190 / 475
第3話 ずっとあなたとしたかった
#31 予告レイプ④
しおりを挟む
「杏里さまを放しなさい!」
階段の登り口に仁王立ちになって、みいが言った。
久しぶりに見るみいは、紗彩のパーティの帰りなのか、フリルのいっぱいついたミニドレスを着ている。
「みい、警察を!」
杏里は叫んだ。
「こいつ、スタンガンを持ってる。歯向かっちゃだめ!」
「平気です」
みいが、獲物を狙う野生の猫みたいな眼でフードの人物をにらみつけた。
「みいは、そんなもの、こわくありません」
謎の人物が動いたのは、その時だった。
杏里の身体を肩から振り落とすと、みいのほうに向き直った。
「いたっ!」
コンクリートの地面に、背中をしたたかに打ちつけて、杏里はうめいた。
チャンスだった。
痛みをこらえ、とっさに四つん這いで襲撃者の足元から逃げ出した。
スカートが腰のあたりまでめくれ上がり、パンティに包まれた尻がむき出しになったが、そんなことにかまってはいられない。
黒い影が、疾風のごとくみいのほうに向かっていく。
スタンガンを持つ右手が伸びた。
が、みいのほうが敏捷さではまさっていた。
すっと腰を沈め、スタンガンの一撃をかわすと、その腕を取って敵を階段の下に投げ飛ばしたのだ!
もんどり打って転げ落ちていく黒い影。
「大丈夫ですか? 杏里さま」
すかさず跳ね起きると、みいが杏里の許に駆け寄ってきた。
「さっすが、みい」
杏里はその温かい身体に両腕を回し、すべすべの頬に自分の頬をすりつけた。
久しぶりに抱くみいの身体は柔らかく、いい匂いがする。
その匂いと感触に、昂ぶった気持ちが落ち着いていくのがわかった。
「間に合ってよかったですぅ。紗彩奥様のお誕生日パーティから、大急ぎで帰ってきたんです。自分でもよくわからないんですけど、なんだかいやな予感がして」
「最新のAI搭載のアンドロイドが、”いやな予感”って、なんか変だよ」
杏里が笑うと、
「総合的な事象からはじき出された未来予測なのではないかと思います。この前お電話でお話しした時、杏里さま、色々不思議なことが起こると言ってたでしょう? だから、ずうっと心配してたんですよ」
「総合的な事象から判断しての未来予測? へーえ、みいにはそんなこともできるんだ」
「当たるかどうかは、天気予報みたいなものですけど」
「でも、今回は的中したね。おかげで助かったよ」
首を伸ばして、おそるおそる階段のほうをうかがった。
襲撃者が再び上ってくる気配はない。
「見てきます」
みいが言って、足音も立てずに駆け出した。
「いませんね」
階下をのぞきこみながら、そう報告する。
「警察に届けますか?」
「その前に、大家さんにひと言断ったほうがいいかも」
「了解です」
みいの後に続いて1階ホールに下りると、管理人室のガラス窓の向こうで、こっくりこっくりハナコばあさんが船を漕いでいるのが見えた。
窓をノックし、目を覚ました老婆に事の次第を説明した。
「あらあら、大変」
机の上に放り出してあった眼鏡をかけ、杏里の顔をしげしげと見つめると、老婆が心配そうに眉根を寄せた。
「わかった。あたしから警察には電話しておくよ。あんたたちは、部屋に戻っといで。鍵もつけ替えてあるし、ベランダに防犯カメラと警報機もつけといたから、部屋の中にいれば安全だよ」
「ありがとうございます」
鍵を開けて部屋に入ると、杏里はリュックを投げ出してどっかりとベッドに腰を下ろした。
その前のカーペットの上に、みいが正座する。
「でも、あれ、いったい誰なんだろう?」
ペットボトルのスポーツドリンクに口をつけて、杏里はつぶやいた。
「ドアに落書きしたり、メモで脅してきたり、完全にストーカーですよね。杏里さまにそんなことするなんて、絶対に許せません」
怒ったような口調で、みいが言う。
「ストーカーかあ。なんだかやっかいなことになったなあ」
ため息をついて天井を見上げると、杏里は思わずつぶやいた。
「でも、心当たりがありすぎて、とても犯人なんて特定できないし」
階段の登り口に仁王立ちになって、みいが言った。
