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第2話 レズふたり旅

#100 奇妙な密室、奇妙な死体②

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 ユニットバスであわててふたりシャワーを浴び、お揃いのTシャツとショートパンツに着替えて階下に降りた。

 食堂には映画研究会の面々が顔を揃えていて、その後ろの白板で、写真の一部が窓からの風にはためいていた。

 だが、なるほど、あの源太の姿はない。

「きのうあれから男部屋で麻雀してさ、深夜0時には解散したんだけど、明け方起きたら源太がいなくて」

 訊きもしないのに、清がしゃべりだした。

「その時はトイレだろうくらいに思ってそのまま寝ちゃったんだけどさ、今朝起きたらまだ姿がないってわけ」

「町に出かけたんじゃないの? 源太のことだから、女の子ひっかけにさ」

 不機嫌そうに、麗奈が言った。

 睡眠不足なのか、肌が荒れ、眼の下に隈ができている。

「ありえないでしょ。こんな朝早くから。それに、さっき婆さんたちに聞いたんだけど、この下の道路さ、きのうの大雨で土砂崩れしてて、しばらく通行止めなんだって」

「え? じゃ、あたしたち、ここから一歩も出られないじゃない!」

 うんざりしたように、肩をすくめる麗奈。

 杏里はみいと視線を交わした。

 嵐の山荘だ。

 なんと、みいの予言通りになってしまったではないか。

 それにしても、と思う。

 きのうのあの暴漢は、やっぱり源太だったのだ。

 時間的にも、杏里たちが襲われた頃と符合するし、思えばあの強姦魔、かなり手慣れた感じだった。

 こう言っちゃ悪いが、女性経験のなさそうな清や篠田では、とてもあそこまで手際よくはいかないだろう。

「だからさ、杏里ちゃんたちの部屋に、夜中に源太のやつが行かなかったかと思って」

 その瞬間、みいの顔に狼狽の色が浮かぶのを見て、杏里はとっさに言った。

「そんなこと、あるわけないですよ。私たち、あれから少しして寝ちゃったから、何も気づきませんでしたし」

 ここで正直に打ち明けるという選択肢もある。

 だが、さすがの杏里も、あの強姦事件の顛末を、この3人の前で口にする気にはなれなかった。

 自分はともかく、みいが可哀想だ。

 みいは一応、本人的には、この旅行中は処女キャラなのである。

「土蔵だと思う」

 その時だった。

 ふいに、つぶやくように、篠田が言った。

「夕べ、俺が使った後、源太にせがまれて、土蔵の鍵、渡したから」

 杏里はぽかんとなった。

 篠田の声を聴くのは、なんとこれが初めてだ。

 この人、じゃべれるんだ。

 改めて、そう思った。

「土蔵? ああ、試写室のことね」

 麗奈がうなずいた。

「やだ、篠田君、さっそく杏里ちゃんたちの映像、編集して、DVDに落としてたんでしょ?」

 声に、かすかに責めるような響きが混じっている。

「うん…。家に帰ってからだと、なかなか落ち着いて、作業できないから…」

 弁解じみた口調で、篠田が答えた。
 
 うつむいたまま、誰とも視線を合わせようとしない。

「土蔵って、何ですか?」

 嫌な予感がして、杏里はたずねた。

 私たちの映像って、何だろう?

 それに、DVDに落とすってのは、どういうこと?

「毎年、合宿のたびにね、ここの土蔵を編集室兼試写室として、使わせてもらってるんだよ。土蔵自体はこの建物の裏手にあるんだけど、まさかあの豪雨のさなか、そんなとこまで行くなんてね。源太のやつ、いったい、何の用があったんだろう?」

 清が首をかしげて考え込む。

「俺が編集した動画、見たいって言ってた。たぶんそれで」

 と、消入りそうな篠田が言った。

 さげすむような眼を篠田に向け、すかさず麗奈が畳みかける。

「さては、篠田君、裏動画作ったんでしょ? もう、あんたたち、警察に捕まっても知らないよ。きのうも言ったけど、杏里ちゃんたち、まだ未成年なんだからね」

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