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護衛騎士との夜2
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「アリアン王女は、何故私達にも刺繍をしてくださったのでしょうか?」
オリバー様がポツリと呟いた
「それは、お二人は騎士団の隊長だとお聞きしました。それなのに護衛騎士になられたと‥‥
私が刺されるような事が無ければ、ご迷惑をお掛けすることがなかったのに申し訳なくて‥お詫びの気持ちです」
「そのようにお気遣いくださらなくても護衛を申し出たのは私達の方です。勝手になったのですよ」
「いえ。私のせいで隊の皆様の損失になってしまいますわ。隊長のお二人はきっと腕も良く人望も厚いお方でしょうに、アルンフォルトの国にとって大事なお二人を失うことになってしまいます」
「腕の良い者は大勢います。我が国の騎士団は優秀な者ばかりですからご心配なく」
「そんな‥‥」
申し訳なくて頭を下げると、また二人は笑った
何か面白いことを言ったかしら?
「やはり王女は面白い方ですね。私達に頭を下げるなんて」
それは当然のことだ
大国の騎士団の隊長二人を護衛にするなんてあまりにも勿体ない
「アリアン王女のハンカチには、獅子が刺繍されておりましたね」
ロバート様がポケットから取り出す
「ええ。家紋が分からず、私の勝手な判断で騎士の方の勇敢さを思い刺繍しました。お気に召しませんでしたか?」
「いえ、あまりに立派なもので恐縮致します」
「私の獅子は赤くとても見事です」
「オリバー様の髪はとても素敵な赤い髪ですので、その美しさを獅子にもと思いました。赤い獅子に金糸で高貴な騎士を表現したつもりです」
「何と‥この赤い髪を‥‥。私は自分の赤い髪があまり好きではなかったのです。この髪のせいで幼い頃は嫌な思いをしていました」
「私にはとても素敵に思えます。勇ましくて、赤い薔薇のように美しいですわ」
オリバー様は瞳を大きくされた
「私の獅子は何故この色に?」
「ロバート様の髪の色は美しいグレー色ですが、私のロバート様の印象は、いつもお召しになる深緑の服の方が強くて‥
ロバート様の深緑に金糸のお召し物がとても品が良くお似合いなのです。
ですから、ロバート様の獅子にもその品の良さを取り入れました」
「何と‥‥私の色の好みをご理解くださったのですね」
ロバートは深緑の色を好み、品を大事にする男だった
何事にも品の良さを求めるこだわりがあった
「さぁ、もう戻りましょう。いつまでもお二人を付き合わせるわけには参りません。明日も早いですし」
そう言うと三人でまた静まり返る宿の中へ戻った
湖をゆっくり眺めたせいか私は気持ち良く眠りについた
オリバーとロバートも部屋に戻りベッドに潜り込む
先程の事をオリバーは思い出していた
昔から自分の赤毛が嫌いだった
祖父は燃えるような赤毛だったが、父は赤毛では無かった
母も赤毛では無い
その為、小さい頃から親が違うのではないかとよくからかわれた
その上、幼い頃病弱だった私は、女のようだと馬鹿にされよく虐められていた
その反発から剣術に打ち込むようになり、今は隊長の座まで昇り詰めたのだ
けれど心の奥底では、今だに赤毛の引け目を感じていた
アリアン王女に勇ましく美しいとこの赤毛を言われた事が心に響いていた
あの頃の自分が救い出されたような気になった
人前に出ることを躊躇していたあの頃の自分に手を差し伸べられたような錯覚を起こした
あの微笑みはまさに女神のように見えた
美しく優しい女神そのもの
彼女の瞳があまりにも美しくて忘れられない‥‥
オリバーはなかなか寝付けないでいた
時を同じくして、ロバートも自分のベッドに入ると先程の事を思い出していた
公爵家の次男として生まれ、兄が跡を継ぐことが決まっていた
けれど、私から見れば兄は出来が悪い男だった
私よりも頭が悪く、剣術も劣る、その上だらしのない男だ
公爵家を継ぐのは代々長男と決まっているが、父があのような愚息を本当に跡継ぎにするとは思わなかった
何においてもいい加減でだらしのない、そんな兄を選んだ父への反抗心から、私はより一層公爵家の人間として兄との違いを見せつけたかった
私が最も大事にしていることは品の良さだった
兄には欠片もない
アリアン王女は、私が深緑の色を好んで着ていることを知っていた
その上、品が良いと言ってくれた
私が最も気を付けてきたことを解ってくれた
父が認めてくれなかった私の思いを、認めてもらえたようで救われた気がした
公爵家には要らないと言われたような自分に、手を差し伸べてくれる女神のようだった
彼女の瞳はあまりにも美しかった
あの微笑みは一瞬で私を魅了した
思い出すとなかなか寝付けないでいた
オリバー様がポツリと呟いた
「それは、お二人は騎士団の隊長だとお聞きしました。それなのに護衛騎士になられたと‥‥
私が刺されるような事が無ければ、ご迷惑をお掛けすることがなかったのに申し訳なくて‥お詫びの気持ちです」
「そのようにお気遣いくださらなくても護衛を申し出たのは私達の方です。勝手になったのですよ」
「いえ。私のせいで隊の皆様の損失になってしまいますわ。隊長のお二人はきっと腕も良く人望も厚いお方でしょうに、アルンフォルトの国にとって大事なお二人を失うことになってしまいます」
「腕の良い者は大勢います。我が国の騎士団は優秀な者ばかりですからご心配なく」
「そんな‥‥」
申し訳なくて頭を下げると、また二人は笑った
何か面白いことを言ったかしら?
