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第3話 ずっとあなたとしたかった

#75 調教同盟③

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 不意を突かれて、杏里は危うく失禁しそうになった。
 超ミニのスカートの上から思わずパンティの前を押さえてしまう。
 と、背伸びして杏里の耳に息を吹きかけ、美和が囁いた。
「きのうの杏里、よかったよ。とっても」
 そうして何のつもりか、杏里の頬に軽く口づけすると、スキップするような足取りで席に戻っていった。
 美和、怒ってはいないようだけど…。
 杏里は畏怖の眼で、美和のターバンを巻いたような頭の白い包帯を見つめた。
 でも、油断しちゃ、だめ。
 あの子、あんなお上品な顔をしてるけど、両親を殺してはく製にした異常者なんだから…。
 抜き足差し足で席に向かう。
 椅子に座った時、引き戸が開いて、那智が入ってきた。
 きょうは地味なグレーのスーツを着込み、脇に教科書を抱えている。
 教壇に立つなり、幅の狭い眼鏡越しに、じろりと杏里を見た。
 胃袋が縮み上がるような緊張に、あわてて顔を伏せる杏里。
 そこに、よく通る那智の声が響いてきた。
「きょうは、時間割を一部変更して、1時間目は私の保健体育にする。というのも、最近、高校生の性の乱れが何かと問題になっているからだ。高校生の間にSNSが浸透したせいで、世の中は罠だらけになっている。正しい性知識を持っていないと、特に女子は、望まぬ妊娠を強いられたりして、大変なことになってしまう。もちろん男子も、性病をうつされたり、あるいは異常性欲者の犠牲になったりする可能性は、十分にある。だから、私は、この時間を使って、正しいセックスの在り方をおまえたちに実演してみせようと思う」
 杏里は呆れた。
 正しいセックスの在り方?
 実演?
 この人、朝っぱらから、突然、何を言い出すのだろう?
「窓側の者、カーテンを引いてくれ。廊下の窓も、グラウンド側も、全部だ」
 固唾を呑んで見守る生徒たちに向かって、那智が命令した。
「それから、この実技演習には、助手が必要だ。今から名前を呼ぶ者、前に出ろ」
 那智がまず目を向けたのは、美和である。
「葛城美和」
「はいっ!」
 元気よく、美和が立ち上がる。
 そして次に、
「笹原杏里」
 杏里を指名した。
 やばっ。
 杏里は、腋の下を冷たい汗が伝うのを感じた。
 よりによって、みいの入れない、教室の中で。
 しかも、廊下側のカーテンを閉められてしまったら、みいには中の様子が見られなくなってしまう。
「ふたりとも、前に出ろ」
 那智が美和を、そして杏里を差し招く。
「ふたりには、最初に、悪いセックスの例を演じてもらう。女役は笹原、男役は葛城ということにする。みんな、よく見て、どこがいけないか、考えろ。後でそれぞれ意見を発表してもらうから、そのつもりで」
 黒板の前に美和と並んで立つ杏里の全身に、クラスメイトたちの視線が突き刺さる。
 予想外の展開に、杏里は途方に暮れた。
 まさか、クラス全体を巻き込んで、私を責めにかかるだなんて…。
 なんて悪知恵の働く女なのだろう。
「よし。では、まず、葛城。笹原を裸にしろ」
 内腿をすり合わせ、胸を両腕で隠して呆然と突っ立っていると、ひどく厳かな口調で、那智が言った。


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