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第2話 レズふたり旅
#109 ビッチ探偵杏里⑦
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食事を済ませると、杏里はみいを誘って散歩に出ることにした。
建物の中に閉じこもってばかりでは退屈だし、何より、犯人があの中にいるかと思うと、どうにも落ちついていられなかったからだ。
遠野荘の周りは森である。
森の奥は傾斜が徐々に急になり、山岳地帯へと続いている。
だから、歩ける距離は知れていた。
「ねえ、みい、本当にあれ、ダイイングメッセージだと思ってるの?」
手をつないで歩きながら、杏里はたずねた。
杏里とて、ダイイングメッセージが何かということくらいは知っている。
少年探偵が活躍する、お気に入りのテレビアニメによく出てくるからだ。
「間違いありません。源太さんは、梁から吊るされて意識が戻った時、最後の力を振り絞ってフリチンになったのです。死ぬ間際の行動といったら、犯人の告発しかないはずです」
かたくなに頬をこわばらせ、みいが言う。
あの後、清たちに大笑いされたことが、よほどショックなのだろう。
「うーん、でもなあ、あの格好から想像できることといえば…例えば、犯人は変態だとか?」
「もっと単純なことだと思います。変態かそうでないかなんて、見かけだけではわからないですから」
「篠田さんなら、ヘンタイにぴったりだけどね」
「それをいうなら、麗奈さんだって…・お風呂でみいに、あんなことしてきたし」
人口呼吸と見せかけて、みいにデイープキスを敢行し、あまつさえ、また戻ってきて襲おうとした麗奈。
確かに言われてみれば、彼女も痴女の一員なのかも。
「メッセージというのは、視覚に訴えかけるものであるはずです。例えばあの状況で、真っ先に杏里さまの目に飛び込んできたものは、何ですか?」
「毛、かな」
正直に、杏里は答えた。
「私、あんなすごい陰毛、初めて見たもの」
「毛、ですか…。ほかには?」
みいがぽっと顔を赤らめる。
「そりゃ。もちろん、ちんちんでしょ? すっかり縮こまってしまってたけどさ」
「毛と、おちんちん…」
難解なパズルを前にしたかのように、眉間にしわを寄せ、考え込むみい。
「そう、毛と、チンポコ。毛、ちんぽこ、毛、ちんぽ…あれ?」
呪文のように唱えているうちに、
杏里ははたと手を打った。
「やだ、みい! 私、わかっちゃった!」
「え? 何がですか?」
みいがびっくりしたように目を真ん丸くする。
「ダイイングメッセージの意味! それから犯人も!」
「はあ?」
そうか、そうだったのか。
杏里はぐるぐる円を描いて歩き回り始めた。
じゃ、あとは、密室の謎さえ解ければ…。
でも、犯人がわかれば、それもすぐにわかりそうな気がする。
うは、私ってば、きょう、めっちゃ冴えてるじゃない!
建物の中に閉じこもってばかりでは退屈だし、何より、犯人があの中にいるかと思うと、どうにも落ちついていられなかったからだ。
遠野荘の周りは森である。
森の奥は傾斜が徐々に急になり、山岳地帯へと続いている。
だから、歩ける距離は知れていた。
「ねえ、みい、本当にあれ、ダイイングメッセージだと思ってるの?」
手をつないで歩きながら、杏里はたずねた。
杏里とて、ダイイングメッセージが何かということくらいは知っている。
少年探偵が活躍する、お気に入りのテレビアニメによく出てくるからだ。
「間違いありません。源太さんは、梁から吊るされて意識が戻った時、最後の力を振り絞ってフリチンになったのです。死ぬ間際の行動といったら、犯人の告発しかないはずです」
かたくなに頬をこわばらせ、みいが言う。
あの後、清たちに大笑いされたことが、よほどショックなのだろう。
「うーん、でもなあ、あの格好から想像できることといえば…例えば、犯人は変態だとか?」
「もっと単純なことだと思います。変態かそうでないかなんて、見かけだけではわからないですから」
「篠田さんなら、ヘンタイにぴったりだけどね」
「それをいうなら、麗奈さんだって…・お風呂でみいに、あんなことしてきたし」
人口呼吸と見せかけて、みいにデイープキスを敢行し、あまつさえ、また戻ってきて襲おうとした麗奈。
確かに言われてみれば、彼女も痴女の一員なのかも。
「メッセージというのは、視覚に訴えかけるものであるはずです。例えばあの状況で、真っ先に杏里さまの目に飛び込んできたものは、何ですか?」
「毛、かな」
正直に、杏里は答えた。
「私、あんなすごい陰毛、初めて見たもの」
「毛、ですか…。ほかには?」
みいがぽっと顔を赤らめる。
「そりゃ。もちろん、ちんちんでしょ? すっかり縮こまってしまってたけどさ」
「毛と、おちんちん…」
難解なパズルを前にしたかのように、眉間にしわを寄せ、考え込むみい。
「そう、毛と、チンポコ。毛、ちんぽこ、毛、ちんぽ…あれ?」
呪文のように唱えているうちに、
杏里ははたと手を打った。
「やだ、みい! 私、わかっちゃった!」
「え? 何がですか?」
みいがびっくりしたように目を真ん丸くする。
「ダイイングメッセージの意味! それから犯人も!」
「はあ?」
そうか、そうだったのか。
杏里はぐるぐる円を描いて歩き回り始めた。
じゃ、あとは、密室の謎さえ解ければ…。
でも、犯人がわかれば、それもすぐにわかりそうな気がする。
うは、私ってば、きょう、めっちゃ冴えてるじゃない!
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