久しぶりに見るみいは、紗彩のパーティの帰りなのか、フリルのいっぱいついたミニドレスを着ている。
「みい、警察を!」
杏里は叫んだ。
「こいつ、スタンガンを持ってる。歯向かっちゃだめ!」
「平気です」
みいが、獲物を狙う野生の猫みたいな眼でフードの人物をにらみつけた。
「みいは、そんなもの、こわくありません」
謎の人物が動いたのは、その時だった。
杏里の身体を肩から振り落とすと、みいのほうに向き直った。
「いたっ!」
コンクリートの地面に、背中をしたたかに打ちつけて、杏里はうめいた。
チャンスだった。
痛みをこらえ、とっさに四つん這いで襲撃者の足元から逃げ出した。
スカートが腰のあたりまでめくれ上がり、パンティに包まれた尻がむき出しになったが、そんなことにかまってはいられない。
黒い影が、疾風のごとくみいのほうに向かっていく。
スタンガンを持つ右手が伸びた。
が、みいのほうが敏捷さではまさっていた。
すっと腰を沈め、スタンガンの一撃をかわすと、その腕を取って敵を階段の下に投げ飛ばしたのだ!
もんどり打って転げ落ちていく黒い影。
「大丈夫ですか? 杏里さま」
すかさず跳ね起きると、みいが杏里の許に駆け寄ってきた。
「さっすが、みい」
杏里はその温かい身体に両腕を回し、すべすべの頬に自分の頬をすりつけた。
久しぶりに抱くみいの身体は柔らかく、いい匂いがする。
その匂いと感触に、昂ぶった気持ちが落ち着いていくのがわかった。
「間に合ってよかったですぅ。紗彩奥様のお誕生日パーティから、大急ぎで帰ってきたんです。自分でもよくわからないんですけど、なんだかいやな予感がして」
「最新のAI搭載のアンドロイドが、”いやな予感”って、なんか変だよ」
杏里が笑うと、
「総合的な事象からはじき出された未来予測なのではないかと思います。この前お電話でお話しした時、杏里さま、色々不思議なことが起こると言ってたでしょう? だから、ずうっと心配してたんですよ」
「総合的な事象から判断しての未来予測? へーえ、みいにはそんなこともできるんだ」
「当たるかどうかは、天気予報みたいなものですけど」
「でも、今回は的中したね。おかげで助かったよ」
首を伸ばして、おそるおそる階段のほうをうかがった。
襲撃者が再び上ってくる気配はない。
「見てきます」
みいが言って、足音も立てずに駆け出した。
「いませんね」
階下をのぞきこみながら、そう報告する。
「警察に届けますか?」
「その前に、大家さんにひと言断ったほうがいいかも」
「了解です」
みいの後に続いて1階ホールに下りると、管理人室のガラス窓の向こうで、こっくりこっくりハナコばあさんが船を漕いでいるのが見えた。
窓をノックし、目を覚ました老婆に事の次第を説明した。
「あらあら、大変」
机の上に放り出してあった眼鏡をかけ、杏里の顔をしげしげと見つめると、老婆が心配そうに眉根を寄せた。
「わかった。あたしから警察には電話しておくよ。あんたたちは、部屋に戻っといで。鍵もつけ替えてあるし、ベランダに防犯カメラと警報機もつけといたから、部屋の中にいれば安全だよ」
「ありがとうございます」
鍵を開けて部屋に入ると、杏里はリュックを投げ出してどっかりとベッドに腰を下ろした。
その前のカーペットの上に、みいが正座する。
「でも、あれ、いったい誰なんだろう?」
ペットボトルのスポーツドリンクに口をつけて、杏里はつぶやいた。
「ドアに落書きしたり、メモで脅してきたり、完全にストーカーですよね。杏里さまにそんなことするなんて、絶対に許せません」
怒ったような口調で、みいが言う。
「ストーカーかあ。なんだかやっかいなことになったなあ」
ため息をついて天井を見上げると、杏里は思わずつぶやいた。
「でも、心当たりがありすぎて、とても犯人なんて特定できないし」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
70
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる