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第2話 レズふたり旅

#86 嵐の山荘⑯

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『女湯』ののれんをくぐると、そこは昭和の銭湯の香りのする、裸電球の似合うような脱衣場だった。

「ここ、こう見えて、けっこういいお湯なのよ」

 麗奈は動きやすいトレーナーの上下に着替えてきていた。

 何の恥じらいもなくそれを脱ぎ捨てると、モデルのような美ボディが杏里の前に現れた。

 脱衣籠に入っていたタオルを首に巻くと、

「さ、早く入りましょ。夕食まであまり時間がないわ」

 そう、杏里とみいをせかしにかかった。

 もとより杏里には、裸になることに対して、ほとんど抵抗はない。

 所かまわず全裸になるので、生まれながらのストリッパーと、家では同居人の小田切に揶揄されているほどだ。

 すっぽんぽんになると、

「うわあ、負けたわ」

 杏里の胸を見て、麗奈が悔しそうにつぶやいた。

「杏里ちゃん、あなた、本当に中学生? それ、90センチは余裕であると思うけど」

「はあ、まあ」

「でも、太ってるわけでもなく、腰はきゅっと締まってる。これじゃ男が黙ってないはずよね。お尻もちゃんと上を向いて、ぷりぷりしてるし。しかも、パイパンなのね。剃ってるわけじゃなくって」

「麗奈さんこそ…かっこいいです。背も高いし、足も長くて」

 そんなふうにお互いの裸を褒め合っていると、側でみいが悲しそうな声を上げた。

「みい、脱げないです。そんな立派なお身体のふたりの前で、とても裸になんてなれないです」

 振り向くと、両手で顔を隠し、半べそをかいている。

 また始まった。

 昨日のホテルの大浴場でも、確かみいは同じ反応を示したのだ。

「あら、そんなことないわよ。別にあたしや杏里ちゃんみたいに、派手な身体がいいってものじゃないし。みいちゃんも十分魅力的だと思うけど」

「そうだよ。みいのロリロリの裸、私、大好きだもの」

「あら、杏里ちゃん、あなたやっぱり」

「てへ。ばれたか」

 杏里が頭をかいた時、やっと覚悟を決めたのか、

「こっち、見ないでくださいね」

 みいがふたりに背中を向け、メイド服を脱ぎ始めた。

「はいはい」

 丸裸のまま、みいに背を向ける杏里と麗奈。

 が、ずいぶん待ったが、みいの、

「もう、いいですよ」

 の声が聞こえてこない。

「みいったら、どうしたの? まだ恥ずかしがってるの? もう、思い切って、ぱあっと脱いじゃいなよ」

 思い切って振り向いた杏里は、そこであっと声を上げた。

 一糸まとわぬ姿で、みいがうつ伏せに倒れている。

「まあ、たいへん」
 
 麗奈が目を見張った。

「杏里ちゃん、救急車を」

 杏里にはすぐ、ぴんときた。

「あ、違います。大丈夫です。ただの電池切れだと思います」

 みいは前にも一度、倒れたことがある。

 この子ったら、充電、忘れてたんだ。

 でも、よりによって、こんなところで。

「電池切れ?」

 麗奈が長い睫毛をしばたたかせる。

「あい、いえ、それはもののたとえで」

「とにかく、あたし、人工呼吸してるから、杏里ちゃんは、おばあちゃんたちに知らせてきて」

 必要なのは、人工呼吸ではなく、コンセントだ。

 みいの首輪の下、うなじのあたりにはコンセントのコードが収納されている。

 ちょうど、電気掃除機についているような、巻取り式のあれである。

 杏里は脱衣場の中に視線を走らせた。
 
 いくつか並んだ洗面台の所に、ドライヤー用の差込口が見える。

 なんとか麗奈さんの気をそらして、あそこにみいのジャックをつなぐことができたら…。

 が、麗奈はすでに人工呼吸を始めていた。

 全裸のまま、裸のみいの上に腹這いになり、懸命に口を吸っているのだ。

 その手はみいのこんもりとした乳房を押さえ、まるで愛撫しているように見える。

 見ているうちに、杏里はおかしな気分になってきた。

 やだ。

 麗奈さんったら…。

 人口呼吸というより…。

 これって立派なレズプレイじゃない?

 そう思ったのである。





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