杏里だけ午前中から特訓を受けねばならない。
きのうの外来種騒ぎから一転しての、日常への回帰である。
そのギャップの大きさに、さすがの杏里も戸惑わざるを得なかった。
かたや、人類の存亡にかかわる水面下での異種族たちとの戦い。
ところが、その傍ら今の杏里を苛んでいるのは、中学校の部活動に対する苦悩である。
客観的な視点からすれば、どう贔屓目に見ても、前者のほうが重要度は高いに違いない。
だが、一介の中学生である杏里にしてみれば、比重はどちらも同じなのだ。
外来種との戦いと同じくらい、レスリング部の練習は気が重い。
小百合との特訓もそうだが、午後からのチーム訓練となるとなおさらだ。
更には来週には紅白戦が控えている。
ちなみにもうひとつ付け加えると、明日の日曜日はイベントのための動画撮影である。
よくもまあ、こんなにプレッシャーが積み重なったものだと自分でも思う。
そこにいずなの身を案じる気持ちが加わって、杏里の心は今やパンク寸前だった。
学校へ行く前に”そこ”へ寄ることを思いついたのは、だからひとつには逃げ場を探してのことだったのかもしれなかった。
時間がないので、バスを使うしかない。
覚悟を決めて、杏里は市バスを待った。
5分としないうちに、満員のバスが重そうに車体を揺らしてやってきた。
駅前へ向かうバスは通勤客たちで混雑していて、杏里はたちまちのうちにもみくちゃにされた。
ブレザーを着ているとはいえ、杏里の胸はブラウスの上からもひと目でそれとわかるほど発達している。
なまじブラジャーが小さいため、乳房の形がすっかり浮彫りになってしまっているのだ。
おまけにスカートは膝上40センチの短さである。
臀部と太腿が成人女性並みであるだけに、立っていてもその裾から下着がのぞいてしまう。
そんな杏里を乗客たちが見逃すはずがなく、立錐の余地すらない車内で人垣に囲まれ、周囲から伸びてくる無数の手、身体中に押しつけられる猛り立った硬いものによって、杏里は恥辱の限りを尽くされた。
ブラウスをむしられ、さらけ出された乳房を千切れるほど揉みしだかれる。
あっというまにパンテイを膝まで下げられ、陰部に複数の指を挿入された。
それでもされるがままになってじっと我慢していると、血液の代わりに血管の中を愛液が流れるような快感に襲われ、杏里は知らぬ間に勃起した乳首と蜜穴から何度か淫汁を漏らしたようだった。
その証拠に、バスが終点に着く頃には、杏里の足元には絶頂に達して気を失った乗客たちが山のようにうずくまってしまっていた。
意識せずして、自動的に浄化が行われたのだ。
乱れた服装を整え、深呼吸ひとつすると、雑魚寝するように倒れ伏した乗客たちをまたいでバスを降りた。
今回の浄化はスムーズだった。
小百合の特訓、外来種との戦闘を通して、自分のタナトスとしての性能が一段と磨かれた気がした。
バスターミナルを横切り、大型ショッピングンモールの方角へ向かう。
が、目的はそこではない。
ショッピングモールの裏の、さびれた商店街のアーケードをくぐった。
5分ほど歩くと、1軒だけシャッターを上げたショーウィンドウが見えてきた。
朝っぱらから営業しているのは、けばけばしい衣装の飾られた、見るからにいかがわしい雰囲気の店である。
『ドリームハウス』
店の名に覚えがあった。
いつかヤチカと来たことのある、アダルトショップ。
あれは、零に監禁された由羅を助けに行く直前のことだった。
「もっくん、いますか?」
中に入ると、店の奥に向かって思い切って声をかけた。
中学生にはいかにも不似合いな場所である。
迷路のような通路の左右にを埋め尽くすのは、セクシーなランジェリーやキャバ嬢向けのミニドレスばかり。
顧客の大半が、駅裏の風俗で働く女性たちだからである。
朝早くから店を開けているのも、仕事帰りのホステスたちを当て込んでのことだろう。
「いらっしゃあい」
衣装をかき分けて現れたのは、素肌の上に黒い革ジャンを着た、スキンヘッドにミラーグラスの恐ろしげな男。
この店の主人、もっくんだ。
「あのう」
言いかけると、
もっくんのほうが先に反応した。
「あらあん、あなた、いつかの子猫ちゃんじゃなあい?」
「は、はい」
覚えててくれたんだ。
杏里はほっと肩の力を抜いた。
「どうしたの? こんな朝早くから? きょうはヤチカちゃんは一緒じゃないの? ていうか、ヤチカちゃんの姿、最近見ないのよねえん。見なくなって、もう1ヶ月になるかしら。ねえ。あなた、何か知らない?」
杏里の顔をのぞきこむと、耳障りのいいオネエ言葉で、心配そうにもっくんが言った。
土曜日だから授業はないが、レスリング部の練習はある。
しかも、ほかのメンバーとは別に、杏里だけ午前中から特訓を受けねばならない。
