転生悪役令嬢は、どうやら世界を救うために立ち上がるようです

戸影絵麻

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#48 密命②

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 驚いたのは、それからしばらくして、いきなり王宮から呼び出しがかかったことである。

 裸では失礼にあたるということで、急きょギンガムチェックの囚人服を着せられ、私は王宮へと赴いた。

 レッドカーペットの上を、捕縛縄で縛られ、うなだれて歩く私を見て、貴族たちがくすくす笑った。

 無理もない。

 きのうまでは、王子の婚約者として豪奢なドレスで着飾っていたクリスが、みすぼらしい囚人服を着せられて目の前を歩いていくのである。

 他人の不幸は蜜の味という言葉通り、その姿を見てほとんどの者が留飲を下げたに違いなかった。

 玉座の前にかしずくと、

「内通の相手が、王立図書館の司書というのは、本当か?」

 単刀直入に、王がじきじき訊いてきた。
 
 そのかたわらには柚木先生似のユルス王子と、あの性悪女のアグネスが控えている。

「どうせでたらめでしょ? 王をだまそうなんて、あなた、いったいどういうつもりなの?」

 計算が狂ってあわてているのだろう、アグネスが苛々と横から口を出した。

 密偵云々は、元よりアグネスの広めたデマなのである。

 まさかそれを私が認めるとは思ってもみなかった、とその顔には暗に書いてあるようだ。

「本当です」

 むかっときて、私は言い返した。

「私、図書館司書のダーク=トルストイと、時々会っていました」

「それは、やはりあれか? ”M”の活動再開の時期、あるいは、上陸地点の相談か?」

 王が深刻な表情で訊いてくる。

「ええ、まあ、そんなもんです」

 私の答えは当然、テキトーだ。

 ”M”とは魔王のことらしいけど、正直会ったこともないんだし。

「困ったな」

 なぜか考え込む王さま。

「王立図書館といえば、完全な治外法権じゃ。捜査を依頼するには、とてつもなく面倒な手続きが要る」

 と、そこに歩み出たのは王子だった。

「ならば、こうすればよいのでは? その女を囮に、密偵を外におびき出すのです」



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