そんなお口で舐められたら💛

第4話 転生！ 凌辱学園

#97 戦慄のストーカー②

　杏里は茫然としていた。

　今のは、何だったんだろう？

　一瞬しか見えなかったけど、大きな犬みたいだった。

　いや、犬というより、あれは…。

　まさか、そんなこと、あるはずがない。

　浮かびかけた考えを、かぶりを振って打ち消した。
　
　そんなの、今の日本にいるはずないじゃない。

　とっくの昔に絶滅したって、どこかで聞いたことがある…。

　那智は壁で強く頭を打ったのか、意識を失って倒れている。

　あれは、私を助けてくれたのだろうか…。

　でも、どうしよう。このままでは、那智先生が…。

「どうしたの？　すごい音がしたけど」

　白衣の女性が飛び込んできたのは、その時だ。

　眼鏡をかけた小太りの中年女性である。

　どうやら保健婦さんのようだ。

「那智先生が、急に倒れて」

　ぷるんぷるん揺れる胸を隠して、杏里は言った。

「あらまあ、ちょっとトイレに行ってたすきに。いったい何があったの？」

　そこで杏里の露出過多のユニフォーム姿に気づくと、

「やあねえ。また鬼龍院先生の悪い癖が出たってわけね」

　保健婦がにやりと笑う。

「あの、あと、お願いします」

　長居をすると、色々嫌なことを言われそうな気がして、杏里はそそくさと保健室を後にした。

　廊下に出て、気づいた。

　床に点々と血が落ちている。

　もしかして…さっきの？

　怖さ半分、好奇心半分で、その跡をたどることにした。

　血痕は非常口を出て、更に旧校舎のほうへと続いているようだ。

　杏里がトイレで美和にオナニーを見られた、あの建物である。

　血の跡は、旧校舎の裏まで達していた。

　アカシアの木々がこんもりと茂り、ちょっとした森になっているあたりだ。

　木々の間に何かがうずくまっているのが見えた気がして、杏里はおそるおそる声をかけた。

「そこに、誰かいるの？」

　と、声がした。

「来るんじゃない」

　変声期を迎えた少年の声だった。

　聞き覚えがある。

　この声は、ひょっとして…。

　そっと、足音を忍ばせて近寄っていく。

　間違いない。

　学生服姿の少年が、木立の奥に膝を抱えてうずくまっている。

「大神君？　大神君でしょ？」

　確信を込めた口調で、杏里はたずねた。

「どうしたの？　あなた、怪我、してるんじゃない？」

　返事はない。

「待って。今行くから」

　言いながら、杏里は胸に湧き上がる疑惑を抑えきれないでいる。

　どういうことだろう？

　これは、あの犬の血じゃなかったの？

　まさか、大神君が、あの…。

　ばかね、杏里。

　自分の頭をげんこつでぽかりと叩いた。

　あなた、何考えてるの？　

　そんなこと、現実にあるはずないじゃない！