上 下
87 / 475
第2話 レズふたり旅

#51 みちのくへ

しおりを挟む
 三島から東京までの東海道新幹線に比べると、東北新幹線はガラガラだった。

 しかも、自由席ですら座り放題なのに、なぜかこちらは指定席ときている。

 どっちかというと、さっきの東海道新幹線で指定席を取ってほしかった。

 そこまで考えて、杏里は、ははあ、と思った。

 きっとあれは、紗彩の計画の一端に違いない。

 満員電車のなかに杏里とみいを放り込めば、きっと面白いことが起きるに違いない。

 そう踏んだ紗彩が、わざと自由席にしたのではないだろうか。

 コテージに用意してあったバラエティ豊かな大人の玩具といい、どうもこの旅行、裏に紗彩の意図か動いているような気がしてならない。

 ともあれ、ほとんど揺れのない静かな新幹線の車内でみいとふたりシートにもたれているのは、なんともいえずいい気分だった。

 気になることと言えば、肌に沁みついた男のザーメンの残り香だが、これはホテルについたらシャワーで洗い流すしかない。

 多機能付トイレには洗面台もついていて、そこで一応洗ったのだけれど、完全には匂いが取れていないのだ。

 みいはといえば、さっきからずっと押し黙ったままである。

 そこはかとない寂しげな表情で、車窓から黙って外を流れる風景を眺めている。

「ねえ」

 退屈が極まってきて、杏里はいい加減、そんなみいに声をかけることにした。

「ねえ、みい。まだ、怒ってるの?」

「怒ってなんか、いませんよ」

 外を眺めたまま、みいが言う。

「うそ。だって、あれからずっと、話しかけてもろくに返事もしないじゃない」

「そんなこと、ありません」

「そうかな。私がみいにあの男をけしかけたこと、まだ恨んでるんじゃない?」

「あれが、杏里さまの作戦だったってことは、今は理解してるつもりです。でも…」

「でも、何なの?」

「みいには、杏里さまが、どうして平気であんなことできるのか、わからないんです」

「あんなことって?」

「ほら、知らない男の人のあそこを、あんなふうに…」

 そこまで言って、恥ずかしそうにみいが口ごもる。

「ああ、あれ」

 杏里は納得した。

 杏里が康夫に続いて今回も使った技は、

 睾丸責め→陰茎しごき→パイずりの連続コンボである。

 これでうまくいかない時は、途中に”直腸指責め”をはさむこともある。

 まあ、どれも、処女モードの女子の眼からすれば、驚天動地の荒技だろう。

「あれはね、慣れというか、要はさ、ああするのが一番手っ取り早いのよ。事態を打開する策として」

「そうでっしょうか」

「そうだよ。ぐずぐずしてると、ふたりそろって犯されるところだったかも。大半の男ってさ、ただ出したいだけなの。だったら、こっちから先に動いて、出させちゃえばいい」

「そうなんだ…。でも、そんなことする、杏里さま、みいはやっぱり好きじゃありません」

「んもう、強情だなあ」

 杏里はふくれ、高々と生足を組んだ。

「どうせ私は今のみいと違って、とんでもないビッチですよーだ。でも、そのおかげで、2回も処女喪失の危機を免れたんだから、少しは感謝してよね」

 ぎこちないムードに泣きたくなる。

 やりきれない気分で何気なく窓の外に目をやると、東北が近づいてきた証拠なのか、空の色が変わり始めていた。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約者に大切にされない俺の話

BL / 連載中 24h.ポイント:738pt お気に入り:2,421

【完結】誓いの鳥籠

BL / 連載中 24h.ポイント:220pt お気に入り:154

従妹のおすすめの文庫本()

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

少年プリズン

BL / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:169

 ― 縁 ― (enishi)

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

マッチョ兄貴調教

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:603pt お気に入り:60

サディストの飼主さんに飼われてるマゾの日記。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:44

花嫁は叶わぬ恋をする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:163

処理中です...