きのうの外来種騒ぎから一転しての、日常への回帰である。
そのギャップの大きさに、さすがの杏里も戸惑わざるを得なかった。
かたや、人類の存亡にかかわる水面下での異種族たちとの戦い。
ところが、その傍ら今の杏里を苛んでいるのは、中学校の部活動に対する苦悩である。
客観的な視点からすれば、どう贔屓目に見ても、前者のほうが重要度は高いに違いない。
だが、一介の中学生である杏里にしてみれば、比重はどちらも同じなのだ。
外来種との戦いと同じくらい、レスリング部の練習は気が重い。
小百合との特訓もそうだが、午後からのチーム訓練となるとなおさらだ。
更には来週には紅白戦が控えている。
ちなみにもうひとつ付け加えると、明日の日曜日はイベントのための動画撮影である。
よくもまあ、こんなにプレッシャーが積み重なったものだと自分でも思う。
そこにいずなの身を案じる気持ちが加わって、杏里の心は今やパンク寸前だった。
学校へ行く前に”そこ”へ寄ることを思いついたのは、だからひとつには逃げ場を探してのことだったのかもしれなかった。
時間がないので、バスを使うしかない。
覚悟を決めて、杏里は市バスを待った。
5分としないうちに、満員のバスが重そうに車体を揺らしてやってきた。
駅前へ向かうバスは通勤客たちで混雑していて、杏里はたちまちのうちにもみくちゃにされた。
ブレザーを着ているとはいえ、杏里の胸はブラウスの上からもひと目でそれとわかるほど発達している。
なまじブラジャーが小さいため、乳房の形がすっかり浮彫りになってしまっているのだ。
おまけにスカートは膝上40センチの短さである。
臀部と太腿が成人女性並みであるだけに、立っていてもその裾から下着がのぞいてしまう。
そんな杏里を乗客たちが見逃すはずがなく、立錐の余地すらない車内で人垣に囲まれ、周囲から伸びてくる無数の手、身体中に押しつけられる猛り立った硬いものによって、杏里は恥辱の限りを尽くされた。
ブラウスをむしられ、さらけ出された乳房を千切れるほど揉みしだかれる。
あっというまにパンテイを膝まで下げられ、陰部に複数の指を挿入された。
それでもされるがままになってじっと我慢していると、血液の代わりに血管の中を愛液が流れるような快感に襲われ、杏里は知らぬ間に勃起した乳首と蜜穴から何度か淫汁を漏らしたようだった。
その証拠に、バスが終点に着く頃には、杏里の足元には絶頂に達して気を失った乗客たちが山のようにうずくまってしまっていた。
意識せずして、自動的に浄化が行われたのだ。
乱れた服装を整え、深呼吸ひとつすると、雑魚寝するように倒れ伏した乗客たちをまたいでバスを降りた。
今回の浄化はスムーズだった。
小百合の特訓、外来種との戦闘を通して、自分のタナトスとしての性能が一段と磨かれた気がした。
バスターミナルを横切り、大型ショッピングンモールの方角へ向かう。
が、目的はそこではない。
ショッピングモールの裏の、さびれた商店街のアーケードをくぐった。
5分ほど歩くと、1軒だけシャッターを上げたショーウィンドウが見えてきた。
朝っぱらから営業しているのは、けばけばしい衣装の飾られた、見るからにいかがわしい雰囲気の店である。
『ドリームハウス』
店の名に覚えがあった。
いつかヤチカと来たことのある、アダルトショップ。
あれは、零に監禁された由羅を助けに行く直前のことだった。
「もっくん、いますか?」
中に入ると、店の奥に向かって思い切って声をかけた。
中学生にはいかにも不似合いな場所である。
迷路のような通路の左右にを埋め尽くすのは、セクシーなランジェリーやキャバ嬢向けのミニドレスばかり。
顧客の大半が、駅裏の風俗で働く女性たちだからである。
朝早くから店を開けているのも、仕事帰りのホステスたちを当て込んでのことだろう。
「いらっしゃあい」
衣装をかき分けて現れたのは、素肌の上に黒い革ジャンを着た、スキンヘッドにミラーグラスの恐ろしげな男。
この店の主人、もっくんだ。
「あのう」
言いかけると、
もっくんのほうが先に反応した。
「あらあん、あなた、いつかの子猫ちゃんじゃなあい?」
「は、はい」
覚えててくれたんだ。
杏里はほっと肩の力を抜いた。
「どうしたの? こんな朝早くから? きょうはヤチカちゃんは一緒じゃないの? ていうか、ヤチカちゃんの姿、最近見ないのよねえん。見なくなって、もう1ヶ月になるかしら。ねえ。あなた、何か知らない?」
杏里の顔をのぞきこむと、耳障りのいいオネエ言葉で、心配そうにもっくんが言った。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる