上 下
36 / 463
第9部 倒錯のイグニス

#35 基礎訓練④

しおりを挟む
 小百合が杏里を導いたのは、理科実験室や家庭科室が並んでいる校舎の2階だった。
 突き当りに非常階段へと続く鉄の扉があり、その手前に何の表示もないドアがひとつ。
「ここが私の部屋だ。瞑想して精神を落ち着かせるために使わせてもらっている」
 ドアノブに手をかけながら、小百合が言った。
 杏里は驚いた。
 中学教師に個人の研究室が与えられているなどという話は聞いたことがない。
 つまりはそれだけ小百合が学校側から特別待遇を受けているということなのだろう。
「入れ」
 背中を押されるようにして中に足を踏み入れた瞬間、杏里は小さく声を上げた。
 目の前に異様な光景が広がっている。
 10畳ほどの部屋の真ん中に、長方形の青いマットが敷かれている。
 正面は窓だが、今は分厚いカーテンが下りている。
 異常なのは、左右の壁に大きな鏡がはめ込まれていることだ。
 縦1メートル、横2メートルほどの磨き上げられた長方形の鏡である。
「ここで、技の研究をする。鏡は、オリンピック時代からの習慣でね」
 部屋の角に簡素なクローゼットがあり、小百合はその前で着換えを始めている。
 杏里はおどおどと周囲を見回した。
 ふたつの鏡に映っているのは、身体にピタリと貼りついたレオタードに、すべてのラインを露わにした杏里自身の立ち姿である。
 あまりに生地が薄いため、胸の部分では乳首はおろか、乳房の形まではっきりわかる。
 後ろの鏡に映っている尻は、ふみに笑われた通り、尾てい骨から双丘の間の割れ目までしっかり浮き出てしまっている。
「さあ、準備完了だ」
 声のしたほうを振り返ると、下着だけになった小百合が仁王立ちになり、杏里を見下ろしていた。
 胸はさらしのような形のスポーツブラの一種で、ただ乳首のあたりを隠すだけ。
 下はビキニのような上下の幅の狭いパンティだ。
 どちらも柄が入っており、下着というよりは水着に近い。
 すごい筋肉…。
 ほぼ逆三角形に近い小百合の肉体を目の当たりに見て、杏里はごくりと唾を飲み込んだ。
 小百合の全身は、どこもかしこも、よじれた縄のような太い筋肉で覆われている。
 だから、胸のふくらみが、乳房なのか胸筋なのかすらもわからない。
「靴を脱いで、マットに上がれ」
 命令口調で、小百合が言った。
「は、はい」
 言われたようにスニーカーを脱ぐと、杏里はおずおずと足を踏み出した。
 裸足の足の裏にマットはひんやりと冷たく、思ったより硬かった。
 小百合が上がってくると、その体重でマットが大きく沈み、杏里はバランスを崩して少しよろめいた。
 その左腕を小百合がつかみ、ぐいと引き寄せる。
 厚い胸に抱かれる格好になり、杏里は頬を赤らめた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...