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第2話 レズふたり旅
#6 デンジャラス・ビーチ①
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これまでほとんど外出したことのないみいのことである。
どうせそう遠くにはいくまい。
杏里は勝手にそう決め込むと、1階に降りるついでに、冷蔵庫の中を点検してみることにした。
1階フロアは奥の壁際にカウンターが設置されていて、その向こうが広いキッチンになっていた。
壁の棚に並ぶウイスキーやブランデーの瓶。
まるでちょっとしたバーみたいである。
その傍らに、天井まで届きそうな巨大な業務用冷蔵庫がそびえ立っている。
「わあ、すごい」
ドアを開けるなり、無意識のうちに杏里は感嘆の声を上げていた。
ぎっしりつまった食材は、野菜も魚介類もどれも新鮮なものばかりだ。
「さっすが紗彩さん」
でっかいロブスターに目を丸くして、杏里はつぶやいた。
あの和風美女の面影が脳裏に去来する。
旦那さんが何の仕事をしているか知らないけれど、きっとすごいお金持ちに違いない。
「助かるなあ。これで海女さんの真似しなくて済むよ」
ここに来るまで、杏里は真剣に素潜りして魚や貝を獲るつもりだったのだ。
「今夜はバーベQの後、ブイヤベースなんてのもいいかもね」
鼻歌を歌いながら他の扉も開けてみる。
「わお」
下の段にスイカが丸ごと1つ入っていた。
細長い木の棒まである。
「海に来たらやっぱりスイカ割りだよね」
杏里はスイカを抱え上げると、冷蔵庫の扉を足で蹴って閉めた。
杏里がスイカを胸に抱えると、妙なことになる。
スイカが3つ並んでいるように見えるのだ。
スイカと見紛うほど、両の乳房が大きいせいである。
その乳房をぽよんぽよんと弾ませながら、尻を振り振り玄関の階段を降りた。
真っ青な空を背景に、白い砂浜が広がっている。
人出はあることはあるけれど、どちらかといえばまばらで、ちょうどいい雰囲気だ。
「みいったら、どこに行っちゃったのかなあ?」
あたりをキョロキョロ見回しながら、汀に向かってしばらく歩くと、子どもたちの歓声が聞こえてきた。
4、5人の男子小学生が、何かを取り囲んで興奮気味に騒いでいる。
海パン姿の、よく日に焼けた小6くらいの男子たちだった。
みんな、なぜか手に木の枝を持っている。
ウミガメでもいじめてるのかしら?
杏里はふと『浦島太郎』のエピソードを連想した。
「君たち、何してるの?」
小学生の肩越しにのぞき込んだ杏里は、その瞬間、ぽかんと口を開けた。
みいが砂にうずめられている。
それも、顔と胸と股間だけを空気に晒し、それ以外は砂にもぐっている。
小学生たちは、棒切れでその胸の突起と股間の割れ目を、しきりにつついているのだった。
「ちょ、ちょっと、あんたたち!」
ガキどもを押しのけて杏里は叫んだ。
「な、なんだてめえ」
振り向いた小学生の目が、杏里をひと目見たとたん、点のようにまん丸くなる。
「で、でけえ…」
「マジかよ…」
「ガチで巨乳じゃん」
「杏里さま…」
みいが目を開いた。
「みいもみいだよ! こんなことされて、なんで抵抗しないのよ!」
その傍らにしゃがみ込むと、杏里は砂をかき出し、みいを抱き起した。
「だって、みいはペットですから…抵抗できるようには、プログラムされていないんです」
困ったようにみいが言う。
「プログラムなんて関係ないよ!」
杏里は立ち上がると、悪ガキ集団のほうを振り向いた。
「私の恋人に、なんてことするの! もう、あっちへ行きなさいよ! これ以上やったら、警察呼ぶからね!」
スイカ割りの棒を振り上げ、大声で怒鳴りつけた。
「わ、巨乳が怒った」
「恋人だってよ」
「おまえ、おっぱい星人のくせに、レズなのかよ」
「レズで悪いか」
杏里は胸を突き出してすごんだ。
「うは、きも」
「やべーよこいつ」
「病気がうつる」
「おっぱいバカ」
言いたい放題言って、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「んとにもう! 最近のガキどもときたら!」
くびれた腰に両手を当て、その後姿を見送りながら、杏里は吐き捨てるようにつぶやいた。
「いいんです」
声に振り返ると、砂だらけになったみいがしょんぼりと立っていた。
「みいには、人権なんてないんですから…」
悲しそうな顔。
「そういう問題じゃないよ」
杏里はいたたまれなくなって、そんなみいの細っこい体を、砂まみれの水着の上からぎゅっと抱きしめた。
「杏里さま…」
みいが喘ぐように言った。
