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第1話 美少女ペットみい

#3 ペットのプライド

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「わかった、わかったってば!」

 杏里は両手で耳を押さえてその場にうずくまった。

「首輪にはもう触らないから! つけたままでいいから! だからそれ以上叫ばないで」

「ごめんなさい」

 サイレンのような悲鳴が収まると、少女がぽつりと言った。

「首輪は…ペットの証なんです。首輪がないと、みいは、自分が自分でなくなってしまうような気がするのです」

 黒目がちなつぶらな瞳には、真珠のような涙がいっぱいたまっている。

「ふう」

 杏里はため息をつくと、まじまじと相手を見つめた。

 均整の取れた体つき。

 愛くるしい顔立ち。

 アイドルとしても通るだろうに、この子、どうしてそこまでペットにこだわるの?

 そう思ったのだ。

「何でもいいけど、とにかく私はあなたをペット扱いなんてできない。だから”ご主人様”って呼ぶのもやめてくれないかな? 私のことは、杏里でいいよ」

「どうしてですか?」

 少女が心外そうに目をしばたたく。

「ペットがご主人様を名前で呼び捨てにするなんて、そんなこと、できるわけありません」

「だからあなたは私のペットじゃないんだってば」

「いいえ。前のご主人様に言われましたから。私たちが戻るまで、新しいご主人様にしっかりお仕えするんだよって」

「新しい、ご主人様…?」

 んもう。

 あの奥さん、いったい普段どんな生活を送っているのだろう。

 これじゃ、ペットというより、まるで奴隷みたいじゃない。

「あの…」

 熟し過ぎた果実のような胸の下で腕を組んで考え込んでいると、おずおずと少女が話しかけてきた。

「え? なあに?」

「タライか、洗面器、ありませんか?」

 なんだか恥ずかしそうに頬を桜色に染めている。

「洗面器ならあるけど、そんなもの、どうするの?」

 腕組みを解くと、杏里は台所に立ち、流し場に置いてあったプラスチックの洗面器を持って戻ってきた。

「ちょっと、お借りしても、よろしいですか?」

「いいけど、何に使うの?」

「叫んだら、催しちゃって…・」

 杏里から手渡された洗面器を、少女が土間の板敷の上に置いた。

「催すって、まさか」

 その、まさかだった。

 次に起こった出来事は、杏里にかなりの衝撃を与えずにはおかなかった。

 少女はやにわにその上にしゃがみ込むと、いきなり放尿を始めたのである。

「ちょ、ちょっとお! トイレならトイレって、さきに言ってくれればいいのに! どうしてよりによってそんなところにおしっこしちゃうわけ?」

 洗面器にほとばしる黄金色の液体を茫然と眺めながら、杏里は叫んだ。

「前のご主人様が、ペットはこうしろって」

 悪びれたふうもなく、しゃがんだままの姿勢で杏里を見上げ、少女が答えた。

「ペットは、人間のトイレは使っちゃいけないって」

「そんな…ひどい」

 よほどたまっていたのか、放尿は1分近くかかったようだった。

「これ、どこに捨てればいいですか?」

 湯気の立つ尿を満々とたたえた洗面器を両手に持って、少女がたずねた。

 つるんとした股間からは、まだ黄金色のしずくが垂れている。

 そのしずくが幾筋か太腿を伝い、足首のあたりにまで糸を引いている。

「貸して。トイレに捨ててくるから」

 杏里は肩をすくめると、アンモニアの臭気もかぐわしい、生暖かい洗面器を、危なっかしい手つきで受け取った。 

「こりゃあ、あなたも体洗ったほうがいいかもね。しょうがないなあ、私と一緒に、行水する?」

 ため息混じりにつぶやくと、少女がにっこり笑った。

 ここへ来て、少女が初めて見せる笑顔だった。

 そして、両手を膝小僧にに当て、ぺこりと深く頭を下げた。

「ありがとうございます。ご主人様」
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