19 / 463
第9部 倒錯のイグニス
#18 メンバー②
しおりを挟む
小百合が出ていくと、俄然、楽屋の中は賑やかになった。
女子中学生が9人、ひとつの部屋に集合しているのだから、ある意味これは自然な流れといってよかった。
だれからともなく自己紹介しようという運びになり、杏里は顔見知りの4人以外のメンバーの素顔を知った。
身長は杏里と同じくらいだが、肩幅が2倍はありそうな、2年A組の朝倉麻衣。
驚くほど腕が長く、猫背気味で常に前傾姿勢でいるため、オラウータンに似ている。
そのリーチの長さを活かして、卓球部で活躍していたらしい。
雄牛を思わせる巨体の持ち主は、2年C組の飯塚咲良。
元女子柔道部の副主将だけあって、鋭い眼光の持ち主だ。
体格的にはふみに近いが、ただ太っているふみに比べ、ずいぶんと引き締まった体つきをしている。
あとのふたりは、1年生だった。
1年D組の権藤美穂は、元水泳部のエース。
中背ですらりとした肢体の持ち主だが、腕も足も無駄のない筋肉で覆われているようだ。
最後のひとりは、1年B組の神崎トモ。
ハンドボール部の期待の新人だったが、小谷小百合に憧れてレスリング部に移籍。
小麦色の肌がまぶしい、ボーイッシュな少女だった。
そこに、2-Eの純とふみ、そして杏里が加わり、キャプテンのアニスを入れて計8人というわけだ。
「でも、困っちゃったな、いきなり副キャプテンだなんて。あたし、レスリングのことなんて何も知らないのに」
自己紹介が済むと、興奮冷めやらぬ口調で純が言った。
「それはみんな同じだよ。私だって、レスリングなんて初めてだもん」
助け舟を出したのは、メンバーの中で一番包容力がありそうな飯塚咲良である。
ふみと璃子を除いたほかのメンバーが、純を励ますようにうなずいた。
「ダイジョブデスヨ。チャンと私ガ教エマスカラ」
そこへアニスがにこにこ笑いながら寄ってきて、親しげに純の肩を叩いて言った。
「ダカラ純ハ、大船ニ乗ッタツモリデイレバイイノデス」
ほかのメンバーの間から、どっと笑い声が起こった。
「ありがとう、みんな。あたし、頑張るよ」
照れ臭そうに頭を下げる純。
「でも、一番すごいのは、何といっても杏里だよね。入部早々、先生の個人指導だなんて」
突然話題を振られて、杏里はびくっとした。
「小谷先生と1対1かあ、マジうらやましー!」
子鹿のような雰囲気の神崎トモが、大げさにうなずきながら同意を示す。
違うのに。
杏里は叫び出したくなるのを、必死でこらえた。
先生の魂胆は、レスリングの指導なんかじゃない。
目当ては、私のこの身体なのだ。
仕方ない。
今度変なことをされそうになったら、”浄化”に持ち込もう。
校則違反になるけど、個人指導の場だったら、ばれることもないだろう。
そんな杏里の悲壮な決意をよそに楽しげな会話は続いていき、下校時刻ぎりぎりになってやっと会はお開きになった。
純に続いて楽屋を出ようとした時である。
強い力が、杏里を引き留めた。
その巨体でドアを閉めるようにして、杏里の前に立ちはだかったのは、ふみである。
「ねえ、杏里、ちょっとでいいから遊ぼうよお。ふみね、さっきロメロされてる杏里見てて、すっごく興奮してきてさぁ、マジでイキそうになっちゃった。この子ってば、なんていやらしいんだろうって。だからさあ、ふみ、思わず立ったままオナニーしちゃったんだよぉ。あ、やば。これ、みんなには内緒だよぉ」
ステーキ用の生肉を思わせる分厚い舌で唇を舐め、糸のように細い目に獣欲を滾らせて、臭い息とともに、ふみがささやいた。
女子中学生が9人、ひとつの部屋に集合しているのだから、ある意味これは自然な流れといってよかった。
だれからともなく自己紹介しようという運びになり、杏里は顔見知りの4人以外のメンバーの素顔を知った。
身長は杏里と同じくらいだが、肩幅が2倍はありそうな、2年A組の朝倉麻衣。
驚くほど腕が長く、猫背気味で常に前傾姿勢でいるため、オラウータンに似ている。
そのリーチの長さを活かして、卓球部で活躍していたらしい。
雄牛を思わせる巨体の持ち主は、2年C組の飯塚咲良。
元女子柔道部の副主将だけあって、鋭い眼光の持ち主だ。
体格的にはふみに近いが、ただ太っているふみに比べ、ずいぶんと引き締まった体つきをしている。
あとのふたりは、1年生だった。
1年D組の権藤美穂は、元水泳部のエース。
中背ですらりとした肢体の持ち主だが、腕も足も無駄のない筋肉で覆われているようだ。
最後のひとりは、1年B組の神崎トモ。
ハンドボール部の期待の新人だったが、小谷小百合に憧れてレスリング部に移籍。
小麦色の肌がまぶしい、ボーイッシュな少女だった。
そこに、2-Eの純とふみ、そして杏里が加わり、キャプテンのアニスを入れて計8人というわけだ。
「でも、困っちゃったな、いきなり副キャプテンだなんて。あたし、レスリングのことなんて何も知らないのに」
自己紹介が済むと、興奮冷めやらぬ口調で純が言った。
「それはみんな同じだよ。私だって、レスリングなんて初めてだもん」
助け舟を出したのは、メンバーの中で一番包容力がありそうな飯塚咲良である。
ふみと璃子を除いたほかのメンバーが、純を励ますようにうなずいた。
「ダイジョブデスヨ。チャンと私ガ教エマスカラ」
そこへアニスがにこにこ笑いながら寄ってきて、親しげに純の肩を叩いて言った。
「ダカラ純ハ、大船ニ乗ッタツモリデイレバイイノデス」
ほかのメンバーの間から、どっと笑い声が起こった。
「ありがとう、みんな。あたし、頑張るよ」
照れ臭そうに頭を下げる純。
「でも、一番すごいのは、何といっても杏里だよね。入部早々、先生の個人指導だなんて」
突然話題を振られて、杏里はびくっとした。
「小谷先生と1対1かあ、マジうらやましー!」
子鹿のような雰囲気の神崎トモが、大げさにうなずきながら同意を示す。
違うのに。
杏里は叫び出したくなるのを、必死でこらえた。
先生の魂胆は、レスリングの指導なんかじゃない。
目当ては、私のこの身体なのだ。
仕方ない。
今度変なことをされそうになったら、”浄化”に持ち込もう。
校則違反になるけど、個人指導の場だったら、ばれることもないだろう。
そんな杏里の悲壮な決意をよそに楽しげな会話は続いていき、下校時刻ぎりぎりになってやっと会はお開きになった。
純に続いて楽屋を出ようとした時である。
強い力が、杏里を引き留めた。
その巨体でドアを閉めるようにして、杏里の前に立ちはだかったのは、ふみである。
「ねえ、杏里、ちょっとでいいから遊ぼうよお。ふみね、さっきロメロされてる杏里見てて、すっごく興奮してきてさぁ、マジでイキそうになっちゃった。この子ってば、なんていやらしいんだろうって。だからさあ、ふみ、思わず立ったままオナニーしちゃったんだよぉ。あ、やば。これ、みんなには内緒だよぉ」
ステーキ用の生肉を思わせる分厚い舌で唇を舐め、糸のように細い目に獣欲を滾らせて、臭い息とともに、ふみがささやいた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる