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第9部 倒錯のイグニス
#59 触姦①
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女性ふたりの手のひらが、盛り上がった杏里の乳房の周囲を撫でまわす。
ろくろで粘土の形を整えるように、丁寧に肉の盛り上がりに沿って手を動かしていく。
だが、指は乳輪をなぞりはするものの、決して乳首には触れようとしない。
だから、血液は自然、その放置されたままの乳首に集まってくる。
そんなわけで、杏里の乳首は薔薇色に染まり、恥ずかしいほど太く硬く勃起してしまっていた。
「すばらしい身体ですね。ローションを用意してきたんですけど、それも必要ないみたい」
杏里の皮膚のぬめりを両手で味わい、分泌され始めた体液をクリームのように伸ばしながら、感心したように女医が言った。
「これまでタナトスは何人も触診しましたけど、あなたのように敏感な個体は初めてだわ」
「これが、タナトスの肉体なんですね…すごく綺麗で、エロチック…」
若い看護師の声は、少し上ずっているようだ。
杏里の肌をもみほぐす手にも、不自然に力が入っているのがわかる。
「そうよ。この子は人間の女性のうち、性的な部分をデフォルメしてつくられた特別な存在なの。当てられないように注意なさい」
助手の動揺ぶりを見て、女医の声に面白がっているような響きが宿った。
「あの…これは、何の…検査、なんですか?」
時折びくんと身体を痙攣させながら、やっとのことで、杏里はたずねた。
されるがままに静かにしていると、どうしても意識は撫でまわされる乳房のほうに集中してしまう。
このままでは、あられもない言葉を口走りかねない。
そんな危惧を覚えての質問だった。
「CTスキャンというのはね、万能に見えるけど、意外に見落としが多いものなのよ。だから私たちは、触診で身体に異常がないかどうか探すというわけ。外来種の細胞の組織が一部分でも入り込んでたら、やっかいなことになりかねない。雌雄同体で、獲物の肉体に受精卵を産みつけるタイプも現れたって話でしょ。確か、あなたが助けようとしたもうひとりの女の子が、その犠牲になったって話じゃなかったかしら」
「あれは、本当に、いずなちゃんだったんですか…?」
乳首の疼きに思わず喘ぎそうになりながらも、杏里は訊かずにはいられない。
「あの皮袋をかぶった骨格が誰のものなのか…それはやはり、DNA検査の結果待ちでしょうね。明日の午後には結果が出るのじゃないかと思うけど」
女医は杏里の胸から手をどけると、
「そのことについてはいずれ報告が来ると思うから、今はあなたの身体の健康だけを考えましょう。さ、今度は下半身を触診するわ。あ、そうそう。あなたが中に装着してたローターは消毒してあっちにに置いてあるから、検査が終わったらお返しするわね」
カーテンの向こうを顎で示して、女医が言った。
「でも、どうしてあんなことを? 知らなかったわ。タナトスが、まさかそこまでニンフォマニアだったなんて」
ねっとりしたまなざしが、探るように杏里を見た。
ニンフォマニア。
色情狂、あるいは多淫症。
杏里の頬が、一瞬かっと熱くなる。
「違うんです。あれは、すぐに治療に入れるようにと思って…」
「このべたべたがそうね」
女医が自分の鼻先に、杏里の体液で濡れた指を持っていく。
「すごい。指のあか切れが治ってる。ついさっきまで、まだ痛みが残ってたのに」
「それがタナトスの治癒能力ですか?」
助手の看護師が、興味津々といった面持ちで、女医の手元をのぞきこむ。
「そうよ。タナトスは、ほとんどの傷を自己再生し、他者の傷をも癒すことができる。汗だけでもこれだけの治癒能力があるとすると、もっと濃度の高いあそこからの分泌液は、いったいどれほどの効果を秘めているのかしら」
「あそこからの、分泌液、ですか?」
助手の視線が、シーツをはだけられた杏里の下半身に集中する。
杏里はさざ波のような快感の予感に、無意識のうちにきゅっと太腿をすぼめていた。
腿の内側はすでに熱く湿っている。
「さて、では、いきましょうか」
