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第2話 レズふたり旅

#103 ビッチ探偵杏里①

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「わかった!」

 清が手を打った。

「つまり、みいちゃんは、こう言いたいわけだ。犯人は、源太を絞殺した後、あの鍵を使って外に出、扉に鍵をかけた。そして、明かり採りの窓から、鍵だけ中に放り投げた、と」

「ええ、そうです。でも、杏里さまの言う通りですね。それじゃ、カンヌキの説明がつきません」

 てへっと肩をすくめてみせるみい。

「針と糸、あるいは氷を使ったのかも」

 杏里は、扉のはまっていたあたりの壁に顔を近づけた。

「あ、でも無理っぽい。扉の周りの壁はステンレスで補強されてるから、針は刺せないし、カンヌキは落とし込み式じゃなくって、棒を水平にスライドさせるタイプだから、氷で支えるのもだめみたい」

「へーえ。杏里ちゃんって、見かけによらず、意外とミステリに強いんだね」

 てきぱきと分析する杏里に、清が感嘆の声を上げた。

「うん。アニメと2時間ドラマで、日ごろから推理力鍛えてるから」

「アニメとドラマか。はは、杏里ちゃんらしいや」

「ちょっと清ったら」

 笑う清を、麗奈がじろりと睨みつける。

「仲間が殺されたっていうのに、何呑気に推理ごっこしてんのよ! あんた、ケータイ持ってるんでしょ? だったら早く110番通報しなさいよ」

 麗奈自身はスマホも携帯も持っていないらしく、はなから清に連絡させるつもりらしい。

「じゃ、私たちはおばあさんたちに知らせてきます」

 麗奈の怒りの矛先がこっちに向かないうちにと、杏里はとっさに口をはさんだ。

「あ、それはあたしが。あなたたちは、清や篠田君と一緒にここ見てて」

 そう言い置いて、さっさと土蔵を出て行く麗奈。
 
「ひええ」

 杏里はみいと顔を見合わせた。

「どうする?」

「どうしましょう…?」

 みいは死体を見るのも怖いらしく、麗奈の去ったほうを眺めながら震えている。

 杏里としても同感だった。

 下半身むき出しで死んでいる源太。

 あの股間のイチモツが昨夜この体の中に入ってきたのかと思うと、何とも言えず、ぞっとした気分になる。

 それに、絞殺死体の死に顔というのは、予想以上に恐ろしかった。

 飛び出しそうに開かれた目。

 苦しげに開いた口からだらんと垂れた舌。

 これじゃ、プレイボーイもかたなしだ。

 あ、そういえば。

 杏里はキョロキョロ土蔵の中を見回すと、やがてあるものを見つけ、つかつかとテーブルのひとつに歩み寄った。

 やっぱり、あった。

 デジカメを持ち上げ、すばやくSDカードを抜き取った。

 カードをショートパンツの尻ポケットにねじ込むと、小走りに土蔵を横切り、出がけにみいの腕をつかんだ。

「みい、やっぱり、私たちも行こう。なにかお手伝いできること、あるかもしれないし」

 幸い、篠田は、杏里の早業には気づかなかったようだ。

 ただ、ぼうっと死体の横にかがみこんでいるだけである。

 清はというと、土蔵の外に出て、スマホで警察と話をしている最中だった。

 とりあえず、杏里は篠田に声をかけることにした。

「すみません。みいが気分悪いっていうものですから。篠田さん、あと、お願いします」

「ああ」

 篠田がちらと目を上げ、大儀そうにうなずいてみせた。

 無事母屋に帰り着くと、

「証拠品、ゲットしてきたから、もう大丈夫だよ」

 上がってすぐの食堂で、みいにカードを見せた。

「あそこにカメラがあったってことは、私たち、やっぱり撮影されてたんだ。きっとこの中に、あの時の映像が」

「そんなの見つかったら、みいと杏里さまが、警察の人に疑われちゃいますね」

「だね。女子中学生ふたり組、凌辱されたリベンジで、強姦魔を絞殺、とか」

「動機、ありすぎですよね」

「うん、だって、正直、ちょっと憎いもの」

 そんな会話を交わしながら、食堂の中に視線を巡らせた時である。

 杏里はふと、かすかな違和感を覚えて、眉をひそめた。

 あれ?

 おかしい。

 ここ、さっきと、何かが違う…?


 





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