「やはり王女は面白い方ですね。私達に頭を下げるなんて」
それは当然のことだ
大国の騎士団の隊長二人を護衛にするなんてあまりにも勿体ない
「アリアン王女のハンカチには、獅子が刺繍されておりましたね」
ロバート様がポケットから取り出す
「ええ。家紋が分からず、私の勝手な判断で騎士の方の勇敢さを思い刺繍しました。お気に召しませんでしたか?」
「いえ、あまりに立派なもので恐縮致します」
「私の獅子は赤くとても見事です」
「オリバー様の髪はとても素敵な赤い髪ですので、その美しさを獅子にもと思いました。赤い獅子に金糸で高貴な騎士を表現したつもりです」
「何と‥この赤い髪を‥‥。私は自分の赤い髪があまり好きではなかったのです。この髪のせいで幼い頃は嫌な思いをしていました」
「私にはとても素敵に思えます。勇ましくて、赤い薔薇のように美しいですわ」
オリバー様は瞳を大きくされた
「私の獅子は何故この色に?」
「ロバート様の髪の色は美しいグレー色ですが、私のロバート様の印象は、いつもお召しになる深緑の服の方が強くて‥
ロバート様の深緑に金糸のお召し物がとても品が良くお似合いなのです。
ですから、ロバート様の獅子にもその品の良さを取り入れました」
「何と‥‥私の色の好みをご理解くださったのですね」
ロバートは深緑の色を好み、品を大事にする男だった
何事にも品の良さを求めるこだわりがあった
「さぁ、もう戻りましょう。いつまでもお二人を付き合わせるわけには参りません。明日も早いですし」
そう言うと三人でまた静まり返る宿の中へ戻った
湖をゆっくり眺めたせいか私は気持ち良く眠りについた
オリバーとロバートも部屋に戻りベッドに潜り込む
先程の事をオリバーは思い出していた
昔から自分の赤毛が嫌いだった
祖父は燃えるような赤毛だったが、父は赤毛では無かった
母も赤毛では無い
その為、小さい頃から親が違うのではないかとよくからかわれた
その上、幼い頃病弱だった私は、女のようだと馬鹿にされよく虐められていた
その反発から剣術に打ち込むようになり、今は隊長の座まで昇り詰めたのだ
けれど心の奥底では、今だに赤毛の引け目を感じていた
アリアン王女に勇ましく美しいとこの赤毛を言われた事が心に響いていた
あの頃の自分が救い出されたような気になった
人前に出ることを躊躇していたあの頃の自分に手を差し伸べられたような錯覚を起こした
あの微笑みはまさに女神のように見えた
美しく優しい女神そのもの
彼女の瞳があまりにも美しくて忘れられない‥‥
オリバーはなかなか寝付けないでいた
時を同じくして、ロバートも自分のベッドに入ると先程の事を思い出していた
公爵家の次男として生まれ、兄が跡を継ぐことが決まっていた
けれど、私から見れば兄は出来が悪い男だった
私よりも頭が悪く、剣術も劣る、その上だらしのない男だ
公爵家を継ぐのは代々長男と決まっているが、父があのような愚息を本当に跡継ぎにするとは思わなかった
何においてもいい加減でだらしのない、そんな兄を選んだ父への反抗心から、私はより一層公爵家の人間として兄との違いを見せつけたかった
私が最も大事にしていることは品の良さだった
兄には欠片もない
アリアン王女は、私が深緑の色を好んで着ていることを知っていた
その上、品が良いと言ってくれた
私が最も気を付けてきたことを解ってくれた
父が認めてくれなかった私の思いを、認めてもらえたようで救われた気がした
公爵家には要らないと言われたような自分に、手を差し伸べてくれる女神のようだった
彼女の瞳はあまりにも美しかった
あの微笑みは一瞬で私を魅了した
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