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第9部 倒錯のイグニス
#56 浸透圧
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杏里は一糸まとわぬ姿で、ベッドの脇に立っている。
両手を形のいい臀部の上で組み、胸を突き出すような姿勢をしているのは、そのほうが気持ちがいいからだ。
その杏里の身体の前面に、身の丈1メートルほどもある、蛆そっくりな怪虫が取りついている。
2本の前足を杏里の乳首に突き刺し、首を曲げた恰好で口吻を伸ばして、杏里の舌をねぶるように吸っている。
湾曲した尾部はぬれぬれと光る肉襞のはざまに差し込まれ、まるで性交時の陰茎のようにゆっくりと出入りを繰り返している。
そのさまは、さながら羽化直前の青虫のようだった。
いつのまにか皮膚が半透明になり、その中を目まぐるしく体液がうごめいているのがわかる。
杏里から吸い上げたエキスが、体内に充満しようとしているのだ。
これまでさまざまな凌辱を受けてきた杏里だったが、これほどまでに奇怪な体験は初めてだった。
なかでも特に刺激的なのは、乳首に打ち込まれた針金状の硬く細い脚である。
まるで、尿道孔に長く鋭い針でも挿入されたかのような、異様極まりない感覚だった。
痛みはすぐさま刺すような快楽に変わり、杏里の性感刺激中枢をパルスと化して直撃した。
興奮で乳房がぱんぱんに張り、乳首が痛いほど勃起し切っている。
その先端のくぼんだ部分から突き立った怪虫の脚は、ストローで吸い上げるように杏里の体液を吸っている。
杏里の乳房の中には、母乳ならぬ防護液を分泌する機能が備わっている。
怪虫が吸い上げているのは、その愛液に酷似した成分である。
それにしても奇妙なのは、怪虫が腹いっぱいになるほど体液を吸い上げているにもかかわらず、杏里の肌がいまだに瑞々しさを維持している点だった。
ミイラのように干からびることもなく、杏里の皮膚はいつまでも10代の少女の弾力を保ったままなのである。
あるいはそれが、いずなと杏里の決定的な差なのかもしれなかった。
刺激を受ければ受けるほど、無尽蔵にエキスを分泌する杏里。
タナトスとしてのそのポテンシャルの高さは、さすがサイコジェニーが見込んだだけのことはある、というべきだったかもしれない。
陶然となり、涅槃の境地に達しかけていた杏里は、げふっという耳障りな音に、ふと意識を取り戻した。
しゃっくりのような音を立てて痙攣しているのは、今や怪虫のほうだった。
どうやら杏里のエキスを吸収しすぎて、満腹状態を通り越してしまったらしい。
飽食した虫がもぞもぞと身体を動かし、自分から離れようとしているのがわかった。
だめ。
杏里は心の中でつぶやき、虫の目のない頭部をにらんだ。
まだだめよ。
だって…。
まだ私、イッてないもの。
今度はこちらから、虫の尖った口吻を口に含んだ。
抜け出ようとする前足を両手で握り、自分から乳首の中央にずぶずぶと刺し直す。
股間では、二枚貝の外套膜のように広がった小陰唇が、ねっとりと虫の尾部にからみついていた。
杏里は自分から虫を抱きにいった。
逃すつもりはなかった。
やがて…。
げふっ。
虫がもう一度痙攣したかと思うと、どっとばかりに熱い液体が逆流した。
前足、口吻、尾部の3か所から、怪虫がたまらず嘔吐し始めたのだ。
今度という今度こそ、杏里の番だった。
逆流してくる生のエキスを、杏里は受け止め、吸い始めた。
口で、乳首で、膣で、外来種といずなと杏里のエキスが混じった濃厚な体液を、無我夢中で吸い上げた。
触手は消えてしまったが、その名残りとして美里のDNAが残していったラーニング能力。
それが杏里の体内で復活したのかもしれなかった。
丸々太っていた怪虫の身体が、見る間にしなびていった。
半透明な皮膚を通して、体内の液が半分以上減ってしまっているのが見て取れる。
杏里は愛人のペニスでもしゃぶるように巨大蛆虫の口吻を舌で舐めまわし、頬をすぼめて先を吸いまくった。
虫がいずな同様、ふやけた皮だけの姿になるのに、長くはかからなかった。
足元に落ちた、濡れた紙くずの山のような”それ”を見下ろし、杏里は肩で大きく息をついた。
身体中が媚薬入りローションを塗りたくられたように、ぴりぴりしている。
穴の開いたふたつの乳頭からは、白濁した汁がにじみ出ている。
子宮の中にまで到達したローターの振動が、過敏になった膣壁を容赦なく刺激する。
病院で点滴を打たれた後のように全身がわけもなく火照り、口から出る吐息がなぜか生臭い。
両手で頬を挟み、ぴしゃりと叩いた。
汗で額に貼りつく髪をかき上げ、ベッドのほうを振り返る。
勝った…。
でも、いずなちゃんは…。
ようやく、実感として、悲しみが込み上げてきた。
