転生悪役令嬢は、どうやら世界を救うために立ち上がるようです

戸影絵麻

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エピローグ ~悪役令嬢の帰還~

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  頭の隅を、一匹のハツカネズミが横切った。

  ー任務完了!ー

 尻尾が見えなくなる直前に、そんな声が聞こえた気がした。

 と、次の瞬間。

「さがらさん、相良葵さん!」

 今度はひどく甲高い、神経質そうな声。

 あ、やばっ。

 こ、この声は、数学の、ヤマグチせんせー?

 目を開けると、そこは教室で、私は立てた教科書の陰につっぷしていた。

 見ると、案の定、ノートにはよだれの跡。

「あ、はい、はあい」

 思わずぴょんと飛び上がると、すかさず周囲から沸き起こるくすくす笑いの渦。

 私は自分の身体を見回した。

 学校の制服を着てるし、なんといっても、胸が小さくなっている。

 うお。

 戻ったのだ。

 しがない小都市にある、しがない公立高校の1年生、相良葵そのひとに。

 身長155センチ、体重48キロ。

 スリーサイズは秘密。

 特技なし。

「だっせー!」

 誰かがつぶやくのが聞こえてきた。

 声のほうを見ると、窓際の席に、見慣れた横顔。

 長髪のあの美少年は、まさかー。

「カンパネルラ!」

「その名前で呼ぶなっつーに」

 少年が頭を抱えた時、ポケットの中のスマホが鳴った。

 あわてて取り出すと、ラインメッセージが入っていた。

 差出人は、kenji。

 メッセージの内容は、こうだった。

 -学校帰りに、あめゆき代わりにガリガリ君ソーダ味、買ってこられたし。兄より愛しの妹君へー

「兄ちゃん」

 私は笑った。

 視界が歪む。

 涙がにじんできたのだ。

 安堵の念が、全身に染みわたる。
 
 なあんだ。

 結局、みんな、こっちに来ちゃったんじゃない!
 
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感想 1

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みんなの感想(1件)

伊予二名
2020.04.20 伊予二名

うん?冤罪で婚約破棄から拷問された主人公さんが世界を救うんです?
世界を滅ぼすの誤字でなくて?

戸影絵麻
2020.04.20 戸影絵麻

コメントありがとうございます。
そうですね。主人公はどっちかというと、世界を救う側ですね。

解除

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