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第1話 美少女ペットみい

#8 ペットのランチ

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 縁側に面した和室に寝転び、少し休憩することにした。

 奇想天外な行水で疲れてしまったせいもあるが、何よりもまず、火照った体を冷ましたかったのだ。

 軒先で揺れる風鈴の涼やかな音に耳を澄ませていると、次第に眠くなってきた。

 うつらうつらと舟をこぎ始めた時、少女の呼ぶ声がした。

「ご主人さまあ、昼食の準備、完了です」

「ん? あ。ありがとう」

 目をこすりながら立ち上がる。

 ぶらぶらと台所まで歩いていき、中をのぞいたところで、杏里は棒を呑んだように立ち竦んだ。

「な、何? これ」

 テーブルの上に、少女が仰向けに寝ている。

 もちろん、全裸である。

 その体の上が、大変なことになっていた。

 真ん中に穴を開けたトーストが、微妙なバランスのもと、乳房の上に乗っかっている。

 穴から飛び出しているのは、可愛らしいピンク色の乳首である。

 へこんだ下腹の上に盛ってあるのは、黄色いスクランブルエッグ。

 その下の局部を隠すように、レタスの葉が広げてあった。

「どうぞ。お好きなものから、召し上がれ」

 2枚のベーコンを、アイマスクのように顔にかぶせた少女が、明るい声で言った。

「召し上がれって…。これってひょっとして、あの有名な女体盛り?」

 開いた口がふさがらないとはこのことだ。

 ランチの女体盛りなんて、聞いたことがない。

「こういうのってさ、ふつう、政治家とか会社の重役とか、そういう人たちが秘密の料亭なんかで夜中にこっそり楽しむものなんじゃないの? 一般家庭で昼間っから女体盛りなんて、ありえないと思うけど」

「でも、前のご主人さまは、お昼はいつもこうしろって…」

 すぐに少女が泣きそうな声になる。

「あー、わかったから、もう泣かないでよ。ちゃんとおいしくいただかせてもらうから」

 仕方なく杏里は席についた。

 まずは右の乳房からトーストを取る。

 少女の小ぶりな乳房がプリンみたいに震えた。

 瞼の上からベーコンを取って、トーストに乗せる。

 その下から現れた少女のつぶらな瞳が、杏里を見上げた。

「あの、ケチャップはどこなのかな?」

 その生真面目な顔に向かって、杏里はたずねた。

「レタスの下です。私の蜜壺の中に入れてあります」

「蜜壺?」

「あの…おまんこ、のことです」

 少女の頬が恥じらいで赤らんだ。

「何もそんなところに入れなくても…」

「だって、冷たいケチャップは、身体に悪いですから、人肌で温めておかないと」

「そ、そうなの?」

 おっかなびっくり下腹部のレタスをめくると、なるほど局部が生理中のように赤く濡れている。

 鼻を近づけて匂いを嗅ぐと、経血ではなく、確かにケチャップだ。

 スプーンですくってベーコンに塗り、その上にスクランブルエッグを乗せた。

「晩ご飯は私がつくるから」

 トーストを口に運びながら、杏里は言った。

「おいしいけど、あなたの裸を見ながらじゃ、落ちつかなくて味がわからないんだもん」

「…やっぱり、ご主人さま、みいのこと、嫌いなんですね」

 首だけ捻じ曲げて杏里を見つめながら、少女がつぶやいた。

 長い睫毛がひくひく震え、涙の露がきらりと光る。

「そうじゃなくって」

 杏里はため息をついた。

「むしろその反対。あなたがあんまり可愛いから、私がドキドキしちゃうって、ただそれだけのこと」

「うそ…」

「うそじゃないったら」

「じゃ、夜は一緒に寝てもいいですか?」

「いいけど」

「よかった」

 少女が嬉しそうに目を細めた。

「でも、まだお昼だし」

 呆れて杏里が言い返すと、

「それならお食事の後は、何をすればいいですか?」

 そう、訊いてきた。

「うーん」

 杏里はスプーンをくわえ、宙をにらんだ。

 家じゅうの掃除をさせるというのも、かわいそうだ。

 かなりピントがずれているとはいえ、この子はこの子なりに、一生懸命なのだ。

 やはりここは、主従関係など抜きにして、対等に扱ってやるべきだろう。

「そうだ。夏の自由研究って宿題があるんだけど、何をやったらいいか、一緒に考えて。理科の実験や観察でも、美術のお絵かきでも、社会のレポートでも、なんでもいいんだって」

「何でもいい…ですか」

 仰向けに寝そべったまま、少女がつぶやいた。

「わかりました。それなら、みいにひとつ、いい考えがあります」

「え? もう何か思いついたの?」

 杏里は驚いた。

 肝心の私が、この1ヶ月、何も思いつかなかったっていうのに?

「前のご主人さまに習った特技が役に立つと思います。楽しみにしててください」

「また、前のご主人様…?」

 杏里がげんなりした。

 またぞろ嫌な予感が脳裏をかすめたからである。


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