転生悪役令嬢は、どうやら世界を救うために立ち上がるようです

戸影絵麻

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#59 密命⑬

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「私が持病の癪で寝ている間に、そんな相談を」

「はい、申し訳ありません」

 持病のしゃくって、時代劇かよ。このおばさん。

「とにかく、このような悪役令嬢、目障りで仕方ない。とっとと追い出してしまえ」

 王妃が声を荒げた時である。

「まあまあまあ、マサラ王妃さま。いいではありませんか。娼婦のひとりやふたりくらい」

 周りを取り囲む人垣の中から、異様に陽気な男の声がした。

「しかも、この娼婦、セクシーなだけではなく、とびきり美しい。祝いの場にふさわしい華やかさだ」

 姿を現したのは、熊みたいにがっしりとした体形の、大男だった。

 でも、2メートル近い巨体の割に、肩の上に乗っている顔は意外に童顔だ。

 しかもどこか愛嬌があって憎めない。

「ソロ、おまえ」

 男を見上げ、王子が困ったような顔をする。

 ソロと呼ばれた男はそれにはかまわず、私のほうに人懐っこい笑顔を向けると、明るい声でいきなり言った。

「よう、クリス。きょうはずいぶんとまた色っぽいじゃないか。いやあ、見違えたね。その格好も、なかなか似合ってるぜ。あのさ、俺のこと、覚えてるか? ギムナジウムで一緒だった、ソロ=ヘイワードだよ。それとも、もう何年も昔のことだから、忘れちまったかな?」




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