転生悪役令嬢は、どうやら世界を救うために立ち上がるようです

戸影絵麻

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#70 接触④

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「変な気起こしたら、ただじゃおかないからね」

 隣の席で、アグネスが言った。

「憲兵隊が見張ってること、忘れないように」

「なんでもいいから、これ、外してくれない?」

 私はアグネスの鼻先で、両手首を拘束した手錠をガチャガチャ鳴らしてみせた。

 翌日の午後。

 私は王宮から目抜き通りを馬車で10分ほどのところにある、王立図書館の前に来ていた。

 馬車の窓から見える図書館は、予想以上に立派な建物だった。

 大英博物館みたいに大きく、それでいて威厳に満ちた佇まい。

 前庭には前衛的な金属のオブジェ。

 曲線だけで構成されたそれは、何を象徴しているのかよくわからない。

 しいて言えば、食べかけのゆで卵だろうか。

「いい? あんたの任務は、”M"の密偵、ダーク=トルストイを建物の外におびき出すこと。後はあたしたちがやるから、くれぐれも余計な行動は慎んで」

「わかってますよ。くどい女」

 手錠を外されると、私は嬉々として馬車を飛び降りた。

 一応スプリングコートは羽織ってるけど、なんせ下は例の娼婦ファッションだから、スース―して肌寒い。

 でも、と大きく伸びをした。

 とにかく、王宮の外に出ることができたのだ。

「いよいよですね」

 声がして、コートの右ポケットからハツカネズミが顔をのぞかせた。

「あなたの転生者としての人生、これからが本番なのですよ」

 湿った鼻をひくつかせて、リリスが言った。

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