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最終話 勘違いは真実
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一緒にケーキを食べに行くことになり、今日は王都の街に来ている。
「はぐれるといけないからね」
そう言ってルイス様は、私の手を握ると何度もギュッギュッと握り直している。
「⁈」
「リナちゃんの手は柔らかいね」
それだけのことでルイス様は嬉しそうで、ただ全体的に肉づきがいいだけなのに不思議に思ってしまう。
商店街は賑わっていて、すれ違う女性達が皆ルイス様を見てうっとりしている。
女性達は皆綺麗だ‥‥
ルイス様を見た後、視線を下ろして私を見ている。
きっと何でこんな女が?と思っているのだろう。
眉間に寄ったしわが女性達の感情を表している。
言われなくても自覚している‥‥
ガラス張りのアクセサリー店の前を通ると、キラキラと光る宝石が美しい。
見ながら通り過ぎるとルイス様が立ち止まった。
「リナちゃん、ちょっと待っていて!すぐに戻るから、ここから絶対動いては駄目だよ!」
「はい」
私が頷くと、ルイス様は通り過ぎたアクセサリー店に入って行った。
一人で立っていると、男性が声を掛けてきた。
「あの、すみません。サンリッツ通りはここですか?」
「あ、いえ、この一本奥の通りです」
身振りで説明する。
「ああそうですか!ありがとうございます。友人が店を出したというので祝いに来たのですが、王都の街はよく分からなくて迷ってしまって‥‥助かりました」
「いえ。ご友人の方、良かったですね」
「王都の方は皆忙しそうで声を掛けづらくて‥‥私のような田舎者は滅多に来ないものですから」
「私も領地が田舎なので気持ちは分かります。皆さん忙しそうに見えますよね」
「ええ。こんな田舎者が声を掛けたら悪いかと思ってしまって」
「そんなことないですよ。困った時はお互い様ですから」
「やっぱりあなたは、見た目通り優しい方ですね」
「そうですか?‥」
「ええ、とても可愛らしい方だと思いました」
「あ、ありがとうございます」
思わずお礼を言うと、
「こちらこそ、親切に教えていただいてありがとうございました。もし良ければお礼に、」
「おい!!お前は誰だ?私の婚約者に何の用だ!」
「ルイス様!」
「あっいえ、私はこれで‥‥」
彼は頭を下げると急いで歩いて行った。
「リナちゃん!知らない男と話すなんて危険だよ。やっぱり一緒に店に連れて行くべきだった‥」
ルイス様は少し苛立ったようにため息を吐いた。
「ただ道を聞かれただけですから」
「男が道を聞くなんて、口説く口実だよ!リナちゃんを誘うつもりだったんだ」
「いえ、本当にご友人の店を探されていたんです。私を誘うなんてあり得ません」
「そんな事を信じては駄目だよ!リナちゃんは素直すぎる‥‥自分の魅力をわかってなさすぎるんだ」
ルイス様は勘違いされているわ‥‥
本当にサンリッツ通りを聞かれただけなのに‥‥
「店の通りが分からなかったようなんです」
リナちゃんは勘違いしている‥‥
そんなのは誘い文句なのに信じるなんて‥‥
「リナちゃん、これを着けて欲しい」
手渡されたのはキラキラと輝く髪飾りだった。
「これ、ルイス様の瞳の色」
「イエローダイヤモンドだ。さっき店の外から見えたものだから」
「こんな高価な物、いただけません」
「身に着けてもらわないと困るよ。リナちゃんに声を掛ける男がいると困るんだ。ネックレスも一緒に着けていて」
そう言って首に同じイエローダイヤモンドのネックレスを着けてくれる。
「これを見れば贈り物だと分かるだろう。婚約者がいると分かれば安易に声を掛けなくなるはずだ」
私の髪飾りとネックレスを見てルイス様はホッとしたように笑った。
「よく似合っている。可愛いよ」
ルイス様は自分の手首に青く美しいサファイアのブレスレットを着けた。
「俺はリナちゃんの瞳の色を身に着けることにするよ。これで邪魔者は入れないだろう?」
嬉しそうに手首を振って見せる。
「はい。ルイス様もとても似合っています」
「ねぇ、リナちゃん。リナちゃんが卒業したら、なるべく早く結婚式を挙げないか?」
「え?そんなに早くですか?」
「嫌かな?」
「いえ、とっても嬉しいです」
「ああ良かった!!とても心配で、あまり長く待てそうにないんだ」
「私もルイス様の側にいれるなら幸せです」
私達はまた手を繋いでケーキ屋を目指して歩き出した。
二人は時々見つめ合いながら歩いて行く。
その姿は誰から見ても幸せそうで、間に入ることなどできそうもなかった。
はぁ‥‥さっきの子‥‥ちょっと童顔で可愛かったなぁ‥‥
目もぱっちりしてて、素直そうで優しくて‥‥
婚約者がいたのか‥‥
早くサンリッツ通りの友人の店を見つけて、このがっかりした話を聞いてもらおう‥‥
~END~
ここまで読んで下さった皆様、どうもありがとうございましたm(_ _)m
」
「はぐれるといけないからね」
そう言ってルイス様は、私の手を握ると何度もギュッギュッと握り直している。
「⁈」
「リナちゃんの手は柔らかいね」
それだけのことでルイス様は嬉しそうで、ただ全体的に肉づきがいいだけなのに不思議に思ってしまう。
商店街は賑わっていて、すれ違う女性達が皆ルイス様を見てうっとりしている。
女性達は皆綺麗だ‥‥
ルイス様を見た後、視線を下ろして私を見ている。
きっと何でこんな女が?と思っているのだろう。
眉間に寄ったしわが女性達の感情を表している。
