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第2話 レズふたり旅
#101 奇妙な密室、奇妙な死体③
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「やばいよ、やばい」
杏里がみいに耳打ちしたのは、お通夜のように静まり返った朝食を終えて、庭に出た時のことである。
これからその土蔵とやらをみんなで見に行くことになったのだが、杏里にはひとつ、気になってならないことがあったのだ。
「え? 何がです?」
無邪気にこちらを見つけ返してくるみい。
その耳元に口を近づけると、他のメンバーに聞こえないよう、小声で杏里はささやいた。
「夕べのあれさ、ひょっとして、ビデオに撮られてたんじゃないかな? だから源太さん、それを早く編集したくて、土蔵に行ったのかも。だって、映画の撮影の内容だけなら、そんなに大したシーン、なかったと思うもの。せいぜい、私が川でエロガッパに胸を揉まれるところと、路上で馬におかされかけるところと、森で裸にされて木に吊るされるとこぐらいでしょ? みいときた日には、パンチラくらいしか映ってないはずだよ。ロリコンの篠田さんならまだしも、あのスケコマシの源太さんが、その程度の内容で満足するとは考えられないもの」
「それだけ写ってれば、もう充分って気もしますけど…。でも、ありそうですよね。その可能性」
みいの頬がこわばった。
あの時、覆面男がスマホかデジカメを持っていたかどうかまでは、杏里にしても記憶にない。
が、どの道途中から意識がもうろうとしてしまったから、その後、撮影されてもわからないわけである。
「あんなのDVDにされて売られたりしたら、私たちの人生終わりだよ。もしかしたら、今頃もう、ネットの動画サイトにアップされるてるかもしれないし」
のんびり屋の杏里も、さすがに青ざめている。
みいに話していると、それがまぎれもない事実のような気がしてきて、居ても立ってもいられない気分になる。
そこに、清の声が聞こえてきた。
「あれ? 鍵がかかってるぞ? おーい、源太、いるのか? いるなら開けろよ!」
建物の角を曲がったあたり。
裏手の畑と母屋の境に、四角い古びた小屋が建っている。
しっくいで固められた壁にさびたトタン屋根。
扉の部分だけ、鉄でできているようだ。
「返事がないな。篠田、ちょっと肩車してくれないか。明り採りの窓から、中を見てみるから」
キリンのようにひょろ長い篠田がしゃがみ込み、その肩に短躯の清がまたがった。
麗奈に横から支えられ、危なっかしく篠田が立ち上がる。
土蔵の屋根と壁の境に、長方形の窓が開いている。
窓というほどの大きさもない、枠にはまったガラス板が斜めに動く、典型的な明かり採りである。
「げ、大変だ」
篠田の肩の上で腰を浮かしてのぞくなり、清が素っ頓狂な声を上げた。
「誰か、ばあさんたちのとこに行って、早く合鍵を! 中で源太が死んでる!」
杏里がみいに耳打ちしたのは、お通夜のように静まり返った朝食を終えて、庭に出た時のことである。
これからその土蔵とやらをみんなで見に行くことになったのだが、杏里にはひとつ、気になってならないことがあったのだ。
「え? 何がです?」
無邪気にこちらを見つけ返してくるみい。
その耳元に口を近づけると、他のメンバーに聞こえないよう、小声で杏里はささやいた。
「夕べのあれさ、ひょっとして、ビデオに撮られてたんじゃないかな? だから源太さん、それを早く編集したくて、土蔵に行ったのかも。だって、映画の撮影の内容だけなら、そんなに大したシーン、なかったと思うもの。せいぜい、私が川でエロガッパに胸を揉まれるところと、路上で馬におかされかけるところと、森で裸にされて木に吊るされるとこぐらいでしょ? みいときた日には、パンチラくらいしか映ってないはずだよ。ロリコンの篠田さんならまだしも、あのスケコマシの源太さんが、その程度の内容で満足するとは考えられないもの」
「それだけ写ってれば、もう充分って気もしますけど…。でも、ありそうですよね。その可能性」
みいの頬がこわばった。
あの時、覆面男がスマホかデジカメを持っていたかどうかまでは、杏里にしても記憶にない。
が、どの道途中から意識がもうろうとしてしまったから、その後、撮影されてもわからないわけである。
「あんなのDVDにされて売られたりしたら、私たちの人生終わりだよ。もしかしたら、今頃もう、ネットの動画サイトにアップされるてるかもしれないし」
のんびり屋の杏里も、さすがに青ざめている。
みいに話していると、それがまぎれもない事実のような気がしてきて、居ても立ってもいられない気分になる。
そこに、清の声が聞こえてきた。
「あれ? 鍵がかかってるぞ? おーい、源太、いるのか? いるなら開けろよ!」
建物の角を曲がったあたり。
裏手の畑と母屋の境に、四角い古びた小屋が建っている。
しっくいで固められた壁にさびたトタン屋根。
扉の部分だけ、鉄でできているようだ。
「返事がないな。篠田、ちょっと肩車してくれないか。明り採りの窓から、中を見てみるから」
キリンのようにひょろ長い篠田がしゃがみ込み、その肩に短躯の清がまたがった。
麗奈に横から支えられ、危なっかしく篠田が立ち上がる。
土蔵の屋根と壁の境に、長方形の窓が開いている。
窓というほどの大きさもない、枠にはまったガラス板が斜めに動く、典型的な明かり採りである。
「げ、大変だ」
篠田の肩の上で腰を浮かしてのぞくなり、清が素っ頓狂な声を上げた。
「誰か、ばあさんたちのとこに行って、早く合鍵を! 中で源太が死んでる!」
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