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ラリーの思い
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ラリーは二人が馬車で出掛けたことを確認するとラウルに言った
「アリーを執務室に」
「わかりました」
私は庭の手伝いを始めたところでラウル様に呼ばれた
「アリー、父が君に話があるんだ。一緒に来て貰いたい」
「わかりました。今手を洗って参ります」
急いで泥の付いた手を洗う
自分の手を洗いながらよく見ると、爪は黒ずんで指先は荒れている
毎日の洗濯、毎日の皿洗い、毎日の床掃除、毎日の‥毎日の‥
私は本当に使用人なんだわ
父が国王でありながら、長い間離宮に閉じ込められ、幸せな夢を見た途端に命を狙われ、そして今は下働きの使用人
私は何の為に生きているんだろうって何度思ったかな‥
「アリー?」
ラウル様の声にハッとする
いけない、つい自分の本当の気持ちが顔を出す
「すみませんラウル様、お待たせしました」
長い廊下をラウル様の背中を見て歩く
私を気遣いながら歩幅を合わせてくれている
「アリー」
急にラウル様が立ち止まる
それに合わせて私も止まった
「はい?」
後ろを振り返るラウル様は、眉を顰め切ない表情をしている
「本当は辛いよねアリー、こんな生活をしていること」
「‥‥」
言葉を返すことができない
きっと先程の私の姿を見ていたのだろう
自分の手を見つめていたせいできっと伝わってしまったのかもしれない
「答えにくいよね‥無神経だった、ごめんね」
「いえ‥」
私はいつも何も言えない
自分の気持ちをどうやったら伝えられるのか分からない
私がもし全部正直に話したらきっと全てを傷付けるだろうから
またゆっくりと歩き出した後ろを黙って付いて行く
しばらくするとラウル様の足が止まった
「ここの部屋だよ」
ノックをすると中からどうぞと聞こえた
扉を開けると中には笑顔の公爵が居た
「やぁアリー、なかなか話せずにすまなかったね。どうぞ座って」
「はい、伯父様」
私は中のソファに案内されるまま座った
ラリーはラウルの側まで行くと耳元で
「誰も寄せ付けるな、見張れ」と言いラウルは頷くと部屋から出て行った
「元気かい?食事は取れている?」
「はい、大丈夫です。私を守ってくださりありがとうございます」
私は深々と頭を下げた
「いいんだ、君はマリアの娘でこのサマフォート家の宝なんだよ。私にとっても大事な宝物だ」
「伯父様」
その笑顔はとても優しい
伯父は中性的な美しい顔立ちをしている
年齢よりもずっと若く見える
伯父は真っ直ぐに私を見た
「君は妹によく似ている」
薄茶色の瞳を細めた
私のその奥にきっと母を見ているのだろう
「魅了の石だね」
「えっ?」
「その瞳、魅了の石だと父がよく言っていた。君のお爺さんになる人だよ。ベルラード・サマフォートだ。母のレイラも君と同じように紫色の瞳をしていた。父はよく魅了の石だと言って、魅せられた者は生涯離れることはできないと‥常に母を隣においていた。愛し合って仲の良い夫婦だったよ。妹も母と同じ瞳を持っていた。スペンサー国王も一目で魅了されてしまったようだね」
そう言って笑ったけれど、その笑顔はなぜか悲しそうだった
「アリーを執務室に」
「わかりました」
私は庭の手伝いを始めたところでラウル様に呼ばれた
「アリー、父が君に話があるんだ。一緒に来て貰いたい」
「わかりました。今手を洗って参ります」
急いで泥の付いた手を洗う
自分の手を洗いながらよく見ると、爪は黒ずんで指先は荒れている
毎日の洗濯、毎日の皿洗い、毎日の床掃除、毎日の‥毎日の‥
私は本当に使用人なんだわ
父が国王でありながら、長い間離宮に閉じ込められ、幸せな夢を見た途端に命を狙われ、そして今は下働きの使用人
私は何の為に生きているんだろうって何度思ったかな‥
「アリー?」
ラウル様の声にハッとする
いけない、つい自分の本当の気持ちが顔を出す
「すみませんラウル様、お待たせしました」
長い廊下をラウル様の背中を見て歩く
私を気遣いながら歩幅を合わせてくれている
「アリー」
急にラウル様が立ち止まる
それに合わせて私も止まった
「はい?」
後ろを振り返るラウル様は、眉を顰め切ない表情をしている
「本当は辛いよねアリー、こんな生活をしていること」
「‥‥」
言葉を返すことができない
きっと先程の私の姿を見ていたのだろう
自分の手を見つめていたせいできっと伝わってしまったのかもしれない
「答えにくいよね‥無神経だった、ごめんね」
「いえ‥」
私はいつも何も言えない
自分の気持ちをどうやったら伝えられるのか分からない
私がもし全部正直に話したらきっと全てを傷付けるだろうから
またゆっくりと歩き出した後ろを黙って付いて行く
しばらくするとラウル様の足が止まった
「ここの部屋だよ」
ノックをすると中からどうぞと聞こえた
扉を開けると中には笑顔の公爵が居た
「やぁアリー、なかなか話せずにすまなかったね。どうぞ座って」
「はい、伯父様」
私は中のソファに案内されるまま座った
ラリーはラウルの側まで行くと耳元で
「誰も寄せ付けるな、見張れ」と言いラウルは頷くと部屋から出て行った
「元気かい?食事は取れている?」
「はい、大丈夫です。私を守ってくださりありがとうございます」
私は深々と頭を下げた
「いいんだ、君はマリアの娘でこのサマフォート家の宝なんだよ。私にとっても大事な宝物だ」
「伯父様」
その笑顔はとても優しい
伯父は中性的な美しい顔立ちをしている
年齢よりもずっと若く見える
伯父は真っ直ぐに私を見た
「君は妹によく似ている」
薄茶色の瞳を細めた
私のその奥にきっと母を見ているのだろう
「魅了の石だね」
「えっ?」
「その瞳、魅了の石だと父がよく言っていた。君のお爺さんになる人だよ。ベルラード・サマフォートだ。母のレイラも君と同じように紫色の瞳をしていた。父はよく魅了の石だと言って、魅せられた者は生涯離れることはできないと‥常に母を隣においていた。愛し合って仲の良い夫婦だったよ。妹も母と同じ瞳を持っていた。スペンサー国王も一目で魅了されてしまったようだね」
そう言って笑ったけれど、その笑顔はなぜか悲しそうだった
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