ふたりの手が、それぞれ下腹と右の太腿に置かれるのがわかった。
そしておもむろに、ねぶるような愛撫が始まった。
ろくろで粘土の形を整えるように、丁寧に肉の盛り上がりに沿って手を動かしていく。
だが、指は乳輪をなぞりはするものの、決して乳首には触れようとしない。
だから、血液は自然、その放置されたままの乳首に集まってくる。
そんなわけで、杏里の乳首は薔薇色に染まり、恥ずかしいほど太く硬く勃起してしまっていた。
「すばらしい身体ですね。ローションを用意してきたんですけど、それも必要ないみたい」
杏里の皮膚のぬめりを両手で味わい、分泌され始めた体液をクリームのように伸ばしながら、感心したように女医が言った。
「これまでタナトスは何人も触診しましたけど、あなたのように敏感な個体は初めてだわ」
「これが、タナトスの肉体なんですね…すごく綺麗で、エロチック…」
若い看護師の声は、少し上ずっているようだ。
杏里の肌をもみほぐす手にも、不自然に力が入っているのがわかる。
「そうよ。この子は人間の女性のうち、性的な部分をデフォルメしてつくられた特別な存在なの。当てられないように注意なさい」
助手の動揺ぶりを見て、女医の声に面白がっているような響きが宿った。
「あの…これは、何の…検査、なんですか?」
時折びくんと身体を痙攣させながら、やっとのことで、杏里はたずねた。
されるがままに静かにしていると、どうしても意識は撫でまわされる乳房のほうに集中してしまう。
このままでは、あられもない言葉を口走りかねない。
そんな危惧を覚えての質問だった。
「CTスキャンというのはね、万能に見えるけど、意外に見落としが多いものなのよ。だから私たちは、触診で身体に異常がないかどうか探すというわけ。外来種の細胞の組織が一部分でも入り込んでたら、やっかいなことになりかねない。雌雄同体で、獲物の肉体に受精卵を産みつけるタイプも現れたって話でしょ。確か、あなたが助けようとしたもうひとりの女の子が、その犠牲になったって話じゃなかったかしら」
「あれは、本当に、いずなちゃんだったんですか…?」
乳首の疼きに思わず喘ぎそうになりながらも、杏里は訊かずにはいられない。
「あの皮袋をかぶった骨格が誰のものなのか…それはやはり、DNA検査の結果待ちでしょうね。明日の午後には結果が出るのじゃないかと思うけど」
女医は杏里の胸から手をどけると、
「そのことについてはいずれ報告が来ると思うから、今はあなたの身体の健康だけを考えましょう。さ、今度は下半身を触診するわ。あ、そうそう。あなたが中に装着してたローターは消毒してあっちにに置いてあるから、検査が終わったらお返しするわね」
カーテンの向こうを顎で示して、女医が言った。
「でも、どうしてあんなことを? 知らなかったわ。タナトスが、まさかそこまでニンフォマニアだったなんて」
ねっとりしたまなざしが、探るように杏里を見た。
ニンフォマニア。
色情狂、あるいは多淫症。
杏里の頬が、一瞬かっと熱くなる。
「違うんです。あれは、すぐに治療に入れるようにと思って…」
「このべたべたがそうね」
女医が自分の鼻先に、杏里の体液で濡れた指を持っていく。
「すごい。指のあか切れが治ってる。ついさっきまで、まだ痛みが残ってたのに」
「それがタナトスの治癒能力ですか?」
助手の看護師が、興味津々といった面持ちで、女医の手元をのぞきこむ。
「そうよ。タナトスは、ほとんどの傷を自己再生し、他者の傷をも癒すことができる。汗だけでもこれだけの治癒能力があるとすると、もっと濃度の高いあそこからの分泌液は、いったいどれほどの効果を秘めているのかしら」
「あそこからの、分泌液、ですか?」
助手の視線が、シーツをはだけられた杏里の下半身に集中する。
杏里はさざ波のような快感の予感に、無意識のうちにきゅっと太腿をすぼめていた。
腿の内側はすでに熱く湿っている。
「さて、では、いきましょうか」
ふたりの手が、それぞれ下腹と右の太腿に置かれるのがわかった。
そしておもむろに、ねぶるような愛撫が始まった。
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