そんなお口で舐められたら💛

第3話 ずっとあなたとしたかった

#4 合格通知

　合格通知は、速達で来た。
　ピンポーン。
　インターホンが鳴ると同時に、杏里は玄関先に飛び出した。
　まだ起きたばかりである。
　スケスケのネグリジェを豊満な肢体にまとっただけの杏里を見て、郵便局員が硬直する。
「あ、あの、こ、これ、笹原、杏里さん宛の、」
「はい、私です」
　この格好だと、半透明な布を通して乳房の形が丸わかりだ。
　洋梨型のそれは先がぷりっと上を向いていて、男女問わず触りたくなる誘惑に堪えるのは至難の業なのだ。
「なんか薄っ！、だめだったのかなあ」
　茹蛸のように赤くなり、股間を膨らませた郵便配達の若者が帰っていくと、杏里は封筒を日にかざしてみた。
「どうした？」
　そこに現れたのは、金田一耕助かと見紛うばかりのぼさぼさ髪の男、小田切勇次である。
　杏里の後見人かつこの家の所有者だ。
　小田切は20代後半とまだ若いが、杏里のフェロモンに惑わされない世にも珍しい男である。
　子供のころに陰部を失う事故に遭い、それ以来性的欲望を感じなくなってしまったかららしい。
「合格通知。ほら、きのう推薦入試受けた、清流院高校の」
「透かして見てないで、開けてみればいいじゃないか」
　低血圧の小田切が、面倒くさそうに言う。
　目の前で杏里の乳房が揺れているのに、とんと無関心だ。
「だって、こわいもの。落ちてたらどうしよう」
「その時は、おとなしく”委員会”に指定された高校に行くんだな」
「やですよ。そんなの。私もう、高校生なんだから。子供じゃないんだよ」
「だからまだなってないんだろ？　高校生には」
「まあ、そうだけど…。あ、やだ、やったあ！　見て。合格だよ！」
　思い切って封を開けると、まず目に飛び込んできたのは、合格の二文字だった。
「わあ、それも、特別奨学生！　3年間、授業料タダだって！　もちろん、入学金も！」
「あやしいな」
　小田切が疑わしげな顔をする。
「推薦入試とか言ってたな…。ははあ、杏里、おまえ、また何かやったんじゃないのか？」
「てへ。特技はって訊かれたから、ちょっと服を脱いで見せただけ。そしたらみんなボッキしちゃって」
「そんなことだろうと思った」
　肩をすくめる小田切。
「相変わらずのビッチだな、おまえってやつは」
「どういたしまして。それより約束だよ。特待生取れたら、一人暮らし、認めてくれるんだよね？」
「さて、どうするかな」
　小田切は、なぜか煮え切らない。
「えー、そんなのないよ！　あ、まさか、勇次、私がいなくなって、寂しいとか？」
「いや、それはない」
「はっきり言うね。じゃ、何なの？」
　杏里がちょっぴり傷ついた表情になる。
「高校生の本分は、セックスじゃない。勉強だ。それを守れるか？」
「う」
「何が、『う』なんだ？」
「ま、守るよ。守ります」
「本当に、できるのか？」
「勉強4、オナニー4、セックス2の割合なら、いいですか？」
「オナニー4？　多すぎるだろう？」
「そこは譲れません。私、オナニー用の鏡台も、持ってくつもりだし」
「何？　あれ、オナニー用ったのか？」
「てへ。ばれたか」

　ともあれ、こうして杏里は晴れてJKとなり、念願のひとり暮らしを始めることになったのだが…。
　今思うと、それこそが、この後立て続けに起こることになる、血も凍る恐怖への招待状だったのである…。