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第3話 ずっとあなたとしたかった

#28 予告レイプ①

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 中を見たいようで見たくない、謎の第3の展示室。
 そのドアは、今はひっそりと静まり返っている。
 それにしても、
 ー展示の完成には、杏里の協力が必要だー
 って、いったいどういうことなのだろう?
 飾りつけを手伝ってほしいということなのか。
 それとも、ほかに何か深い意味があるのだろうか…?
「あ、ごめん、そろそろ帰らなきゃ」
 展示室を後にして、吹き抜けの階段を1階まで下りると、
 なおも引き留めようとする美和に、愛想笑いとともに杏里は言った。
「まだ引っ越しの荷物、そのままになってるの。急いで片づけないと、足の踏み場もなくて」
 これはあながちうそではない。
 足の踏み場もないというのは大げさだが、まだ梱包を解いていない段ボール箱がいくつか残っているのは事実である。
「そう、残念ね。じゃ、また明日、学校で」
 玄関まで見送りに出てきた美和が、明るい笑顔を振りまきながら、元気よく手を振った。
 ふう。
 駆け足で来た道を戻り、美和が見えなくなったところでため息をつく。
 いい子はいい子なんだけど、どこか少し変…。
 それが、きょう一日彼女と行動を共にした杏里の感想である。
 昆虫の標本や動物のはく製づくりが趣味なんて、あまりにもマニアックというか、JK離れしすぎている。
 美和に影響を与えたのはおそらく父親なのだろうが、親子そろって趣味が悪いとしか言いようがない。
 母親は何も言わないのだろうか。
 夫と娘がそんな趣味に没頭していたら、ふつうの女性は気味悪がると思うのだけれど…。
 地下鉄の中で、杏里はそんなことをずっと考えていた。
 下りる時、ふと手がべたつくのに気づいて匂いを嗅ぐと、どこかで嗅いだことのある青臭い匂いがした。
 どうも気づかぬうちに痴漢が杏里の手にペニスをおしつけ、勝手に射精していったらしい。
 時々あることなので、杏里はたいして驚きはしない。
「んもう、出すなら出すって、ひと言言ってよね」
 あわててトイレに駆け込み、手を洗う。
 スカートのポケットの中から、ハンカチを出そうとした時である。
 ふわりと足元に落ちたものがある。
 白い紙切れだった。
 メモ用紙の切れ端らしい。
 ふたつに折りたたまれ、内側には何か書いてあるようだ。
「何かな?」
 拾い上げ、何げなく開いた杏里は、そこで思わず息を呑んだ。
 赤いペンで書き殴られたミミズのような字がのたくっている。
 そこには、ただひと言、こう記されていた。

    ー今夜、犯すー

 
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