そんなお口で舐められたら💛

戸影絵麻

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第2話 レズふたり旅

#69 ゴースト・ホテル⑬

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 それは、あまりといえばあまりに突然のことだった。

 杏里の口、膣、アナルにずっぽりめり込んでいた触手が、8本同時に突如として抜けたのである。

「きゃふうん!」

 その衝撃ときたら並大抵のものではなく、杏里は電気を通された食用蛙の心臓のように大きく飛び跳ねた。

 全身から引き潮のように快感が引いていくと、ようやくまともな思考が戻ってきた。

 タイルの上で腹這いになり、何が起こったのかと、蛸本体のほうに首を捻じ曲げた。

 そこで杏里が目にした光景は、およそ想定外のものだった。

 裸のみいが、怪物蛸と対峙している。

 それだけでなく、怪物に攻撃を仕掛けているのだ。

「やっ! とう!」

 みいの細い脚が旋回して、唸りを上げて蛸の顔面にめり込んだ。

 怪物がひるんだすきに間合いを詰め、目にも止まらぬ速さで左右のストレートを繰り出した。

 華奢で細身にもかかわらず、みいの一撃は相当に重いようだ。

 連打を浴びた怪物の顔面が見る間に変形し、ぶちゅっと目玉が飛び出した。

 そこに更に後ろ回し蹴りと踵落としのコンボが決まる。

 みいを捕捉しようと上空から襲い掛かる触手たちが、途中で動きを止めた。

 本体が気絶したせいで、コントロールを失ってしまったらしい。

 糸が切れたマリオネットみたいにへなへなになると、ずどんと音を響かせてタイルの床に落ちてきた。

「覚悟おっ!」

 雄叫びとともに、みいの手刀が怪物の眉間にめり込んだ。

 蛸に頭蓋があるかどうかは不明だが、ぐしゅっと嫌な音を発して頭部の中央がひしゃげ、内容物を吐き出した。

 そこに腕を突っ込んで、中をぐるぐるかき回すみい。

 圧倒的な勝利だった。

 杏里は茫然と、死んだ怪物の前に佇む裸の少女を見つめた。

 みいのAIは、性体験に関する記憶を消す代わりに、恐るべき格闘術をその肉体に付与したようだ。

 前々から見かけによらず怪力だとは思ってたけど、まさかこれほどとは…。

「杏里さま、大丈夫ですかあ?」

 身体に飛び散った蛸の体液をお湯で洗い落とすと、みいが湯船から上がってきた。

 もう慣れたのか、胸も前も隠そうとしない。

「あ、ありがとう。み、みい、強かったね…」

 杏里は、それだけを口にするのがやっとだった。
 
 温泉で怪物に襲われたのもショックだったが、自分の相棒の変貌ぶりはもっと衝撃的だったのだ。

「もう、杏里さまったら、いやになっちゃいます」

 手を貸して杏里を抱き起こすと、すねたような口調でみいが言った。

「あんなお化けにいじめられて、感じちゃうなんて…。まさか、いっちゃったりしてないでしょうね」

「はは、いくら私でも、そんな、蛸なんかに」

 ほんとは何度もイッたのだが、とても正直に口に出せる雰囲気ではない。

 仕方なく、杏里は笑ってごまかした。

「ですよね。みいを差し置いて、杏里さま、ひとりでイクなんてこと、しないですよね」

「う、うん。もちろんだよ」

 笑顔がひきつるのがわかる。

 杏里の身体は、愛情や好悪に関係なく、物理的な刺激に反応する。

 でも、それを他人に説明し、納得してもらうのは、難しい。

「それにしても、あの蛸、なんだったんでしょうね。頭の中に、こんなもの、入ってましたけど」

 みいが指につまんでかざしたのは、金属製の小さな部品のようなものだった。

 集積回路か盗聴器のように見える。

 ひょっとして、と思う。

 あの化け物、誰かに操られていたのだろうか?

 でも、いったい、誰に?

「おなか空いちゃいましたから、蛸の足、一本お部屋に持っていきますね。ゆでるか焼けば結構おいしいかも」

 みいはのんきにそんなことを言っている。

 早く朝が来ないかな。

 杏里は切にそう願った。

 こんなホテル、もうこりごりだ。



 



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