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第2話 レズふたり旅
#56 出そう!
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支配人(?)から鍵を渡された杏里は、そこで、
「ひっ」
と悲鳴を上げた。
ぐにゃり。
手のひらのなかで、鍵がうごめいた気がしたからである。
が、おっかなびっくり手を開いてみると、そこにあるのはプラスチックの棒にくっついたごく普通の鍵だ。
気のせい?
でも、なんか気持ち悪いんよなあ。
「み、みい、これ、持ってて」
鍵をみいの手に押しつけていると、
「どうかなさいましたか?」
支配人(?)が、眼窩から飛び出しそうなギョロ目でで杏里の顔をのぞき込んできた。
この人、まるで、ハロウィーンのお化けみたい。
さしずめこのメイクは吸血鬼ドラキュラだろうか。
「あ、いえ、別に」
へどもどする杏里に、男がロビーの左手のほうを指で示した。
「別館への通路はあちらです。突き当りのエレベーターで4階へお上がりください。あ、大浴場とお食事はこちらの本館になりますので、ご注意のほどを」
男は杏里たちを部屋まで案内する気はないようだ。
それだけ言い残すと、急にふたりに興味を失ったらしく、さっさと奥に引っ込んでしまった。
これだけ高級そうなホテルなのに、荷物を運んでくれるボーイの姿もないようだ。
仕方なくふたりは、キャリーバッグをゴロゴロ転がして、別館につながる通路のほうへと歩き出した。
周囲の雰囲気ががらりと変わったのは、その通路に一歩足を踏み入れた瞬間だった。
「ねえ、なんだか急に暗くなったと思わない?」
少し遅れて歩くみいに向かって、杏里は声をかけた。
「そうですねえ。さっきのロビーと、ずいぶん雰囲気が違います」
キョロキョロ周りを見回して、みいが言う。
こちらのほうが明らかに建物が古そうだ。
数メートル間隔で壁に飾られた、行灯みたいな形の照明。
壁には所々に気味の悪い油絵がかけられ、あろうことか、等間隔で鎧武者だの甲冑の騎士だの、等身大の人形が立っている。
それだけならまだいいが、その間の飾り棚にはおかっぱ頭の市松人形あり、古臭いドレスをまとった洋風のビスクドールありで、これがなんとも不気味である。
「あの、杏里さま…みい、さっきからずっと、誰かに見られてるような気がするんですが」
数歩、歩を進めたところで、ふいにみいが立ち止まった。
「ていうか、この視線、今までも時々感じたんですけど」
「やだ。変なこといわないでよ。ただでさえ、ここ、ヤな雰囲気なのに」
杏里は真顔でみいをたしなめた。
そして、ふと思い出した。
そういえば、今朝コテージを出る時も、みいったら、同じようなこと言ってたっけ。
が、もちろん周囲には誰もいない。
ロビーはけっこうにぎやかだったのに、この別館には、杏里たち以外、誰も来ないのだ。
「ごめんなさい。別に、杏里さまを怖がらせるつもりはなかったんです」
しおらしくこうべを垂れるみい。
「ち、違うよ。べ、別に、怖がってるわけじゃないよ」
強がってはみたものの、この通路、正直早く通り抜けてしまいたい。
「そ、それより早くお部屋に行って、シャワー浴びようよ。その後、お夕食までの時間、市内探索ってのもいいかもしれないし」
「はい。みいも早くお着替えしたいです」
ふたりの服と下着は、新幹線と東京駅での連続強姦未遂事件で、すっかり汚れてしまっているのだ。
「あれがエレベーターね」
突き当りの鋼鉄の扉に気づいて、杏里がつぶやいた時である。
突然、通路に旋風が巻き起こり、杏里の脚の間をすり抜けた。
超マイクロミニが、腰の高さまでふわりと舞い上がる。
「きゃっ」
丸出しになった尻を、パンティ越しに撫でられ、杏里は叫んだ。
同時に背後から、いきなり胸をぐいとつかまれる。
「出た! 痴漢!」
手足をばたつかせて暴れると、きょとんとした顔のみいと目が合った。
「どうしたんですか? 杏里さま?」
「い、今、誰かがスカートめくってお尻触って乳揉んできたでしょ?」
みいがぽかんと口をあけた。
「え? でも、誰もいないですよ」
「ひっ」
と悲鳴を上げた。
ぐにゃり。
手のひらのなかで、鍵がうごめいた気がしたからである。
が、おっかなびっくり手を開いてみると、そこにあるのはプラスチックの棒にくっついたごく普通の鍵だ。
気のせい?
