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第9部 倒錯のイグニス
#30 淫蕩ヒーラー①
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ルナの家は、学校から車で10分ほどの住宅街の中に位置する、新築の会員制マンションだった。
指紋認証で玄関のセキュリティロックを解除すると、無人のロビーをエレベーターホールに向かった。
「いずなの家はここより遠いし、トレーナーはかなりのお年寄りだ。まだ我が家のほうが安全だと思う」
「後でおばあさんに連絡しておいてね。心配するといけないから」
広々としたエレベーターで運ばれ、10階で降りる。
この区画にあるのはルナの部屋を除けば、住居は他にふたつだけ。
3つのユニットになった部屋が、別々のエレベーターで細かく仕切られているのだ。
安全管理上とはいえ、ぜいたくなつくりである。
『1001 富樫』
そう、表札の出ているのが、ルナの住居だった。
高級感のあるドアの材質からも予想がついた通り、中は広々としていて、まるでテレビドラマのセットのようだった。
3LDKで、廊下を進んだつきあたりが、ソファの並ぶ、仕切りのない広い部屋になっていた。
壁にドアが3つあり、この部屋を起点として別の部屋に行くという間取りらしい。
「あなたにはトレーナーはいないの? まさかひとり暮らしってわけじゃ…?」
いずなをソファに横たえると、周囲を見まわしながら、杏里はたずねた。
壁紙も照明器具も調度類も、みな真新しくて高価そうである。
だが、まるで人が住んでいる気配がない。
それこそ、新築マンションのモデルルームみたいな、無味乾燥な印象なのだ。
「招集が急だったから、まだ決まっていない。名義上の保護者はいるけど、そんなの、委員会がでっちあげた書類上の監察人さ」
「うーん、綺麗だけど、なんか大きな檻みたいだね。まあ、その分、ここに隠しておけば、いずなも見つかりにくいとは思うけど」
ストレートな感想を述べたのは、重人である。
「檻とはご挨拶だな」
苦笑するルナ。
「ま、否定はできないけどね」
「でも、どうすればいいだろう? このままじゃ、今度は僕らが誘拐犯として指名手配されることになっちゃうよね?」
「そのあたりは、いずれ委員会が事件の隠ぺいに動くだろうから、大して心配はしていないが…。ただ、処置は早いほうがいいいのは確かだな。じゃあ、重人、おまえから連絡を入れておいてくれ」
「え? 連絡入れるって、誰にさ?」
「サイコジェニーさ。あいつにこっちから呼びかけられるのは、テレパスのおまえしかいないだろう?」
「えー、やだなあ。僕、彼女、苦手なんだけど」
露骨に顔をしかめる重人。
そんなふたりの会話を聞き流しながら、杏里は”準備”に入っていた。
ブラウスとスカートを脱ぎ、ソファにかける。
ブラのホックを外しているところに、ルナの驚いたような声が飛んできた。
「おい、杏里、おまえ、何してる?」
ブラジャーをソファの上に落とすと、杏里は裸の胸をルナに向けた。
「今、第一に考えなければならないのは、いずなちゃんのことでしょう? 応急処置を施すから、彼女を寝室に運んで。あとは私がなんとかする」
「タナトスの治癒能力ってわけか」
ルナの視線が、食い入るように杏里の裸身に突き刺さる。
「しかし、おまえの身体は何なんだ…? 見ているだけで、こっちまでおかしな気分になってくる」
服を脱いだとたん、立ちのぼった杏里のフェロモンが、ルナにも影響を与えているようだった。
「僕はジェニーのメンテのおかげで何も感じなくなったけど、気をつけたほうがいいよ。杏里の躰は麻薬みたいなものだから」
真面目な顔で重人が補足する。
経験者だけに、思いのこもった物言いだ。
「試してみる? と言いたいところだけど。残念ながら、今は時間がないわ」
杏里はすでに、己の指で両方の乳首を弄び始めている。
人差し指と中指で根元をつまみ、親指の腹で乳頭を丹念に刺激していると、時を待たずして、身体の奥からお馴染みの刺すような疼きがこみ上げてきた。
「わかったから、わたしの目の前でそれはやめろ。わたしの寝室を空けるから、いずなの治療はそこで頼む」
言いながら、ルナがお姫様だっこの形にいずなを抱え上げた。
「向かって右のドアだ。重人、開けてくれ」
「あいよ」
ルナに続いて中に入ると、キングサイズのベッドがいきなり視界に飛び込んできた。
