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第3話 ずっとあなたとしたかった

#30 予告レイプ③

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 身体が宙に浮く感覚に、杏里は意識を取り戻した。
 目を開くと、誰かの肩に担ぎ上げられ、エレベーターに向かって運ばれていくところだった。
 頭にすっぽり三角のフードをかぶった人物が、米俵でも運ぶように、杏里の身体を肩に担いでいるのだ。
「誰? 何するの?」
 暴れようとしたとたん、首筋に冷たいものを押しつけられた。
 携帯電気カミソリみたいなその物体には、見覚えがあった。
 テレビの刑事ドラマでおなじみのスタンガンだ。
 やば!
 思ったとたん、びりっときた。
 焼けるような痛みに、杏里は反り返った。
 ショックで膀胱がゆるみ、下着の間を熱いものが滴った。
 くう…。
 身体中の力が抜けていく。
 ぐったりとなった杏里を担いで、謎の人物がエレベーターの前に立ち、ボタンを押した。
 ここは2階だから、階段を使えばよさそうなものだが、人目を警戒してのことだろう。
 電撃はそれなりに強烈だったが、杏里はまだ意識を失ってはいなかった。
 だらりと両手両足を垂らしたまま、犯人の様子を横目でうかがった。
 頭にはフード、全身を雨合羽のようなもので覆っているので、年齢はおろか、男か女かすらもわからない。
 ただ、レイプ魔にしては、意外に華奢な体つきをしている気がする。
 だからといって相手がスタンガンを持っている以上、抵抗するのは得策ではない。
 どうしよう…?
 救いを求めるように周囲に視線を走らせた。
 何か武器になるようなものがないだろうか。
 たとえばバットとか消火器とか。
 が、マンションの廊下は綺麗に片づいていて、塵ひとつ落ちていない。
 性経験豊富な杏里でも、さすがにこんな形のレイプは願い下げだった。
 しかも、ドアの落書きといい、あのメモといい、この犯人はどこか病的な感じがしてならないのだ。
 セックスだけが目的でなく、もっとひどいことを企んでいるとしたら…。
 最近テレビのニュースで見た事件を、杏里はふと思い出した。
 里山で発見された若い女性のバラバラ死体。
 見つかった胴体の部分には、無数の刺し傷や、焦げた痕があったという。
 あれって、意外にここから近くで起きた事件じゃなかったかしら?
 考えただけで、こわくなった。
 そんなの、いや。
 犯された挙句、殺されてバラバラに解体されるだなんて…。
 チンと音がして、エレベーターの箱が停まった。
 開き始めたドアは、まるで地獄への入口のようだ。
 絶望で視野のかすんだ目を、階段のほうに向けた時だった。
 パタパタと軽い足音がして、栗色のツインテールが上り口に現れた。
 人形のように整った愛くるしい顔。
「みい!」
 スタンガンの恐怖も忘れて、杏里は叫んだ。


 

 


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