でも、なんか気持ち悪いんよなあ。
「み、みい、これ、持ってて」
鍵をみいの手に押しつけていると、
「どうかなさいましたか?」
支配人(?)が、眼窩から飛び出しそうなギョロ目でで杏里の顔をのぞき込んできた。
この人、まるで、ハロウィーンのお化けみたい。
さしずめこのメイクは吸血鬼ドラキュラだろうか。
「あ、いえ、別に」
へどもどする杏里に、男がロビーの左手のほうを指で示した。
「別館への通路はあちらです。突き当りのエレベーターで4階へお上がりください。あ、大浴場とお食事はこちらの本館になりますので、ご注意のほどを」
男は杏里たちを部屋まで案内する気はないようだ。
それだけ言い残すと、急にふたりに興味を失ったらしく、さっさと奥に引っ込んでしまった。
これだけ高級そうなホテルなのに、荷物を運んでくれるボーイの姿もないようだ。
仕方なくふたりは、キャリーバッグをゴロゴロ転がして、別館につながる通路のほうへと歩き出した。
周囲の雰囲気ががらりと変わったのは、その通路に一歩足を踏み入れた瞬間だった。
「ねえ、なんだか急に暗くなったと思わない?」
少し遅れて歩くみいに向かって、杏里は声をかけた。
「そうですねえ。さっきのロビーと、ずいぶん雰囲気が違います」
キョロキョロ周りを見回して、みいが言う。
こちらのほうが明らかに建物が古そうだ。
数メートル間隔で壁に飾られた、行灯みたいな形の照明。
壁には所々に気味の悪い油絵がかけられ、あろうことか、等間隔で鎧武者だの甲冑の騎士だの、等身大の人形が立っている。
それだけならまだいいが、その間の飾り棚にはおかっぱ頭の市松人形あり、古臭いドレスをまとった洋風のビスクドールありで、これがなんとも不気味である。
「あの、杏里さま…みい、さっきからずっと、誰かに見られてるような気がするんですが」
数歩、歩を進めたところで、ふいにみいが立ち止まった。
「ていうか、この視線、今までも時々感じたんですけど」
「やだ。変なこといわないでよ。ただでさえ、ここ、ヤな雰囲気なのに」
杏里は真顔でみいをたしなめた。
そして、ふと思い出した。
そういえば、今朝コテージを出る時も、みいったら、同じようなこと言ってたっけ。
が、もちろん周囲には誰もいない。
ロビーはけっこうにぎやかだったのに、この別館には、杏里たち以外、誰も来ないのだ。
「ごめんなさい。別に、杏里さまを怖がらせるつもりはなかったんです」
しおらしくこうべを垂れるみい。
「ち、違うよ。べ、別に、怖がってるわけじゃないよ」
強がってはみたものの、この通路、正直早く通り抜けてしまいたい。
「そ、それより早くお部屋に行って、シャワー浴びようよ。その後、お夕食までの時間、市内探索ってのもいいかもしれないし」
「はい。みいも早くお着替えしたいです」
ふたりの服と下着は、新幹線と東京駅での連続強姦未遂事件で、すっかり汚れてしまっているのだ。
「あれがエレベーターね」
突き当りの鋼鉄の扉に気づいて、杏里がつぶやいた時である。
突然、通路に旋風が巻き起こり、杏里の脚の間をすり抜けた。
超マイクロミニが、腰の高さまでふわりと舞い上がる。
「きゃっ」
丸出しになった尻を、パンティ越しに撫でられ、杏里は叫んだ。
同時に背後から、いきなり胸をぐいとつかまれる。
「出た! 痴漢!」
手足をばたつかせて暴れると、きょとんとした顔のみいと目が合った。
「どうしたんですか? 杏里さま?」
「い、今、誰かがスカートめくってお尻触って乳揉んできたでしょ?」
みいがぽかんと口をあけた。
「え? でも、誰もいないですよ」
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