言われなくても自覚している‥‥
ガラス張りのアクセサリー店の前を通ると、キラキラと光る宝石が美しい。
見ながら通り過ぎるとルイス様が立ち止まった。
「リナちゃん、ちょっと待っていて!すぐに戻るから、ここから絶対動いては駄目だよ!」
「はい」
私が頷くと、ルイス様は通り過ぎたアクセサリー店に入って行った。
一人で立っていると、男性が声を掛けてきた。
「あの、すみません。サンリッツ通りはここですか?」
「あ、いえ、この一本奥の通りです」
身振りで説明する。
「ああそうですか!ありがとうございます。友人が店を出したというので祝いに来たのですが、王都の街はよく分からなくて迷ってしまって‥‥助かりました」
「いえ。ご友人の方、良かったですね」
「王都の方は皆忙しそうで声を掛けづらくて‥‥私のような田舎者は滅多に来ないものですから」
「私も領地が田舎なので気持ちは分かります。皆さん忙しそうに見えますよね」
「ええ。こんな田舎者が声を掛けたら悪いかと思ってしまって」
「そんなことないですよ。困った時はお互い様ですから」
「やっぱりあなたは、見た目通り優しい方ですね」
「そうですか?‥」
「ええ、とても可愛らしい方だと思いました」
「あ、ありがとうございます」
思わずお礼を言うと、
「こちらこそ、親切に教えていただいてありがとうございました。もし良ければお礼に、」
「おい!!お前は誰だ?私の婚約者に何の用だ!」
「ルイス様!」
「あっいえ、私はこれで‥‥」
彼は頭を下げると急いで歩いて行った。
「リナちゃん!知らない男と話すなんて危険だよ。やっぱり一緒に店に連れて行くべきだった‥」
ルイス様は少し苛立ったようにため息を吐いた。
「ただ道を聞かれただけですから」
「男が道を聞くなんて、口説く口実だよ!リナちゃんを誘うつもりだったんだ」
「いえ、本当にご友人の店を探されていたんです。私を誘うなんてあり得ません」
「そんな事を信じては駄目だよ!リナちゃんは素直すぎる‥‥自分の魅力をわかってなさすぎるんだ」
ルイス様は勘違いされているわ‥‥
本当にサンリッツ通りを聞かれただけなのに‥‥
「店の通りが分からなかったようなんです」
リナちゃんは勘違いしている‥‥
そんなのは誘い文句なのに信じるなんて‥‥
「リナちゃん、これを着けて欲しい」
手渡されたのはキラキラと輝く髪飾りだった。
「これ、ルイス様の瞳の色」
「イエローダイヤモンドだ。さっき店の外から見えたものだから」
「こんな高価な物、いただけません」
「身に着けてもらわないと困るよ。リナちゃんに声を掛ける男がいると困るんだ。ネックレスも一緒に着けていて」
そう言って首に同じイエローダイヤモンドのネックレスを着けてくれる。
「これを見れば贈り物だと分かるだろう。婚約者がいると分かれば安易に声を掛けなくなるはずだ」
私の髪飾りとネックレスを見てルイス様はホッとしたように笑った。
「よく似合っている。可愛いよ」
ルイス様は自分の手首に青く美しいサファイアのブレスレットを着けた。
「俺はリナちゃんの瞳の色を身に着けることにするよ。これで邪魔者は入れないだろう?」
嬉しそうに手首を振って見せる。
「はい。ルイス様もとても似合っています」
「ねぇ、リナちゃん。リナちゃんが卒業したら、なるべく早く結婚式を挙げないか?」
「え?そんなに早くですか?」
「嫌かな?」
「いえ、とっても嬉しいです」
「ああ良かった!!とても心配で、あまり長く待てそうにないんだ」
「私もルイス様の側にいれるなら幸せです」
私達はまた手を繋いでケーキ屋を目指して歩き出した。
二人は時々見つめ合いながら歩いて行く。
その姿は誰から見ても幸せそうで、間に入ることなどできそうもなかった。
はぁ‥‥さっきの子‥‥ちょっと童顔で可愛かったなぁ‥‥
目もぱっちりしてて、素直そうで優しくて‥‥
婚約者がいたのか‥‥
早くサンリッツ通りの友人の店を見つけて、このがっかりした話を聞いてもらおう‥‥
~END~
ここまで読んで下さった皆様、どうもありがとうございましたm(_ _)m
」
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欲を言えば、もっと報われて欲しかったし、美人かもしれないけど自意識過剰な姉にはもっと痛い目見て欲しかった。親もね。
読んで下さってありがとうございます😊
感想もいただき嬉しいです♪
リナちゃんは、かなあきさんの優しさで報われたと思います☺️
ありがとうございます🩷
この2人の場合、我慢して婚約を続けたところで常に姉の事がどこかに残ったままになっていたと思います。
何かしら、気持ちの確認は必要だったでしょうね。ヘタレで声掛けできない男と、自信を失わせる姉のいる妹。
婚約解消はもしかするとこのままサヨナラになったかもしれませんけど、1番いい方法だったのかな。
感想ありがとうございます😭
ルイスがもっと早く何かしらの行動を取ってくれていたらと思いますが、婚約解消を切り出したことが、良い方向へのきっかけになってくれたと思います。
お互いの気持ちが確認できて良かったです😌
風子様
初めまして😊
完結したようなので一気読みさせて頂きました。
面白かったです😊。続きがあれば読みたいぐらい。
リナちゃんとルイスくんが 可愛い過ぎる!
ありがとうございます😭
とっても嬉しいです。
私もリナとルイスの素直さが好きです。
この純愛をもう少し書いてみたいなぁとも思っています。その時は、また読んでいただけたら嬉しいです☺️