激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

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第9部 倒錯のイグニス

#14 入部審査④

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 素人相手だというのに、アニスの攻撃は熾烈を極めていた。
 手加減というものを知らないのか、情け容赦なく杏里の四肢を締め上げてくる。
 肩の関節がみしりと鳴った。
 無理やり広げられた股関節も、さっきから嫌な軋みを上げているようだ。
 が、痛みを感じたのは、最初の数秒間に過ぎなかった。
 タナトス特有の防御機能が働き、ある一点を境にふっと痛みが消えたのだ。
 急に身体が楽になり、杏里は薄目を開けた。
 無痛状態に陥ると、変わってさざ波のような疼きがやってきた。
 躰が限界まで反り返っているせいで、乳首と陰部が布に擦れ、快感の発信源と化してしまっている。
 特に陰部では、レオタードの切れ込みが深いため、布が肉襞の間に食い込み、アニスが力を籠めるたびに陰核を擦り上げていく。
「ああ…ん」
 いつのまにか、杏里は口を半開きにして、そんな熱い吐息を漏らしていた。
 丸く張り切った肉の丘の上で、見る間に乳首が硬く尖っていく。
 白く薄い布を透かして、乳輪が淫猥な色に染まっているのがわかる。
 股間はいつのまにか滲み出した淫汁で、じっとりと湿ってしまっていた。
 ステージの下に群がる野次馬たちの目にも、レオタードに広がる染みは見えているに違いない。
 そう、私、見られてる…。
 その認識は圧倒的だった。
 倒錯した快感が津波のように押し寄せ、
「あうっ…」
 またも杏里は喘いだ。
 ふたつの乳首と陰核だけでなく、視線を感じて全身が性感帯に変わってしまったかのようだった。
 自ら頭をのけぞらせ、胸を、腹を、腰を突き上げていく。
 さながら杏里は、天に捧げられる供物のようなものだった。
 神に蹂躙されることを運命づけられた聖なる生贄。
 それが私なのだ、とそう思った。
 そしてその幻想は、あながち間違いではなかったのだ。
 天井の照明をかき消すかのように、ふいに黒い影が杏里の視界に入ってきた。
 短く刈った髪。
 岩を打ち割って掘り出したかのような、ごつごつした顔。
 奥まった小さな眼が、じっと杏里を見下ろしている。
 小谷小百合だった。
「おまえ、痛みを感じないのか?」
 いぶかしげに目を細めて、小百合が訊いてきた。
「アニスにこれをかけられたら、5秒ともたないのが普通なんだが」
 杏里は答えなかった。
 わざわざタナトスであることを明かす必要もないし、たとえ説明したところで信じてもらえるとは思えない。
 小百合が一歩下がって杏里の身体をまじまじと観察する。
 その瞳の奥に熾火のような揺らぎがともったのを、杏里は見逃さなかった。
 おもむろに手が伸びてきた。
 太くて硬い指が、レオタードを押し上げて屹立する杏里の右の乳首を、軽くつまんだ。
「くう…」
 びくんと痙攣する杏里。
 更に左の乳首をもつままれた。
 こりこりとふたつの乳首を反対方向にねじられた。
 布地を通しても、いや、布越しだからこそ余計に、その快感は強烈だった。
「あんっ!」
 不自由な姿勢のまま、杏里は跳ねた。
 ぬるり。
 子宮の奥で何かがほどけ、蜜壺の中が熱い汁でいっぱいになるのがわかった。
 熱にかすむ視界の隅に、迫りくる小百合の顔が見えた。
 更なる愉楽の予感に、杏里は小刻みに身を震わせ始めた。

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