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第3話 ずっとあなたとしたかった
#26 女友だち③
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その後の会話は、主に美和が主導権を握り、杏里は答えるのに大わらわだった。
部活動といえば、中学の時、一時レスリング部に所属していたくらい。
女の子らしい趣味はまったくなく、しいて言えばオナニーである。
好きなものは自分の裸。
特に顔と乳房と臀部が大のお気に入りだ。
したがって、他人にはあまり興味がない。
ファッションには多少関心があるものの、それは己をいかにセクシーに見せるかが基準になっているから、ほかの同年代の女の子とは感覚がだいぶ違うと思うのだ。
が、さすがにそうは言えないから、そこは笑ってごまかすしかなかった。
「それで、美和の趣味は何なの? こんなおうちに住んでるんだから、何か素敵な趣味がありそうだよね?」
別に知りたかったわけでもなく、単に質問責めから逃れたくて、苦し紛れに杏里は訊いた。
「うん、あるといえば、あるんだけど」
美和の表情がぱっと輝くのを、杏里は見逃さなかった。
美和はこれを訊いてほしかったのだ。
だから、導入として、私のことを根掘り葉掘り聞きたがったのだろう。
そう思った。
「あんまり女の子らしくないから、なかなかひとには見せられないんだけど、杏里にならいいかな。杏里なら、理解してくれるような気がする」
「女の子らしくないって、プラモデルとかプロレスとか?」
「ブブー。いいわ。見せてあげる。一緒に来て」
カップをそのままにして、美和が腰を上げた。
そうして導かれたのは、2階である。
2階には長い通路に沿って、右手にドアが4つ並んでいる。
突き当りにもうひとつドアがあるから、計5つも部屋があることになる。
「私の趣味はね、コレクションなの。まずここが、第一展示室」
美和が一番手前の白いドアのノブに手をかける。
「わ」
おそるおそる中に足を踏み入れた杏里は、壁一面にかかっているものを見て、文字通り絶句した。
「す、すごいね…。これ、美和がひとりで全部集めたの?」
驚愕が収まるのを待って、かすれ声で訊く。
「ううん、まさか。これはいわば、パパとの共作ね。パパが外国から持ってきたのもずいぶんあるもの。ふふ、でも、ちょっとしたもんでしょう?」
美和は心なしか、誇らしげだ。
杏里の肩に手を置くと、中に入るよう、促してきた。
「さ、遠慮なく、どうぞ。気に入ったなら、ゆっくり見ていってね」
たしかにこれは、あまり女の子らしい趣味とは、いえないかも…。
正面の窓を除いた左右の壁をびっしり覆い尽くしているのは、おびただしい蝶の標本である。
種類別に分けたあるのか、綺麗に額の中に展翅されて、宝石のようにきらめいている。
「なんだか、見たことのない蝶々が、いっぱい…」
「南米のモルフォチョウとかはね、パパが獲ってきたものだから。半分は外国産かな。今では条約で輸入禁止になってるのも多いみたい」
「そうかあ。お父さん、外交官だものね」
「そうなの。任地が変わるたびに、その国の生き物を持って帰ってくるから、コレクション、増える一方なのよ」
「さっき、第一展示室って言ったよね。てことは」
「ええ。展示室は全部で3つ。順番に見せてあげるけど、3番目の部屋はまだ整理中だから、きょうは2番目までで勘弁してね」
うっとりと壁の標本に見入りながら、美和が言う。
たはー。
杏里はただ驚くしかない。
こんな部屋が、あとふたつもあるんだ。
お金持ちのやることって、わかんないなあ。
心の底から、そう思ったのである。
部活動といえば、中学の時、一時レスリング部に所属していたくらい。
女の子らしい趣味はまったくなく、しいて言えばオナニーである。
好きなものは自分の裸。
特に顔と乳房と臀部が大のお気に入りだ。
したがって、他人にはあまり興味がない。
ファッションには多少関心があるものの、それは己をいかにセクシーに見せるかが基準になっているから、ほかの同年代の女の子とは感覚がだいぶ違うと思うのだ。
が、さすがにそうは言えないから、そこは笑ってごまかすしかなかった。
「それで、美和の趣味は何なの? こんなおうちに住んでるんだから、何か素敵な趣味がありそうだよね?」
別に知りたかったわけでもなく、単に質問責めから逃れたくて、苦し紛れに杏里は訊いた。
「うん、あるといえば、あるんだけど」
美和の表情がぱっと輝くのを、杏里は見逃さなかった。
美和はこれを訊いてほしかったのだ。
だから、導入として、私のことを根掘り葉掘り聞きたがったのだろう。
そう思った。
「あんまり女の子らしくないから、なかなかひとには見せられないんだけど、杏里にならいいかな。杏里なら、理解してくれるような気がする」
「女の子らしくないって、プラモデルとかプロレスとか?」
「ブブー。いいわ。見せてあげる。一緒に来て」
カップをそのままにして、美和が腰を上げた。
そうして導かれたのは、2階である。
2階には長い通路に沿って、右手にドアが4つ並んでいる。
突き当りにもうひとつドアがあるから、計5つも部屋があることになる。
「私の趣味はね、コレクションなの。まずここが、第一展示室」
美和が一番手前の白いドアのノブに手をかける。
「わ」
おそるおそる中に足を踏み入れた杏里は、壁一面にかかっているものを見て、文字通り絶句した。
「す、すごいね…。これ、美和がひとりで全部集めたの?」
驚愕が収まるのを待って、かすれ声で訊く。
「ううん、まさか。これはいわば、パパとの共作ね。パパが外国から持ってきたのもずいぶんあるもの。ふふ、でも、ちょっとしたもんでしょう?」
美和は心なしか、誇らしげだ。
杏里の肩に手を置くと、中に入るよう、促してきた。
「さ、遠慮なく、どうぞ。気に入ったなら、ゆっくり見ていってね」
たしかにこれは、あまり女の子らしい趣味とは、いえないかも…。
正面の窓を除いた左右の壁をびっしり覆い尽くしているのは、おびただしい蝶の標本である。
種類別に分けたあるのか、綺麗に額の中に展翅されて、宝石のようにきらめいている。
「なんだか、見たことのない蝶々が、いっぱい…」
「南米のモルフォチョウとかはね、パパが獲ってきたものだから。半分は外国産かな。今では条約で輸入禁止になってるのも多いみたい」
「そうかあ。お父さん、外交官だものね」
「そうなの。任地が変わるたびに、その国の生き物を持って帰ってくるから、コレクション、増える一方なのよ」
「さっき、第一展示室って言ったよね。てことは」
「ええ。展示室は全部で3つ。順番に見せてあげるけど、3番目の部屋はまだ整理中だから、きょうは2番目までで勘弁してね」
うっとりと壁の標本に見入りながら、美和が言う。
たはー。
杏里はただ驚くしかない。
こんな部屋が、あとふたつもあるんだ。
お金持ちのやることって、わかんないなあ。
心の底から、そう思ったのである。
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