転生悪役令嬢は、どうやら世界を救うために立ち上がるようです

戸影絵麻

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#81 禁書⑦

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 私は詩の内容と賢治について、少年に話して聞かせた。
 
 とし子が結核で死んだのは、1922年、24歳の時。

 幼いころから才媛と名高く、一流大学に進み、故郷の女学校に英語の教師として赴任後のことである。

 24歳だなんて。

 あまりにも短い人生だ。

 時に賢治は26歳。舞台は岩手県花巻。

 宗教的な考え方の違いに端を発して父親とも不仲になり、詩や童話をいくら書いても評価されず…。

 そんな苦しい賢治にとって、いちばんの理解者だった2つ違いの妹の死。

 その後、亡き妹の姿を求めての彼のこころの旅は続いた。

「なるほど…。しかし、その詩にこめられた思いは、兄が妹に向けたものというより、まるで恋人に対する激情というふうにも取れるのだが、その点はどうなのかな?」

「確かに近親相姦を疑う研究者もいるようね。でも、私は違うと思う。トシは女学生時代に恋愛事件を起こしてるし、賢治には同性愛者だった節もあるの。だからふたりの関係は、そうした性愛を超えたところに生まれる、いわば人生という戦場における、お互い唯一の同志ってところだったんじゃないかしら」

「ふふ、娼婦めいた格好に似合わず、君は難しいことを言うね。でも、おかげで読めてきたよ。”M”は魔王のMでもあり、宮沢賢治のMでもあるということだ。そしてもうひとつ、この禁書図書館から消えたあの本のタイトルも、たしかMで始まるものだった…」

 魔王のMは、宮沢賢治のM?

 つまり、魔王=宮沢賢治ってこと?

 私は唖然とし、あんぐりと口を開いた。

 なんなのだ、それは。

 大正時代の日本の童話作家が、異世界で魔王に?

 いくらなんでも、ありえない。

 それに、Mで始まるタイトルの本?

 おそらくそれも賢治の作品なのだろうけど…でも、いったい何だろう?

 
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