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第2話 レズふたり旅

#46 サイコパス

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 杏里とて、特別に何か勝算があったわけではない。

 杏里はもとより、運動神経が鈍いほうである。

 巨乳が邪魔をして、体格的にスポーツや格闘技には不向きなのだ。

 ただ、頭の隅にあったのは、きのう浜辺で、康夫の魔手からみいを守った時の成功体験である。

 あの時、杏里は自らの肉体を囮にすることで、まんまと康夫を罠にはめ、射精にまで導いたのだった。

 その手が使えるかもしれない。

 半ば確信するように、そう考えた。

 無理もない。

 杏里の取り得は、その年齢にそぐわぬグラマラスな肢体と、百戦錬磨の性技である。

 逆に言えば、それしか杏里には武器と呼べるものはないからだ。

 が。

 服を脱ぎ捨て、トップレスのロケットおっぱいをさらけ出しても、男の表情は毛ほども変わらなかった。

「残念だな」

 薄笑いを浮かべて、言った。

「友達の身代わりになろうというのはいい心がけだが、あいにく僕は、その手の身体には興味がないんでね」

「え?」

 意外な返答に、杏里の眼が点になる。

 男に拒まれたのは、生まれて初めてだったからだ。

「僕にはこっちのほうが、ずっといい。ずっとそそるんだ」

 刃渡りの長いアーミーナイフで、みいの尻っぺたをパシンと叩いた。

「あ」

 小さく叫ぶみい。

 くう。

 杏里は奥歯をかみしめた。

 想定外もいいところだよ。

 こいつ、ロリコンなんだ。

「なんでも言うこと聞くから、お願い、みいを傷つけないで」

 色仕掛けはあきらめて、仕方なく下手に出ることにした。

 セミヌードのまま、男の足元に跪いて、頭を下げる。

「邪魔くさいやつだなあ」

 男が迷惑そうに言う。

「できれば僕らをふたりきりにしてほしいんだが」

「それはだめ。みいが切り刻まれるのを黙って見過ごすなんてこと、私にはできない」

 はげしくいやいやをする杏里。

「人を殺人鬼みたいに言うな。このナイフは護身用に持ってるだけさ。別に女を切り裂くためのものじゃない」

 男が心外そうに眉をひそめた。

「僕はただ、この子と楽しみたいだけなんだ。それだけさ」

「それもだめ。みいは傷つきやすいの。そんなことされたら、舌噛んで死んじゃうかも」

「はあ? いつの時代の話だよ」

「みいは古風なおうちの子なの。雰囲気からしてわかるでしょ」

「まあ、おまえよりはよっぽど上品そうだ」

「でしょ? だから、他の方法を考えて」

「しょうがないなあ。あ、じゃあ、こういうのはどうだ?」

 男の瞳が意地の悪い光を帯びた。

「なに?」

 杏里は土下座から正座に姿勢を変え、男を見上げた。

「ぼくの目の前で、ふたりでレズプレイをして見せてくれ。ロリっ子が熟女にレズられるってのも、実をいうとかなり好きなシチュエーションなんだ。おまえ、歳は若そうだけど、身体は完全に大人だろ?」

「レズプレイ? ここで?」

 杏里の眼が、またしても点になる。

 やっぱりこいつ、変態だ。

 でも。

 と、ふと思う。

 これって、ひょっとして、渡りに船ってやつじゃない?





 

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