「怖かったよね。ひとりにさせて、ごめんね」
その髪を優しく撫でてやる。
今度は、みいも抵抗しなかった。
どうせそう遠くにはいくまい。
杏里は勝手にそう決め込むと、1階に降りるついでに、冷蔵庫の中を点検してみることにした。
1階フロアは奥の壁際にカウンターが設置されていて、その向こうが広いキッチンになっていた。
壁の棚に並ぶウイスキーやブランデーの瓶。
まるでちょっとしたバーみたいである。
その傍らに、天井まで届きそうな巨大な業務用冷蔵庫がそびえ立っている。
「わあ、すごい」
ドアを開けるなり、無意識のうちに杏里は感嘆の声を上げていた。
ぎっしりつまった食材は、野菜も魚介類もどれも新鮮なものばかりだ。
「さっすが紗彩さん」
でっかいロブスターに目を丸くして、杏里はつぶやいた。
あの和風美女の面影が脳裏に去来する。
旦那さんが何の仕事をしているか知らないけれど、きっとすごいお金持ちに違いない。
「助かるなあ。これで海女さんの真似しなくて済むよ」
ここに来るまで、杏里は真剣に素潜りして魚や貝を獲るつもりだったのだ。
「今夜はバーベQの後、ブイヤベースなんてのもいいかもね」
鼻歌を歌いながら他の扉も開けてみる。
「わお」
下の段にスイカが丸ごと1つ入っていた。
細長い木の棒まである。
「海に来たらやっぱりスイカ割りだよね」
杏里はスイカを抱え上げると、冷蔵庫の扉を足で蹴って閉めた。
杏里がスイカを胸に抱えると、妙なことになる。
スイカが3つ並んでいるように見えるのだ。
スイカと見紛うほど、両の乳房が大きいせいである。
その乳房をぽよんぽよんと弾ませながら、尻を振り振り玄関の階段を降りた。
真っ青な空を背景に、白い砂浜が広がっている。
人出はあることはあるけれど、どちらかといえばまばらで、ちょうどいい雰囲気だ。
「みいったら、どこに行っちゃったのかなあ?」
あたりをキョロキョロ見回しながら、汀に向かってしばらく歩くと、子どもたちの歓声が聞こえてきた。
4、5人の男子小学生が、何かを取り囲んで興奮気味に騒いでいる。
海パン姿の、よく日に焼けた小6くらいの男子たちだった。
みんな、なぜか手に木の枝を持っている。
ウミガメでもいじめてるのかしら?
杏里はふと『浦島太郎』のエピソードを連想した。
「君たち、何してるの?」
小学生の肩越しにのぞき込んだ杏里は、その瞬間、ぽかんと口を開けた。
みいが砂にうずめられている。
それも、顔と胸と股間だけを空気に晒し、それ以外は砂にもぐっている。
小学生たちは、棒切れでその胸の突起と股間の割れ目を、しきりにつついているのだった。
「ちょ、ちょっと、あんたたち!」
ガキどもを押しのけて杏里は叫んだ。
「な、なんだてめえ」
振り向いた小学生の目が、杏里をひと目見たとたん、点のようにまん丸くなる。
「で、でけえ…」
「マジかよ…」
「ガチで巨乳じゃん」
「杏里さま…」
みいが目を開いた。
「みいもみいだよ! こんなことされて、なんで抵抗しないのよ!」
その傍らにしゃがみ込むと、杏里は砂をかき出し、みいを抱き起した。
「だって、みいはペットですから…抵抗できるようには、プログラムされていないんです」
困ったようにみいが言う。
「プログラムなんて関係ないよ!」
杏里は立ち上がると、悪ガキ集団のほうを振り向いた。
「私の恋人に、なんてことするの! もう、あっちへ行きなさいよ! これ以上やったら、警察呼ぶからね!」
スイカ割りの棒を振り上げ、大声で怒鳴りつけた。
「わ、巨乳が怒った」
「恋人だってよ」
「おまえ、おっぱい星人のくせに、レズなのかよ」
「レズで悪いか」
杏里は胸を突き出してすごんだ。
「うは、きも」
「やべーよこいつ」
「病気がうつる」
「おっぱいバカ」
言いたい放題言って、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「んとにもう! 最近のガキどもときたら!」
くびれた腰に両手を当て、その後姿を見送りながら、杏里は吐き捨てるようにつぶやいた。
「いいんです」
声に振り返ると、砂だらけになったみいがしょんぼりと立っていた。
「みいには、人権なんてないんですから…」
悲しそうな顔。
「そういう問題じゃないよ」
杏里はいたたまれなくなって、そんなみいの細っこい体を、砂まみれの水着の上からぎゅっと抱きしめた。
「杏里さま…」
みいが喘ぐように言った。
「怖かったよね。ひとりにさせて、ごめんね」
その髪を優しく撫でてやる。
今度は、みいも抵抗しなかった。
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