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第3話 ずっとあなたとしたかった
#9 地獄からのメッセージ②
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メゾン・ド・ハナコは5階建てで、ひとつのフロアに部屋が4つずつ。
通路に沿って南側に3つの部屋が並び、4つ目の部屋だけ、突き当りにカギ型に飛び出している。
杏里が借りたのは、2階の突き当り、204号室である。
2階だからエレベーターを使う必要もなく、誰も見ていないのをいいことに、奔放にスカートの裾から下着をのぞかせて階段を駆け上った。
高鳴る胸を押さえて、鍵穴に鍵を差し込んだ。
そっとドアを開けると、短い廊下に続き、何もない6畳ほどの洋間が目の前に現れた。
「ひゃっほう」
靴を脱ぎ散らかすと、杏里は小踊りしながら中に上がり込んだ。
この部屋が気に入ったわけは、家賃が激安なこと以外に、もうひとつ。
狭いのにふつうより天井が高くなっていて、中2階が備わっているのだ。
ハナコさんがロフトと呼んだ、屋根裏部屋みたいな空間である。
そのロフトには、押し入れの脇の短い階段から上がれるようになっている。
そこは、中腰でないと立っていられないほどの、狭いスペースだ。
用途は不明だが、秘密基地みたいでかっこいい。
始めて見た時、杏里はそう思ったのだった。
さっそくロフトに上ると、腹ばいになって部屋の中を見渡した。
「あそこにベッドを置くでしょ、その足元にオナニー用の鏡台かな。服は押し入れに入れるとして、やっぱり下着用の箪笥は要るよね。勉強机は…まあ、テーブルがあればいらないか」
家具の配置をあれこれ想像するだけで、楽しくなってきた。
しばらくそうして、あーでもないこーでもないと空想した後、下に降りてサッシ窓を開けた。
窓の外は猫の額ほどのベランダである。
ベランダに立つと、眼下に広がる広大な墓地が視界に飛び込んできた。
深い緑に囲まれ、整然と並ぶおびただしい墓石の群れ。
いったい、いくつあるのだろう?
五百? 千?
今度暇な時に、ゆっくり数えてみようっと。
大体のめどはついた。
がらんとした空間にひとりでいると、なぜかオナニーがしたくなる。
これが杏里の悪い癖だ。
現に、今も知らぬ間にセーラー服の上から乳首を弄っている。
「もう、杏里ったら、いけない子」
気を取り直し、最後に右の乳首をクイとひねってそうひとりごちた。
「引っ越してくれば、オナニーなんてしたい放題でしょ」
きょうのところは我慢することにして、靴を履き、外に出た。
杏里が度肝を抜かれたのは、施錠しようとドアを振り返った瞬間である。
ベージュ色の真新しいドアの表面に、赤い塗料で何か書いてある。
狂ったような殴り書き。
思いっきり大きな金釘流で書かれた文字は、こうだった。
『犯してやる』
通路に沿って南側に3つの部屋が並び、4つ目の部屋だけ、突き当りにカギ型に飛び出している。
杏里が借りたのは、2階の突き当り、204号室である。
2階だからエレベーターを使う必要もなく、誰も見ていないのをいいことに、奔放にスカートの裾から下着をのぞかせて階段を駆け上った。
高鳴る胸を押さえて、鍵穴に鍵を差し込んだ。
そっとドアを開けると、短い廊下に続き、何もない6畳ほどの洋間が目の前に現れた。
「ひゃっほう」
靴を脱ぎ散らかすと、杏里は小踊りしながら中に上がり込んだ。
この部屋が気に入ったわけは、家賃が激安なこと以外に、もうひとつ。
狭いのにふつうより天井が高くなっていて、中2階が備わっているのだ。
ハナコさんがロフトと呼んだ、屋根裏部屋みたいな空間である。
そのロフトには、押し入れの脇の短い階段から上がれるようになっている。
そこは、中腰でないと立っていられないほどの、狭いスペースだ。
用途は不明だが、秘密基地みたいでかっこいい。
始めて見た時、杏里はそう思ったのだった。
さっそくロフトに上ると、腹ばいになって部屋の中を見渡した。
「あそこにベッドを置くでしょ、その足元にオナニー用の鏡台かな。服は押し入れに入れるとして、やっぱり下着用の箪笥は要るよね。勉強机は…まあ、テーブルがあればいらないか」
家具の配置をあれこれ想像するだけで、楽しくなってきた。
しばらくそうして、あーでもないこーでもないと空想した後、下に降りてサッシ窓を開けた。
窓の外は猫の額ほどのベランダである。
ベランダに立つと、眼下に広がる広大な墓地が視界に飛び込んできた。
深い緑に囲まれ、整然と並ぶおびただしい墓石の群れ。
いったい、いくつあるのだろう?
五百? 千?
今度暇な時に、ゆっくり数えてみようっと。
大体のめどはついた。
がらんとした空間にひとりでいると、なぜかオナニーがしたくなる。
これが杏里の悪い癖だ。
現に、今も知らぬ間にセーラー服の上から乳首を弄っている。
「もう、杏里ったら、いけない子」
気を取り直し、最後に右の乳首をクイとひねってそうひとりごちた。
「引っ越してくれば、オナニーなんてしたい放題でしょ」
きょうのところは我慢することにして、靴を履き、外に出た。
杏里が度肝を抜かれたのは、施錠しようとドアを振り返った瞬間である。
ベージュ色の真新しいドアの表面に、赤い塗料で何か書いてある。
狂ったような殴り書き。
思いっきり大きな金釘流で書かれた文字は、こうだった。
『犯してやる』
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