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第2話 レズふたり旅
#75 嵐の山荘⑤
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この手…。
まさか。
振り向こうとしたが、何者かに背後からがっしり抱きしめられていて動けない。
そのうちに、鱗だらけの手が、杏里のブラをはぎ取った。
あるかなきかの流れに乗って、赤い布切れが水面を遠ざかっていく。
ぽろんとこぼれた真っ白な乳房を、水かきのある手がむんずとつかんできた。
「いやあ! 痴漢! じゃなくて、河童!」
杏里は暴れた。
「みい、助けて! また出たよ! 今度はカッパだよ!」
その声に、犬かきで前を進んでいたみいが振り返る。
「あ」
まあるく口を開けたかと思うと、
「待っててください」
そう言い残して、ざんぶと頭から水中にもぐっていった。
「ちょ、ちょっと、みいったら、どこ行ったの?」
うろたえる杏里。
その間にも、執拗に乳を揉みしだく河童の手。
ズザザザッ!
と、目と鼻の先で、水しぶきが上がった。
「とうっ!」
水の中から飛び出してきたのは、みいである。
まるで水族館のイルカの曲芸を見るようだった。
杏里の頭上で一回転すると、ハイレグレオタード水着に身を包んだみいが、錐もみ状態で落ちてきた。
右の肘に全体重をかけ、杏里を抱きしめている人影の頭頂に必殺のエルボードロップ!
「ぐああああっ!」
妙に人間的な悲鳴を発して、その何かが水中に倒れ込んだ。
「ありがとう!」
みいに抱きしめられて振り返ると、川面に緑色の物体が浮いていた。
河童というより、河童の着ぐるみを着た人間である。
みいのエルボードロップを食らって、頭の上の皿が木っ端微塵に割れてしまっている。
「カーット! カット! カット!」
岸辺で下草が揺れ、バタバタと3人の人影が現れた。
「きゃ」
杏里は反射的にトップレスの胸を腕でかばった。
「ったく、源太ったらなにやってんのよ」
「だいたい、観光客を巻き込もうなんてのが間違ってたんですよ」
「しっかし、見かけによらず強いねえ。あの可愛い子ちゃん」
なにやら3人で言い合っている。
ひとりがハンディカメラを抱えているところから見て、今の様子を撮影していたようだ。
「誰?」
みいが鋭い口調で誰何した。
可愛い横顔が、怒りで薔薇色に染まっている。
「すみませーん、俺たち、安康大の映画部の者です。そこの遠野山荘で、合宿中なんですよ」
映画のメイキング映像にによく出てくる、あのカチンと鳴らす黒と黄色の板みたいなのを手にした若者が、へらへら笑いながら、そう声をかけてきた。
背が低いのに、アフロヘア。
横に長い顔は、なんだかやたら愛想がいい。
カメラマンは、対照的にもやしみたいに縦に細い、気の弱そうな青年である。
残りのひとりは、紅一点。
今にも扇子を片手に踊り出しそうな、ワンレン・ボディコンの美女だった。
アンコウ大?
杏里は小首をかしげた。
聞いたことのない大学だ。
「ごめんなさいね。あたしたち、映画を撮ってるところなの。秋のコンペに出展する、ホラーなんだけど」
詫びるような口調で、美女が言った。
「どんな映画なんですか? タイトルは?」
メンバーに女性がいることにほっとして、杏里はついそうたずねていた。
「いい質問ね」
美女が微笑んだ。
そして、得意そうに胸を張ると、答えた。
「名付けて、『ナイト・オブ・ザ・リビング・カッパ』。ここ、遠野に伝わる民話に、現代的なゾンビネタを盛り込んだ、最恐のホラー映画なの」
まさか。
振り向こうとしたが、何者かに背後からがっしり抱きしめられていて動けない。
そのうちに、鱗だらけの手が、杏里のブラをはぎ取った。
あるかなきかの流れに乗って、赤い布切れが水面を遠ざかっていく。
ぽろんとこぼれた真っ白な乳房を、水かきのある手がむんずとつかんできた。
「いやあ! 痴漢! じゃなくて、河童!」
杏里は暴れた。
「みい、助けて! また出たよ! 今度はカッパだよ!」
その声に、犬かきで前を進んでいたみいが振り返る。
「あ」
まあるく口を開けたかと思うと、
「待っててください」
そう言い残して、ざんぶと頭から水中にもぐっていった。
「ちょ、ちょっと、みいったら、どこ行ったの?」
うろたえる杏里。
その間にも、執拗に乳を揉みしだく河童の手。
ズザザザッ!
と、目と鼻の先で、水しぶきが上がった。
「とうっ!」
水の中から飛び出してきたのは、みいである。
まるで水族館のイルカの曲芸を見るようだった。
杏里の頭上で一回転すると、ハイレグレオタード水着に身を包んだみいが、錐もみ状態で落ちてきた。
右の肘に全体重をかけ、杏里を抱きしめている人影の頭頂に必殺のエルボードロップ!
「ぐああああっ!」
妙に人間的な悲鳴を発して、その何かが水中に倒れ込んだ。
「ありがとう!」
みいに抱きしめられて振り返ると、川面に緑色の物体が浮いていた。
河童というより、河童の着ぐるみを着た人間である。
みいのエルボードロップを食らって、頭の上の皿が木っ端微塵に割れてしまっている。
「カーット! カット! カット!」
岸辺で下草が揺れ、バタバタと3人の人影が現れた。
「きゃ」
杏里は反射的にトップレスの胸を腕でかばった。
「ったく、源太ったらなにやってんのよ」
「だいたい、観光客を巻き込もうなんてのが間違ってたんですよ」
「しっかし、見かけによらず強いねえ。あの可愛い子ちゃん」
なにやら3人で言い合っている。
ひとりがハンディカメラを抱えているところから見て、今の様子を撮影していたようだ。
「誰?」
みいが鋭い口調で誰何した。
可愛い横顔が、怒りで薔薇色に染まっている。
「すみませーん、俺たち、安康大の映画部の者です。そこの遠野山荘で、合宿中なんですよ」
映画のメイキング映像にによく出てくる、あのカチンと鳴らす黒と黄色の板みたいなのを手にした若者が、へらへら笑いながら、そう声をかけてきた。
背が低いのに、アフロヘア。
横に長い顔は、なんだかやたら愛想がいい。
カメラマンは、対照的にもやしみたいに縦に細い、気の弱そうな青年である。
残りのひとりは、紅一点。
今にも扇子を片手に踊り出しそうな、ワンレン・ボディコンの美女だった。
アンコウ大?
杏里は小首をかしげた。
聞いたことのない大学だ。
「ごめんなさいね。あたしたち、映画を撮ってるところなの。秋のコンペに出展する、ホラーなんだけど」
詫びるような口調で、美女が言った。
「どんな映画なんですか? タイトルは?」
メンバーに女性がいることにほっとして、杏里はついそうたずねていた。
「いい質問ね」
美女が微笑んだ。
そして、得意そうに胸を張ると、答えた。
「名付けて、『ナイト・オブ・ザ・リビング・カッパ』。ここ、遠野に伝わる民話に、現代的なゾンビネタを盛り込んだ、最恐のホラー映画なの」
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