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第2話 レズふたり旅

#11 あまあまと遠雷

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 ひょうたんから駒、というか。

 人生万事、塞翁が馬というか。

 いや、災い転じて福となる、かな。

 思わぬサーファー男の狼藉は、杏里とみいの間にあった微妙なわだかまりを、きれいさっぱり吹き飛ばしてくれたようだった。

 そのことは、みいの距離の取り方でもわかった。

 今のみいは、歩く時も杏里の腕にすがりつくような感じである。

 こちらから頼んでもいないのに、身体を密着させてくる。

 だから時折杏里の肘がこんもりと盛り上がった乳房に当たるのだが、それすらもうれしいらしく、避けるどころかさりげなく自分から胸を押しつけてくるありさまなのだ。

「スイカ食べたらおなかふくれちゃったね。夕食の準備まで、もう少し腹ごなししなきゃ」

 みいの背中に腕を回しながら、杏里は言った。

 波打ち際に沿って、ふたりは浜辺を歩いているところだった。

「でも、何しようか?」

「あそこまで行ってみませんか?」

 みいが指さしてみせたのは、はるか先の岩場である。

 奇妙な形の奇岩が積み重なった岩場が海岸線から伸び、沖合で小さな岩山を形作っている。

「おお、いいね。洞窟かなんか、ありそうな感じだね」

「泳いで競争してみませんか?」

 いたずらっぽくみいが笑った。

「それで、負けたほうは勝ったほうの言うことをひとつ聞くんです」

「え? いいの?」

 杏里は目を輝かせてみいを見た。

「いいですよ。みい、少しなら泳げますから。紗彩さまのお屋敷には、お庭に大きなプールがあって、そこで何度か泳いだことがあるのです」

「よおし。その挑戦、受けて立つよ。私さ、こう見えても水泳、けっこうイケるんだ。なんせ、浮袋完備だから、絶対に沈まないしね」

 それはあながち嘘ではなく、巨乳の浮力に助けられて杏里は平泳ぎが得意である。

 いや、むしろその体型からして、平泳ぎ以外は向いていないといっていい。

「負けたほうは、どんな命令にも従わなきゃだめだよ」

 準備運動を始めながら、杏里は念を押した。

「言い出しっぺはみいなんだから、絶対だよ」

「変な杏里さま。どうしてそんなに気合入ってるんですか?」
 
 同じように屈伸運動をしながら、みいが小首をかしげて訊いてきた。

「そ、それはさ、ちょっと、色々思うところがあって」

 杏里は舌を出してごまかした。

 その裏で、心の中ではほくほく顔である。

 わあ。

 こんなに早くチャンスが巡ってくるなんて。

 でも、何から始めようか。

 みいを裸に剥いちゃう?

 それともまずはキス?

 人気のなさそうな所だから、何でもできそうだよね。

 なんならベッチングやシックスナインでも…。

 ひとりよからぬ想像をしてにやにやしていると、ふいに遠くで雷が鳴った。

「夕立、来そうですね」

 体操を中断して、額に小手をかざすみい。

「早く行きましょう。みい、雷って苦手です」
 

 

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