「ふたりだけにして」
いずながベッドに横たえられるのを確認すると、杏里は言った。
「気が散るから、あなたたちは外に出て、居間で待っててくれない?」
指紋認証で玄関のセキュリティロックを解除すると、無人のロビーをエレベーターホールに向かった。
「いずなの家はここより遠いし、トレーナーはかなりのお年寄りだ。まだ我が家のほうが安全だと思う」
「後でおばあさんに連絡しておいてね。心配するといけないから」
広々としたエレベーターで運ばれ、10階で降りる。
この区画にあるのはルナの部屋を除けば、住居は他にふたつだけ。
3つのユニットになった部屋が、別々のエレベーターで細かく仕切られているのだ。
安全管理上とはいえ、ぜいたくなつくりである。
『1001 富樫』
そう、表札の出ているのが、ルナの住居だった。
高級感のあるドアの材質からも予想がついた通り、中は広々としていて、まるでテレビドラマのセットのようだった。
3LDKで、廊下を進んだつきあたりが、ソファの並ぶ、仕切りのない広い部屋になっていた。
壁にドアが3つあり、この部屋を起点として別の部屋に行くという間取りらしい。
「あなたにはトレーナーはいないの? まさかひとり暮らしってわけじゃ…?」
いずなをソファに横たえると、周囲を見まわしながら、杏里はたずねた。
壁紙も照明器具も調度類も、みな真新しくて高価そうである。
だが、まるで人が住んでいる気配がない。
それこそ、新築マンションのモデルルームみたいな、無味乾燥な印象なのだ。
「招集が急だったから、まだ決まっていない。名義上の保護者はいるけど、そんなの、委員会がでっちあげた書類上の監察人さ」
「うーん、綺麗だけど、なんか大きな檻みたいだね。まあ、その分、ここに隠しておけば、いずなも見つかりにくいとは思うけど」
ストレートな感想を述べたのは、重人である。
「檻とはご挨拶だな」
苦笑するルナ。
「ま、否定はできないけどね」
「でも、どうすればいいだろう? このままじゃ、今度は僕らが誘拐犯として指名手配されることになっちゃうよね?」
「そのあたりは、いずれ委員会が事件の隠ぺいに動くだろうから、大して心配はしていないが…。ただ、処置は早いほうがいいいのは確かだな。じゃあ、重人、おまえから連絡を入れておいてくれ」
「え? 連絡入れるって、誰にさ?」
「サイコジェニーさ。あいつにこっちから呼びかけられるのは、テレパスのおまえしかいないだろう?」
「えー、やだなあ。僕、彼女、苦手なんだけど」
露骨に顔をしかめる重人。
そんなふたりの会話を聞き流しながら、杏里は”準備”に入っていた。
ブラウスとスカートを脱ぎ、ソファにかける。
ブラのホックを外しているところに、ルナの驚いたような声が飛んできた。
「おい、杏里、おまえ、何してる?」
ブラジャーをソファの上に落とすと、杏里は裸の胸をルナに向けた。
「今、第一に考えなければならないのは、いずなちゃんのことでしょう? 応急処置を施すから、彼女を寝室に運んで。あとは私がなんとかする」
「タナトスの治癒能力ってわけか」
ルナの視線が、食い入るように杏里の裸身に突き刺さる。
「しかし、おまえの身体は何なんだ…? 見ているだけで、こっちまでおかしな気分になってくる」
服を脱いだとたん、立ちのぼった杏里のフェロモンが、ルナにも影響を与えているようだった。
「僕はジェニーのメンテのおかげで何も感じなくなったけど、気をつけたほうがいいよ。杏里の躰は麻薬みたいなものだから」
真面目な顔で重人が補足する。
経験者だけに、思いのこもった物言いだ。
「試してみる? と言いたいところだけど。残念ながら、今は時間がないわ」
杏里はすでに、己の指で両方の乳首を弄び始めている。
人差し指と中指で根元をつまみ、親指の腹で乳頭を丹念に刺激していると、時を待たずして、身体の奥からお馴染みの刺すような疼きがこみ上げてきた。
「わかったから、わたしの目の前でそれはやめろ。わたしの寝室を空けるから、いずなの治療はそこで頼む」
言いながら、ルナがお姫様だっこの形にいずなを抱え上げた。
「向かって右のドアだ。重人、開けてくれ」
「あいよ」
ルナに続いて中に入ると、キングサイズのベッドがいきなり視界に飛び込んできた。
「ふたりだけにして」
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