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第9部 倒錯のイグニス

#47 基礎訓練⑯

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 最初は、何が起こったのか、わからなかった。
 ドアを押し開けたとたん、黒い大きな影がいきなり蔽いかぶさってきたのだ。
 影の正体は、いうまでもなく、小百合だった。
 分厚い手のひらで杏里の両頬を挟むと、無言で唇をかぶせてきた。
 貪るように舐めまわし、海鼠のような太いざらざらした舌を口の中に突っ込んでくる。
 すさまじい吸引力で舌を吸われ、一瞬、意識が遠くなる。
「先生…苦しい」
 ようやくキスの嵐から逃れ、くぐもった声で言った時、杏里はふと気づいた。
 口の中で小百合がぶつぶつつぶやいている。
「これは指導なんだ…そう、指導だ…」
 なんだか自分自身に言い聞かせているような口調だった。
「どうしたんですか? 変ですよ…先生」
「おまえといると、自分が抑えられない。ああ、くそ」
 小百合の手が杏里の股間と右の乳房に伸びた。
「こうしてやる」
 身体が回転した。
「あ、だめ」
 背中が小百合の頑丈な肩の上に乗り、ぎしっと軋んだ。
 股間と乳房を鷲掴みにして、小百合が両肩で杏里を持ち上げている。
「くう…」
 首をねじると、視界の隅に鏡に映った自分の姿が見えた。
 紺のレオタードで身を包んだ少女が、仰向けにされ、ゴリラのような大女の肩に担ぎ上げられている。
 その柔らかい肉体がしなるごとに、豊満な乳房が天に向かって突き出されていく。
 いわゆる、アルゼンチンバックブリーカーの体勢だった。
「いや…」
 杏里は身をよじった。
 抱え上げながら、小百合の両手は杏里の乳房と陰部を揉みしだいている。
 口の中では、相変わらず、
「これは指導だ…教育的指導なのだ…」
 そう、念仏のように繰り返している。
 背骨の痛みが疼くような快感に変わり始めた時、小百合が大きく腰をひねった。
 投げ飛ばされ、マットの上でバウンドする杏里。
「本番はこれからだ」
 腹ばいになった杏里を見下ろし、興奮にかすれた声で小百合が言った。
 黒のタンクトップとビキニパンツが、筋肉ではちきれそうになっている。
 あまりに胸板が厚いので、乳房と胸筋の区別がつかないほどだ。
 マットが揺れた。
 小百合が上がってきたのだ。
 杏里の腰にまたがると、どんと尻を下ろしてきた。
 ふたたび腰骨が悲鳴を上げ、杏里は反射的に頭をのけぞらせた。
 その細い首に、小百合の両手がかかった。
 顎をつかまれ、ものすごい力で引き上げられた。
「ううっ!」
 小百合が上体を後ろに反らすにつれ、杏里の上半身が反り返る。
 突き出したふたつの乳房が、今にもレオタードの生地を突き破りそうだ。
 左手を杏里の首に回し、右手を自由にすると、小百合がその空いたほうの手で、乳房をつかんできた。
 芋虫のように太い指が、狂ったように柔肉を揉み始める。
 レオタードにこすれた乳首がたちまちのうちに勃起して、
「あんっ」 
 杏里は思わず卑猥な吐息を漏らしていた。
「逃げられるなら逃げてみろ」
 杏里の耳に口を寄せ、耳たぶを甘噛みしながら、荒い鼻息とともに、小百合が言った。




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