その時、ドアの向こうから、ひどく間延びしたルナの声が聞こえてきた。
「おい、杏里、どうなんだ? その、いずなの具合は?」
両手を形のいい臀部の上で組み、胸を突き出すような姿勢をしているのは、そのほうが気持ちがいいからだ。
その杏里の身体の前面に、身の丈1メートルほどもある、蛆そっくりな怪虫が取りついている。
2本の前足を杏里の乳首に突き刺し、首を曲げた恰好で口吻を伸ばして、杏里の舌をねぶるように吸っている。
湾曲した尾部はぬれぬれと光る肉襞のはざまに差し込まれ、まるで性交時の陰茎のようにゆっくりと出入りを繰り返している。
そのさまは、さながら羽化直前の青虫のようだった。
いつのまにか皮膚が半透明になり、その中を目まぐるしく体液がうごめいているのがわかる。
杏里から吸い上げたエキスが、体内に充満しようとしているのだ。
これまでさまざまな凌辱を受けてきた杏里だったが、これほどまでに奇怪な体験は初めてだった。
なかでも特に刺激的なのは、乳首に打ち込まれた針金状の硬く細い脚である。
まるで、尿道孔に長く鋭い針でも挿入されたかのような、異様極まりない感覚だった。
痛みはすぐさま刺すような快楽に変わり、杏里の性感刺激中枢をパルスと化して直撃した。
興奮で乳房がぱんぱんに張り、乳首が痛いほど勃起し切っている。
その先端のくぼんだ部分から突き立った怪虫の脚は、ストローで吸い上げるように杏里の体液を吸っている。
杏里の乳房の中には、母乳ならぬ防護液を分泌する機能が備わっている。
怪虫が吸い上げているのは、その愛液に酷似した成分である。
それにしても奇妙なのは、怪虫が腹いっぱいになるほど体液を吸い上げているにもかかわらず、杏里の肌がいまだに瑞々しさを維持している点だった。
ミイラのように干からびることもなく、杏里の皮膚はいつまでも10代の少女の弾力を保ったままなのである。
あるいはそれが、いずなと杏里の決定的な差なのかもしれなかった。
刺激を受ければ受けるほど、無尽蔵にエキスを分泌する杏里。
タナトスとしてのそのポテンシャルの高さは、さすがサイコジェニーが見込んだだけのことはある、というべきだったかもしれない。
陶然となり、涅槃の境地に達しかけていた杏里は、げふっという耳障りな音に、ふと意識を取り戻した。
しゃっくりのような音を立てて痙攣しているのは、今や怪虫のほうだった。
どうやら杏里のエキスを吸収しすぎて、満腹状態を通り越してしまったらしい。
飽食した虫がもぞもぞと身体を動かし、自分から離れようとしているのがわかった。
だめ。
杏里は心の中でつぶやき、虫の目のない頭部をにらんだ。
まだだめよ。
だって…。
まだ私、イッてないもの。
今度はこちらから、虫の尖った口吻を口に含んだ。
抜け出ようとする前足を両手で握り、自分から乳首の中央にずぶずぶと刺し直す。
股間では、二枚貝の外套膜のように広がった小陰唇が、ねっとりと虫の尾部にからみついていた。
杏里は自分から虫を抱きにいった。
逃すつもりはなかった。
やがて…。
げふっ。
虫がもう一度痙攣したかと思うと、どっとばかりに熱い液体が逆流した。
前足、口吻、尾部の3か所から、怪虫がたまらず嘔吐し始めたのだ。
今度という今度こそ、杏里の番だった。
逆流してくる生のエキスを、杏里は受け止め、吸い始めた。
口で、乳首で、膣で、外来種といずなと杏里のエキスが混じった濃厚な体液を、無我夢中で吸い上げた。
触手は消えてしまったが、その名残りとして美里のDNAが残していったラーニング能力。
それが杏里の体内で復活したのかもしれなかった。
丸々太っていた怪虫の身体が、見る間にしなびていった。
半透明な皮膚を通して、体内の液が半分以上減ってしまっているのが見て取れる。
杏里は愛人のペニスでもしゃぶるように巨大蛆虫の口吻を舌で舐めまわし、頬をすぼめて先を吸いまくった。
虫がいずな同様、ふやけた皮だけの姿になるのに、長くはかからなかった。
足元に落ちた、濡れた紙くずの山のような”それ”を見下ろし、杏里は肩で大きく息をついた。
身体中が媚薬入りローションを塗りたくられたように、ぴりぴりしている。
穴の開いたふたつの乳頭からは、白濁した汁がにじみ出ている。
子宮の中にまで到達したローターの振動が、過敏になった膣壁を容赦なく刺激する。
病院で点滴を打たれた後のように全身がわけもなく火照り、口から出る吐息がなぜか生臭い。
両手で頬を挟み、ぴしゃりと叩いた。
汗で額に貼りつく髪をかき上げ、ベッドのほうを振り返る。
勝った…。
でも、いずなちゃんは…。
ようやく、実感として、悲しみが込み上げてきた。
その時、ドアの向こうから、ひどく間延びしたルナの声が聞こえてきた。
「おい、杏里、どうなんだ? その、いずなの具合は?」
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