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#83 禁書⑨
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トシ子の死が、魔王を生んだ?
魔法のブックカバーで、賢治の童話が現実になって?
そんなことがあるだろうか。
私は首をひねった。
確かに、ここは異世界だから、魔法が存在してもおかしくはない。
文明レベルは中世のヨーロッパに近いみたいだし、錬金術とかそういう超自然のものが世界の根幹を支えている可能性は否定できないだろう。
けど、どうしてもわからないのが、魔王を生んだ賢治の童話が何なのか、ということだ。
主人公がいじめ殺される『よだかの星』?
それとも人を喰らう化け猫が出てくる『注文の多い料理店』?
でも、どっちも頭文字はMじゃないし、そもそも魔王を生むにはキャラが小粒すぎる気がする…。
じゃあ、いったい、何なのだろう?
筋が痛くなるほど首をひねりまくっていると、何かを思いついたように少年が口を開いた。
「そうだ。君ならあれに乗れるかもしれない。試してみる価値は十分にありそうだ」
「え?」
その声に、私はわれに返った。
「あれって、何ですか?」
「それが我々にもよくわからないんだ。東方の島国を起点にして、最近、夜な夜な空を飛ぶ鉄道が現れるんだ。魔王の力が関与しているのは間違いないのだが、武器かと思うとそうでもないらしい。海を越え、このロンバルディア大陸に現れると、丘から丘へと飛び去って行く。むろん鉄道といってもそう見えるだけで、本当は幻のようなものかと思っていたのだが、クリス、異界から来た君なら乗れる気がしてきたよ」
空飛ぶ鉄道?
といえば、もう、あれしかない。
「それって、もしかして、銀河鉄道のこと?」
私が訊くと、少年は嬉しそうにうなずいた。
「そうか。銀河鉄道というのか。なるほど、”あれ”にぴったりの名前だよ。もし、君がその銀河鉄道に乗れるのなら、話は早い。あの不思議な鉄道は、夜明けとともに魔王の住むあの島国へと帰っていく。つまり、そこで君は必ず魔王と会えるというわけだ」
「会って、どうしろと?」
気になって、私は訊いた。
悪役令嬢の烙印を押されたこの私に、果たして何を望むというのだろう?
「決まってるじゃないか」
少年、ダーク=トルストイは、笑った。
「魔王を倒すんだよ。この世界を救うためにね」
魔法のブックカバーで、賢治の童話が現実になって?
そんなことがあるだろうか。
私は首をひねった。
確かに、ここは異世界だから、魔法が存在してもおかしくはない。
文明レベルは中世のヨーロッパに近いみたいだし、錬金術とかそういう超自然のものが世界の根幹を支えている可能性は否定できないだろう。
けど、どうしてもわからないのが、魔王を生んだ賢治の童話が何なのか、ということだ。
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筋が痛くなるほど首をひねりまくっていると、何かを思いついたように少年が口を開いた。
「そうだ。君ならあれに乗れるかもしれない。試してみる価値は十分にありそうだ」
「え?」
その声に、私はわれに返った。
「あれって、何ですか?」
「それが我々にもよくわからないんだ。東方の島国を起点にして、最近、夜な夜な空を飛ぶ鉄道が現れるんだ。魔王の力が関与しているのは間違いないのだが、武器かと思うとそうでもないらしい。海を越え、このロンバルディア大陸に現れると、丘から丘へと飛び去って行く。むろん鉄道といってもそう見えるだけで、本当は幻のようなものかと思っていたのだが、クリス、異界から来た君なら乗れる気がしてきたよ」
空飛ぶ鉄道?
といえば、もう、あれしかない。
「それって、もしかして、銀河鉄道のこと?」
私が訊くと、少年は嬉しそうにうなずいた。
「そうか。銀河鉄道というのか。なるほど、”あれ”にぴったりの名前だよ。もし、君がその銀河鉄道に乗れるのなら、話は早い。あの不思議な鉄道は、夜明けとともに魔王の住むあの島国へと帰っていく。つまり、そこで君は必ず魔王と会えるというわけだ」
「会って、どうしろと?」
気になって、私は訊いた。
悪役令嬢の烙印を押されたこの私に、果たして何を望むというのだろう?
「決まってるじゃないか」
少年、ダーク=トルストイは、笑った。
「魔王を倒すんだよ。この世界を救うためにね」
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