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第3話 ずっとあなたとしたかった

#113 白百合を淫らに愛でる①

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 色々話しかけられた気がする。
 話しかけられながら、体のあちこちを触られたようだ。
 が、杏里は婦人たちの問いかけに、自分がどう答えたのか、さっぱり記憶になかった。
 乾杯のシャンパンに続き、次々にワインやカクテルを勧められ、すっかり酔っぱらってしまったからである。
 ついこの間まで中学生だった杏里に、アルコールへの耐性はゼロに等しかった。
 気がつくと、食事の皿は片づけられ、ホールの照明が落ちていた。
 オレンジ色の秘密めいた明かりの中で、大勢の女たちが互いに身を寄せ合い、音楽に合わせてチークダンスを踊っている。
 しかも、ただダンスに興じているだけではなく、濃厚な口づけを交わし合ったり、胸や腰を愛撫し合ったりと、どうひいき目に見ても雰囲気がただごとではなくなっていた。
 うわあ、見ちゃいられない。
 そういえば、沙彩さん、言ってたっけ。
 これは、女性同士が性愛の絆を深め合う集まりなんだって。
 さっきはぼうっとしててよくわかんなかったけど、てことは、この人たち、全員、レズビアン?
 やばい。
 早くどこか涼しいところで、酔いを醒まさないと。
 よろめく足で椅子から立ち上がった時だった。
 ふらつく杏里の左腕を付け根の部分で支えると、ねっとりとした口調で雪乃が言った。
「さあ、杏里ちゃん、そろそろ行きましょうか」
「行くって…どこへ、ですか?」
 とろんとした目で雪乃を見上げる杏里。
 化粧の濃い雪乃の派手な顔が、酔いのせいで二重にぶれて見える。
「決まってるじゃない。シークレットルームよ」
 雪乃の真っ赤な唇が淫猥な形に動いて、そんな言葉を紡ぎ出す。
「この家にはね、ゲスト同士が意気投合した時のための、シークレットルームがいくつも用意されてるの」
「は、はあ…」
 酔いの回った頭では、意味が今いちよくわからない。
「行きましょ。悪いようにはしないから」
 雪乃が杏里を抱きかかえ、歩き出そうとした、その瞬間である。
「雪乃姐さん、抜け駆けはずるいんじゃありませんこと?」
 からかうような声とともに、ボディコンドレス姿の緑子が正面に立ち塞がった。
「抜け駆けだなんて、そんな。私はただ、この子があんまり具合悪そうだったから」
 おほほほほと雪乃が高笑いする。
 手の甲を口にあてる、いかにもセレブのマダム然とした笑い方だった。
「そんなこと言って、まさかみんなのアイドル、杏里ちゃんを独り占めする気じゃあ、ないでしょうねえ」
 口調は丁寧だが、緑子の眼は妙に真剣だ。
「緑子さん、あなた、何が言いたいの?」
 雪乃の瞳が妖しく光った。
「シークレットルームなら、3P用のお部屋がいいかなと思って」
 緑子がにたりと口角を吊り上げる。
「3P…。いい響きね」
 雪乃がうなずいた。
「つまり、私とあなたで、杏里ちゃんを…?」
「どうです? いい案じゃありません?」
 と、そこに鮮やかな和服姿の美女が割り込んだ。
「あら? 皆さん、何のご相談かしら?」
 沙彩だった。
 酔いで美しい頬がバラ色に染まっている。
「訂正するわ」
 沙彩を横目で見て、緑子がいたずらっぽく舌を出す。
「ここは、3Pじゃなくて、やっぱり4Pで」


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