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第3話 ずっとあなたとしたかった

#139 不機嫌な下僕②

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「聞いたの? 紗彩さんに」
 どきりとして、杏里はたずねた。
「はい」
 みいがうなずいた。
 目の下あたりの皮膚が、ほんのりと桜色に染まっている。
 これは、みいが恥じらいを感じるとともに、性的に興奮している証拠である。
「ゆうべの様子を撮った動画も、見せてもらいました。杏里さまも、紗彩さまも、とっても幸せそうでした」
「動画も?」
 さすがの杏里も赤くならざるをえなかった。
 クライマックスシーンを、雪乃がスマホで撮影していたのを思い出したのだ。
 しかし、もう、みいにあの動画を見せるなんて、雪乃も紗彩も朝早くからご苦労さまなことである。
「ペットロイドとしては、最新のセックス事情も知っておいたほうがいいってことで…」
 なるほど。
 確かにそれがみいの”仕事”なのだから、紗彩の言葉にも一理ある。
「口では説明しにくいなあ」
 杏里はあいまいに笑ってみせた。
「あれはもう、経験した者にしかわからないっていうか…とにかく、異次元の感覚なの。快感が、まったく違う回路を通って伝わってくるみたいな…」
 そうなのだ。
 あの感覚は、言葉で表現しようとすると、すべてウソになる。
 とにかく、気持ちいい、としか言えないのだ。
 すごく、ものすごく、気持ちいいとしか…。
「うらやましいです」
 みいがすねたような眼で、杏里を見た。
「みい、そんな杏里さまと紗彩さまに、嫉妬しちゃいます」
 ペットロイドとしての職務を侵害されたとでも思っているのか、なんだかきょうのみいはいつになく不機嫌そうだ。
「そう言われても…。子宮セックスは、ほんと、偶然から始まったことだし」
 そう口にしてみたものの、自分でも言い訳めいているのがわかった。
「でも、気持ちよかったんですよね。みいとする時よりも」
 みいのつぶらな瞳には、怒りの炎さえ宿っているようだ。
「そ、そんなことないよ」
 力なく、杏里は否定した。
 その力のなさが、みいにも伝わったらしい。
「杏里さま、ウソついてます」
 みいの目尻に、涙の粒が盛り上がった。
「もう、みいなんて、用なしだと思ってますね」
「そんな…何言ってるの?」
 唖然とする杏里。
 AIも嫉妬したり、思い込みでおかしくなったりするのだろうか?
 みいのこの反応、ちょっと、異常すぎやしない?
「じゃあ、どうしてほしいの?」
 仕方なく、訊いた。
「みいにも、同じこと、してほしいんです」
 ミニ丈の制服のスカートの裾を少しずつ持ち上げながら、みいが言った。
「それがどんなに気持ちいいことなのか、まず自分の身で知りたいんです。そのあと、杏里さまや紗彩さまに、最高のご奉仕をしてさし上げられるようになるためにも」 


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