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第2話 レズふたり旅

#21 コテージの夜

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 出すものをすべて出し尽くしたせいで、すっかり大人しくなった男のボートに乗り、ふたりは岸に帰った。

 その頃にはすっかり雷雨も収まり、急速に晴れ上がった空にはうっすらと星が見え始めていた。

 男は十勝康夫と名乗った。

 この近くの貸しボート屋のひとり息子で、高校を出て家業を継ぐ傍ら、サーファーをしているのだという。

「あんた、罪滅ぼしに、お夕食つくるの手伝ってよ」

 浜辺にたどりつくと、杏里はそう命令した。

「助けてやったのに、罪滅ぼしとはどういうことだ?」

 納得いかないふうの康夫だったが、

「どうせひまなんでしょ。もちろん、あんたにも食べさせてあげるから」

 という杏里のごり押しで、決着がついた。

 コテージにはユニットバスもついていて、そこで杏里とみいは交替でシャワーを浴びた。

 本当は一緒に入りたくてたまらなかったのだが、浴室が狭すぎて断念せざるをえなかったのだ。

 みいと杏里はそれぞれ浴衣に着替え、最後にシャワーを浴びた康夫は相変わらずの短パン姿だった。

「わあ、みい、浴衣似合うんだ」

「そういう杏里さまこそ」

 女同士で褒め合っていると、

「で、何をつくればいいんだよ? 食材は死ぬほどあるみたいだが」

 業務用冷蔵庫に首を突っ込んで、康夫が言った。

「明日にはここを発つ予定だから、そこにあるもの全部使って」

「無茶言うなよ。牛肉だけでも5人前はあるぞ。まあ、まずはバーベキューかな。雨も上がったし」

「そうだね。それから、残った食材でブイヤベース」

「そんなに食えるのかよ」

「大丈夫、私、いくら食べても太らないたちだから。こっちのみいもね」

 みいは人造人間みたいなものだから、きっと太らないに違いない。

「OK.缶ビールも大量にあるし、今夜はパーッと行くか」

「あんたも、出した分取り返さないとね」

「あ、ああ。おまえのおかげで、1週間分くらい出ちまったからな」

「あれで1週間分? たいしたことないね」

「余計なお世話だ。だいたいおまえがエロ過ぎるんだよ」

「んなことどうでもいいですぅ。みい、おなか、すいちゃいました。早くご飯にしましょうよ」

「そうだね。じゃ、みいは野菜とお肉を切って。康夫はバーベキューの準備。その間に、私、ブイヤベースの下地、つくるから」

「はあい」

 ちょこちょことキッチンに駆け込んでいくみい。

 雷が収まり、すっかり元の処女モードに戻っている。

 あれはあれで、なかなかよかったんだけどな。

 女王様と化したみいを思い出し、杏里はくすっと笑った。

 まあ、お楽しみは夜中まで取っておくことにして。

 杏里は胸が高鳴るのを感じた。

 浴衣姿で眠っているみいを、少しづつ脱がしていくのも、悪くない…。

 杏里のよこしまな欲望をよそに、こうして夜のパーティーが始まった。


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