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エピローグ ~悪役令嬢の帰還~
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頭の隅を、一匹のハツカネズミが横切った。
ー任務完了!ー
尻尾が見えなくなる直前に、そんな声が聞こえた気がした。
と、次の瞬間。
「さがらさん、相良葵さん!」
今度はひどく甲高い、神経質そうな声。
あ、やばっ。
こ、この声は、数学の、ヤマグチせんせー?
目を開けると、そこは教室で、私は立てた教科書の陰につっぷしていた。
見ると、案の定、ノートにはよだれの跡。
「あ、はい、はあい」
思わずぴょんと飛び上がると、すかさず周囲から沸き起こるくすくす笑いの渦。
私は自分の身体を見回した。
学校の制服を着てるし、なんといっても、胸が小さくなっている。
うお。
戻ったのだ。
しがない小都市にある、しがない公立高校の1年生、相良葵そのひとに。
身長155センチ、体重48キロ。
スリーサイズは秘密。
特技なし。
「だっせー!」
誰かがつぶやくのが聞こえてきた。
声のほうを見ると、窓際の席に、見慣れた横顔。
長髪のあの美少年は、まさかー。
「カンパネルラ!」
「その名前で呼ぶなっつーに」
少年が頭を抱えた時、ポケットの中のスマホが鳴った。
あわてて取り出すと、ラインメッセージが入っていた。
差出人は、kenji。
メッセージの内容は、こうだった。
-学校帰りに、あめゆき代わりにガリガリ君ソーダ味、買ってこられたし。兄より愛しの妹君へー
「兄ちゃん」
私は笑った。
視界が歪む。
涙がにじんできたのだ。
安堵の念が、全身に染みわたる。
なあんだ。
結局、みんな、こっちに来ちゃったんじゃない!
ー任務完了!ー
尻尾が見えなくなる直前に、そんな声が聞こえた気がした。
と、次の瞬間。
「さがらさん、相良葵さん!」
今度はひどく甲高い、神経質そうな声。
あ、やばっ。
こ、この声は、数学の、ヤマグチせんせー?
目を開けると、そこは教室で、私は立てた教科書の陰につっぷしていた。
見ると、案の定、ノートにはよだれの跡。
「あ、はい、はあい」
思わずぴょんと飛び上がると、すかさず周囲から沸き起こるくすくす笑いの渦。
私は自分の身体を見回した。
学校の制服を着てるし、なんといっても、胸が小さくなっている。
うお。
戻ったのだ。
しがない小都市にある、しがない公立高校の1年生、相良葵そのひとに。
身長155センチ、体重48キロ。
スリーサイズは秘密。
特技なし。
「だっせー!」
誰かがつぶやくのが聞こえてきた。
声のほうを見ると、窓際の席に、見慣れた横顔。
長髪のあの美少年は、まさかー。
「カンパネルラ!」
「その名前で呼ぶなっつーに」
少年が頭を抱えた時、ポケットの中のスマホが鳴った。
あわてて取り出すと、ラインメッセージが入っていた。
差出人は、kenji。
メッセージの内容は、こうだった。
-学校帰りに、あめゆき代わりにガリガリ君ソーダ味、買ってこられたし。兄より愛しの妹君へー
「兄ちゃん」
私は笑った。
視界が歪む。
涙がにじんできたのだ。
安堵の念が、全身に染みわたる。
なあんだ。
結局、みんな、こっちに来ちゃったんじゃない!
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