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第2話 レズふたり旅
#110 ビッチ探偵杏里⑧
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みいは、高性能のセクサロイドならぬ、セクサペットである。
思考するラブドールとして開発されたみいは、クローンの肉体にAIの頭脳を備えている。
源太他殺説は、おそらくそのAIが論理的思考を働かせて判断したものだろう。
だとすれば、それはまず間違いない。
だが、その高性能AIにすら見破れなかったダイイングメッセージの謎を、考えるという行為にはまるで縁のない杏里が解いてしまったのは、それがあまりにくだらぬ内容だったからである。
「こうなったら、後は行動あるのみね。さあ、忙しくなるぞお」
ノースリーブなのに、腕まくりの真似をする杏里。
「杏里さまったら、もったいぶらないでくださいよ。みいにも教えてくださいったら、何がわかったのか」
みいが唇を尖らせた。
「まだダメ。だって、優秀な探偵ってみんなそうでしょ? 誰も物語の途中でネタ晴らしなんてしないじゃない」
「でも、杏里さまは、こう言っちゃなんですが、とても優秀な探偵には見えません」
「見かけはビッチでも頭は名探偵なの! みいは、念のために、遠野山荘の従業員のアリバイを調べてきて。いくらなんでも山荘で働いてるのが、あの双子のおばあちゃんだけってことはないと思うの。ほかにも従業員がいるはずよ。まかないのおばさんとか、お風呂当番のおじさんとか」
「そういう杏里さまは、どうするんですか?」
「私は食堂を調べてみる。ひとつね、すっごく頭に引っかかってることがあるんだ」
「食堂ですかあ? そんなところに、いったい何が?」
「わかんない。でもね、朝食を食べた時と、源太さんが殺された後とでは、微妙に何かが違う気がするの」
「みいも一緒じゃ、だめなんですかあ?」
「時間の節約のためにも、ここは二手に分かれるべきだと思う」
「時間の節約? どうしてそんなことする必要が?」
「わかんないかな」
杏里はくびれた腰に両手を当てて、正面からみいを見た。
「明日の夕方には、道路が修復されて警察が来る。それまでに、なんとしてでも、私たちで犯人を捕まえるの」
「え? なぜそんな無謀なことを?」
「犯人は、あの3人のうちの誰か。その可能性が大なわけでしょ? でも、清さんにしても、麗奈さんにしても、篠田さんにしても、一緒に映画を撮った仲だし、満更知らない人たちってわけじゃない。だったら、警察より先に犯人を挙げて、自首を勧めるべきだと思うの。そうすれば、罪が少しは軽くなるから」
「杏里さまって…意外に優しいところ、あるんですね」
みいが憧憬のまなざしで、杏里を見つめ返してきた。
少し照れ臭くなって、杏里は言った。
「まあね。昔からビッチほど情に厚いっていうでしょ? さ、とにかく、方針が決まったら、さっそく捜査だよ。みい、従業員の人たちと双子のおばあさんのほう、頼むわね」
思考するラブドールとして開発されたみいは、クローンの肉体にAIの頭脳を備えている。
源太他殺説は、おそらくそのAIが論理的思考を働かせて判断したものだろう。
だとすれば、それはまず間違いない。
だが、その高性能AIにすら見破れなかったダイイングメッセージの謎を、考えるという行為にはまるで縁のない杏里が解いてしまったのは、それがあまりにくだらぬ内容だったからである。
「こうなったら、後は行動あるのみね。さあ、忙しくなるぞお」
ノースリーブなのに、腕まくりの真似をする杏里。
「杏里さまったら、もったいぶらないでくださいよ。みいにも教えてくださいったら、何がわかったのか」
みいが唇を尖らせた。
「まだダメ。だって、優秀な探偵ってみんなそうでしょ? 誰も物語の途中でネタ晴らしなんてしないじゃない」
「でも、杏里さまは、こう言っちゃなんですが、とても優秀な探偵には見えません」
「見かけはビッチでも頭は名探偵なの! みいは、念のために、遠野山荘の従業員のアリバイを調べてきて。いくらなんでも山荘で働いてるのが、あの双子のおばあちゃんだけってことはないと思うの。ほかにも従業員がいるはずよ。まかないのおばさんとか、お風呂当番のおじさんとか」
「そういう杏里さまは、どうするんですか?」
「私は食堂を調べてみる。ひとつね、すっごく頭に引っかかってることがあるんだ」
「食堂ですかあ? そんなところに、いったい何が?」
「わかんない。でもね、朝食を食べた時と、源太さんが殺された後とでは、微妙に何かが違う気がするの」
「みいも一緒じゃ、だめなんですかあ?」
「時間の節約のためにも、ここは二手に分かれるべきだと思う」
「時間の節約? どうしてそんなことする必要が?」
「わかんないかな」
杏里はくびれた腰に両手を当てて、正面からみいを見た。
「明日の夕方には、道路が修復されて警察が来る。それまでに、なんとしてでも、私たちで犯人を捕まえるの」
「え? なぜそんな無謀なことを?」
「犯人は、あの3人のうちの誰か。その可能性が大なわけでしょ? でも、清さんにしても、麗奈さんにしても、篠田さんにしても、一緒に映画を撮った仲だし、満更知らない人たちってわけじゃない。だったら、警察より先に犯人を挙げて、自首を勧めるべきだと思うの。そうすれば、罪が少しは軽くなるから」
「杏里さまって…意外に優しいところ、あるんですね」
みいが憧憬のまなざしで、杏里を見つめ返してきた。
少し照れ臭くなって、杏里は言った。
「まあね。昔からビッチほど情に厚いっていうでしょ? さ、とにかく、方針が決まったら、さっそく捜査だよ。みい、従業員の人たちと双子のおばあさんのほう、頼むわね」
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