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第9部 倒錯のイグニス
#43 基礎訓練⑫
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意外にあっけない幕切れだった。
璃子の言葉に怖れをなしたのか、トイレのドアを乱暴に閉めると、咲良と麻衣は足音も荒く立ち去っていった。
足音が消えると、安心感からか、だしぬけに強烈な尿意を催してきた。
杏里は身を震わせて、放尿した。
「ああ…っ」
性的興奮の残り香と排尿の快感で、無意識のうちに喉の奥から声が漏れてしまう。
排尿をすませ、洗浄ボタンを押す。
あたたかいお湯が、愛液と尿で濡れた蜜口を洗い清めていった。
ふう。
苦労して便器から尻を抜き、ブラの位置を戻してブラウスのボタンをはめ直すと、杏里はまたため息をついた。
外に誰もいないのを確かめて、そっと個室を出る。
洗面台の前に立つと、潤んだ瞳のもうひとりの杏里が、自分を見つめ返してきた。
その物欲しげなまなざしに、ぞくりと首筋の産毛が逆立つのがわかった。
小百合の個人指導で身についたイメージ戦略。
凌辱される己の姿態を客観視する能力。
その効果のほどに、杏里自身、少なからず驚いていた。
相手が自分とかけ離れた存在であればあるほど、イメージの中の杏里はいやらしく、欲情をかき立てる。
これで、ジェニーの言う真のタナトスに一歩近づいたと思う。
あとは、どんな相手にもそれが通用するのか試すだけである。
さしあたっては、ふみだろう。
杏里の脳裏に、いつか見た肉襦袢のようなふみの醜い裸身が浮かび上がった。
紅白戦では、おそらくふみとも一戦を交えることになるに違いない。
その時、この身体がどういった反応を示すのか…。
そのためにも、もう少し”練習”が必要だ。
小百合との、肌と肌を密着させた”教育的指導”とやらが…。
それにしても。
鏡を見て服装と髪を整えながら、杏里は考える。
メンバーの中で最も切れやすそうな璃子が、校則違反をひどく気にするのが妙におかしかった。
ふみの時も、小百合の時も、そして今さっきも、周囲が暴走しそうになると、なぜかいつも必ず璃子が止めに入るのだ。
かといって、あの璃子が道徳的な感情の持ち主とはとても思えない。
なんといっても彼女は、以前女子バスケット部のメンバーを炊きつけて、体育館で杏里を凌辱した張本人なのである。
まともな神経を持っているはずがないのだ。
イベントの内容も知ってるみたいだし…あの子、何を企んでいるのだろう?
腕時計に目をやると、午後からの授業の時間が迫ってきていた。
トイレを飛び出し、急いで階段を上がる。
なるべく目立たぬように後ろの入口から教室に入る。
リコとふみのほうは見ないようにして、自分の席に滑り込んだ。
間に合った。
きょう何度目かのため息をついた時である。
「ねえ、杏里」
ふいに横から話しかけられて、杏里はびくりと声のしたほうを振り返った。
隣の席の山田唯佳が、こちらに身を乗り出している。
「さっき、教頭先生が探しに来たよ。笹原くんはいないかって」
「教頭先生が?」
杏里は、唯佳の大人しそうな顔をまじまじと見返した。
「うん。それで、伝えといてくれって言われたの。私、あなたの隣の席だから…」
「なんて?」
「授業後、校長室に来てほしいって。なんでも、学園祭の出し物の件で、杏里に相談したいことがあるんだって。ねえ、これ、どういうこと? 杏里って、学祭の実行委員に入ってないよね?」
「さあ」
内心の動揺を押し隠し、杏里は曖昧に微笑んでみせた。
いよいよ、こっちも動き出したのか…。
うんざりした表情が、顔に表れたのだろう。
「なんかよくわかんないけど…杏里も色々大変そうだね」
同情するような口調で、唯佳が言った。
璃子の言葉に怖れをなしたのか、トイレのドアを乱暴に閉めると、咲良と麻衣は足音も荒く立ち去っていった。
足音が消えると、安心感からか、だしぬけに強烈な尿意を催してきた。
杏里は身を震わせて、放尿した。
「ああ…っ」
性的興奮の残り香と排尿の快感で、無意識のうちに喉の奥から声が漏れてしまう。
排尿をすませ、洗浄ボタンを押す。
あたたかいお湯が、愛液と尿で濡れた蜜口を洗い清めていった。
ふう。
苦労して便器から尻を抜き、ブラの位置を戻してブラウスのボタンをはめ直すと、杏里はまたため息をついた。
外に誰もいないのを確かめて、そっと個室を出る。
洗面台の前に立つと、潤んだ瞳のもうひとりの杏里が、自分を見つめ返してきた。
その物欲しげなまなざしに、ぞくりと首筋の産毛が逆立つのがわかった。
小百合の個人指導で身についたイメージ戦略。
凌辱される己の姿態を客観視する能力。
その効果のほどに、杏里自身、少なからず驚いていた。
相手が自分とかけ離れた存在であればあるほど、イメージの中の杏里はいやらしく、欲情をかき立てる。
これで、ジェニーの言う真のタナトスに一歩近づいたと思う。
あとは、どんな相手にもそれが通用するのか試すだけである。
さしあたっては、ふみだろう。
杏里の脳裏に、いつか見た肉襦袢のようなふみの醜い裸身が浮かび上がった。
紅白戦では、おそらくふみとも一戦を交えることになるに違いない。
その時、この身体がどういった反応を示すのか…。
そのためにも、もう少し”練習”が必要だ。
小百合との、肌と肌を密着させた”教育的指導”とやらが…。
それにしても。
鏡を見て服装と髪を整えながら、杏里は考える。
メンバーの中で最も切れやすそうな璃子が、校則違反をひどく気にするのが妙におかしかった。
ふみの時も、小百合の時も、そして今さっきも、周囲が暴走しそうになると、なぜかいつも必ず璃子が止めに入るのだ。
かといって、あの璃子が道徳的な感情の持ち主とはとても思えない。
なんといっても彼女は、以前女子バスケット部のメンバーを炊きつけて、体育館で杏里を凌辱した張本人なのである。
まともな神経を持っているはずがないのだ。
イベントの内容も知ってるみたいだし…あの子、何を企んでいるのだろう?
腕時計に目をやると、午後からの授業の時間が迫ってきていた。
トイレを飛び出し、急いで階段を上がる。
なるべく目立たぬように後ろの入口から教室に入る。
リコとふみのほうは見ないようにして、自分の席に滑り込んだ。
間に合った。
きょう何度目かのため息をついた時である。
「ねえ、杏里」
ふいに横から話しかけられて、杏里はびくりと声のしたほうを振り返った。
隣の席の山田唯佳が、こちらに身を乗り出している。
「さっき、教頭先生が探しに来たよ。笹原くんはいないかって」
「教頭先生が?」
杏里は、唯佳の大人しそうな顔をまじまじと見返した。
「うん。それで、伝えといてくれって言われたの。私、あなたの隣の席だから…」
「なんて?」
「授業後、校長室に来てほしいって。なんでも、学園祭の出し物の件で、杏里に相談したいことがあるんだって。ねえ、これ、どういうこと? 杏里って、学祭の実行委員に入ってないよね?」
「さあ」
内心の動揺を押し隠し、杏里は曖昧に微笑んでみせた。
いよいよ、こっちも動き出したのか…。
うんざりした表情が、顔に表れたのだろう。
「なんかよくわかんないけど…杏里も色々大変そうだね」
同情するような口調で、唯佳が言った。
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