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#91 銀河鉄道③
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軌道が大きくSの字を描き、宵闇の中に消えていく。
その消えるあたりで炎が噴き上がり、時折キラッキラッと何かが光る。
私は風の又三郎が作中でガラスのマントを羽織っていたのを思い出した。
だからやはり魔王Mは又三郎のMなのだ。
「魔王を退治する武器は? まさかこの銀河鉄道で特攻するつもりじゃないでしょうね?」
半分本気で私が問い詰めると、ダーク=トルストイ、もとい、ここではカンパネルラがにやりと笑った。
「まさかね。僕は志半ばでまだ死ぬつもりはないよ。まずは魔法のブックカバーで召喚したミサイルがひとつ。こいつをお見舞いしてみようと思う」
私が座る服運転席の左側には小さい本箱があって、その上にあのブックカバーのかかった本が置いてある。
中身はたぶん、『銀河鉄道の夜』だろう。
でも、『銀河鉄道』の中に、武器になりそうなものなんて、出てきただろうか。
あれこれ考えているうちにも、列車は速度を増し、高度を上げていく。
炎が近づき、街が燃えているのがわかってきた。
あれはどこなのだろう。
賢治の故郷、岩手、それとも東京?
「イーハトーブだよ。そうに決まってるだろ?」
私の心を読んだように、カンパネルラが言う。
「おっと、それよりそろそろ射程圏だ。僕は列車を見るから、砲塔には君が上がってくれないか」
「砲塔? なによ、それ?」
「上だよ。そこに立てばハッチに手が届くだろう」
なるほど、天井に丸い蓋みたいなのが嵌まっている。
「下着、見えちゃうじゃん」
私ときたら、パーティ帰りの娼婦っぽいドレスを着たままなのだ。
「見ないよ。僕はオンナに興味はない」
意味深なことを言う美少年。
「はいはい、行けばいいんでしょ」
仕方なく、スカートをまくり上げ、パンチラ上等で砲塔とやらに登ってみた。
そこは360度ガラス張りの、丸いドームみたいな場所だった。
確かに目の前に大砲の砲身みたいな鉄の筒が伸び、手元に拳銃のトリガーみたいなものがある。
ガラス窓には同心円が描いてあって、どうやらその真ん中に敵が来たら、このトリガーを引けばいいらしい。
「弾は何なの? 原子爆弾?」
冗談半分で訊いてみると、少しして運転席から返事が返ってきた。
「カササギだよ。決まってるだろ? 『銀河鉄道の夜』由来の兵器っていったら、カササギミサイルしかないよ」
その消えるあたりで炎が噴き上がり、時折キラッキラッと何かが光る。
私は風の又三郎が作中でガラスのマントを羽織っていたのを思い出した。
だからやはり魔王Mは又三郎のMなのだ。
「魔王を退治する武器は? まさかこの銀河鉄道で特攻するつもりじゃないでしょうね?」
半分本気で私が問い詰めると、ダーク=トルストイ、もとい、ここではカンパネルラがにやりと笑った。
「まさかね。僕は志半ばでまだ死ぬつもりはないよ。まずは魔法のブックカバーで召喚したミサイルがひとつ。こいつをお見舞いしてみようと思う」
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でも、『銀河鉄道』の中に、武器になりそうなものなんて、出てきただろうか。
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「イーハトーブだよ。そうに決まってるだろ?」
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「上だよ。そこに立てばハッチに手が届くだろう」
なるほど、天井に丸い蓋みたいなのが嵌まっている。
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私ときたら、パーティ帰りの娼婦っぽいドレスを着たままなのだ。
「見ないよ。僕はオンナに興味はない」
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「はいはい、行けばいいんでしょ」
仕方なく、スカートをまくり上げ、パンチラ上等で砲塔とやらに登ってみた。
そこは360度ガラス張りの、丸いドームみたいな場所だった。
確かに目の前に大砲の砲身みたいな鉄の筒が伸び、手元に拳銃のトリガーみたいなものがある。
ガラス窓には同心円が描いてあって、どうやらその真ん中に敵が来たら、このトリガーを引けばいいらしい。
「弾は何なの? 原子爆弾?」
冗談半分で訊いてみると、少しして運転席から返事が返ってきた。
「カササギだよ。決まってるだろ? 『銀河鉄道の夜』由来の兵器っていったら、カササギミサイルしかないよ」
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