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第2話 レズふたり旅
#58 ゴースト・ホテル②
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「んなわけ、ないか…」
2、3度瞬きをすると、バスタブの中の血の海は消えていた。
「どうしたんですかあ? 何か出ちゃいましたかあ?」
外からのんびりしたみいの声が聞こえてきた。
「ううん、なんでもない」
杏里は努めて明るく言い返した。
疲れてるのかな。
ごしごし目をこすってみた。
バスタブの中は乾いていて、その乳白色の表面には、染みひとつない。
シャワーのお湯で気の済むまで洗い流し、改めてお湯を張ることにした。
身体中にボディソープを塗りつけ、丹念に隅々まで洗った。
いつもなら洗っている途中で催してきて、鏡に映った己の裸身をおかずに軽い自慰に耽るところである。
が、こうも気味の悪いことが続くと、さすがにそんな甘い気分にはなれなかった。
頭を洗い、タオルを巻いて、バスタブの中をのぞき込む。
透明なお湯が半分以上たまっていて、バスタブの底が見えている。
怪しいところはどこにもなさそうだ。
意を決してへりをまたぎ越え、肩までお湯に身を沈めた。
ふう。
タオルで肌を拭いながら、杏里は安堵の吐息をついた。
気持ち、いい。
ただのお風呂でこうなんだから、これで温泉に入ったら…。
街並み見物は明日にして、お風呂を出たらさっそくみいと大浴場に行くことにしよう。
お客さん、あんまり多くないみたいだから、もしかして二人っきりで楽しめるかも。
にやにやしていると、次第に眠くなってきた。
お湯のぬくもりとともに、眠気がさざ波のように全身に広がっていく。
そうしていつのまにか、眠り込んでしまっていたようだ。
杏里が目を覚ましたのは、全身を撫でられているような、妙に刺激的な感覚を覚えたからだった。
「いやん、みいったら、いきなりおっぱい、揉まないでよ」
まどろんでいるうちに、待ちきれなくなってみいが入ってきたのに違いない。
狭いバスタブに入り込んできて、背後から杏里を抱きしめているのだ。
「ああん、またそんなとこ、なでなでしてえ」
股間に侵入してきた手を、太腿で挟みつけて杏里は身もだえした。
が。
どうやらそれは、とんでもない錯誤だったようだ。
「杏里さまったらあ、いつまで入ってるんですかあ? もう、お夕食の時間になっちゃいますよお」
外から、困ったようなみいの声が聞こえてきたのである。
杏里は青ざめ、己の乳房を後ろから愛撫している手をまじまじと見つめた。
みいが外にいる?
じゃあ、これは、いったい誰の?
「きゃあっ!」
声も枯れよと絶叫した時、風呂の湯がぶくぶと泡立ち、それが一斉に襲いかかってきた!
2、3度瞬きをすると、バスタブの中の血の海は消えていた。
「どうしたんですかあ? 何か出ちゃいましたかあ?」
外からのんびりしたみいの声が聞こえてきた。
「ううん、なんでもない」
杏里は努めて明るく言い返した。
疲れてるのかな。
ごしごし目をこすってみた。
バスタブの中は乾いていて、その乳白色の表面には、染みひとつない。
シャワーのお湯で気の済むまで洗い流し、改めてお湯を張ることにした。
身体中にボディソープを塗りつけ、丹念に隅々まで洗った。
いつもなら洗っている途中で催してきて、鏡に映った己の裸身をおかずに軽い自慰に耽るところである。
が、こうも気味の悪いことが続くと、さすがにそんな甘い気分にはなれなかった。
頭を洗い、タオルを巻いて、バスタブの中をのぞき込む。
透明なお湯が半分以上たまっていて、バスタブの底が見えている。
怪しいところはどこにもなさそうだ。
意を決してへりをまたぎ越え、肩までお湯に身を沈めた。
ふう。
タオルで肌を拭いながら、杏里は安堵の吐息をついた。
気持ち、いい。
ただのお風呂でこうなんだから、これで温泉に入ったら…。
街並み見物は明日にして、お風呂を出たらさっそくみいと大浴場に行くことにしよう。
お客さん、あんまり多くないみたいだから、もしかして二人っきりで楽しめるかも。
にやにやしていると、次第に眠くなってきた。
お湯のぬくもりとともに、眠気がさざ波のように全身に広がっていく。
そうしていつのまにか、眠り込んでしまっていたようだ。
杏里が目を覚ましたのは、全身を撫でられているような、妙に刺激的な感覚を覚えたからだった。
「いやん、みいったら、いきなりおっぱい、揉まないでよ」
まどろんでいるうちに、待ちきれなくなってみいが入ってきたのに違いない。
狭いバスタブに入り込んできて、背後から杏里を抱きしめているのだ。
「ああん、またそんなとこ、なでなでしてえ」
股間に侵入してきた手を、太腿で挟みつけて杏里は身もだえした。
が。
どうやらそれは、とんでもない錯誤だったようだ。
「杏里さまったらあ、いつまで入ってるんですかあ? もう、お夕食の時間になっちゃいますよお」
外から、困ったようなみいの声が聞こえてきたのである。
杏里は青ざめ、己の乳房を後ろから愛撫している手をまじまじと見つめた。
みいが外にいる?
じゃあ、これは、いったい誰の?
「きゃあっ!」
声も枯れよと絶叫した時、風呂の湯がぶくぶと泡立ち、それが一斉に襲いかかってきた!
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