上 下
222 / 475
第3話 ずっとあなたとしたかった

#63 光あるところ闇①

しおりを挟む
 アナウンスに続いて、どこか遠くで火災報知器が鳴り出していた。
 杏里は半狂乱になって、手足を動かした。
 だが、拘束具は鍵がないと開かないタイプなのか、身体をつるしたロープが揺れるだけで、手足の戒めは一寸たりともゆるみはしない。
 こんな緊急事態だというのに、両サイドのバイブから加えられる途切れない振動で、杏里の乳首は己の意志とは無関係に、すでに石のように硬く尖ってしまっている。
「ああ、誰か、誰か、助けて…」
 その声が半ば震えているのは、恐怖のせいばかりではない。
 敏感すぎる乳首を容赦なく責め続けられて、快感を抑えきれなくなってしまっているのだ。
 水平に180度開いた足の中央、ちょうど股間のあたりが恥ずかしいほど濡れているのがわかる。
 那智に極太バイブを挿入されかけ、途中で抜かれたのが、今になって効いてきていた。
 これではまるで蛇の生殺しだ。
 何かを入れてもらいたくて、たまらない。
 熱く煮えたぎった蜜壺を、みっしりと硬い肉の棒で隙間なく埋め尽くしてもらいたい…。
 が、そこまで考えて、杏里はあわてて首を振る。
 頭の隅で、もうひとりの冷静な杏里がなじってきた。
 杏里、あなたはどこまで馬鹿なの?
 今はそんなエッチなこと、考えてる場合じゃないでしょ?
 だって…。
 気の弱い、流されやすいほうの杏里が、すねたように答えた。
 そんなこといったって、しょうがないじゃない。私には、どうすることもできないんだもの。
 せめて、死ぬ時くらい、好きなこと、考えさせてよね。
 何あきらめてるの? ほら、耳を澄ませてごらんなさい! 聞こえてきたでしょ? 誰かの足音が!
 え?
 我に返る杏里。
 と、次の瞬間、吹っ飛ぶようにドアが内側に開いた。
 戸口にふたりの人影が立っている。
 ひとりは、作業服を着た若い女性。
 そしてもうひとりは、薄茶のブレザーに同色のスカートの、杏里と同じくらいの年頃の少女。
 頭にターバンを巻いているように見える。
 美和だった。
「杏里、やっぱりここにいた!」
 美和が叫び、駆け寄ってきた。
「美和!」
 杏里の頬を涙が伝った。
「おかしいと思ったの。杏里が、あの鬼龍院先生の車に乗せられて、学校を出て行くから。すぐにタクシーを拾って、ここまで追いかけてきたんだよ」
「あ、ありがと…。でも、あんまり近くに来ないで。私、今、すごく恥ずかしい恰好、してるもの…」
 杏里は真っ赤になって、もぞもぞと裸身を動かした。
「鬼龍院先生にやられたんでしょ?」
 美和の眼が光った。
「生徒会の先輩に聞いたわ。あの人、昔からレズビアンで有名らしいの。それで、毎年、新入生の中からお気に入りの女生徒を選んで、自分好みに調教して、1年間性の奴隷として弄ぶんですって。危なかったね、杏里」
「あのう、そろそろ手錠の鍵、外した方がいいかと…」
 その時、従業員の女性が、控えめな口調で、口をはさんだ。
「火の手は駐車場で上がっているようです。エレベーターは緊急停止していますから、非常階段で外に出るしかありません」
「すみません。お願いします」
 美和が退き、女性のために場所を空けた。
 女性はテーブルから鍵を拾うと、それを使って、難なく杏里を自由にしてくれた。
 とりあえず、パンティだけ穿いて、上からブレザーを羽織った。
 ほかの衣類はリュックと一緒に腕に抱え、従業員の女性の指示通りに部屋を出た。
 エレベータと反対側に鉄の扉があり、どうやらその向こうが非常階段のようだ。
「これからどうする? 杏里? また私の家でひと休みする?」
 美和が訊いてきた。
「そうだね」
 杏里はうなずいた。
「いつも、ありがと。美和さえよければ、私はそれで」
 
 


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

変身シートマスク

廣瀬純一
ファンタジー
変身するシートマスクで女性に変身する男の話

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

処理中です...