上 下
17 / 97

夜会の知らせ

しおりを挟む
ヴィル様とお会いした夜から一週間後の昼過ぎ
急に屋敷が慌ただしくなった
昼食をレイと食べ終えた頃、サリーが駆け込んで来た

「旦那様が王宮から帰っていらしたそうよ。それで皆に話があるから広間に集まって欲しいって。使用人も全員だって。
急いで」

「何かあったの?」

「さぁ、ここ最近王宮に泊まり込みでお仕事されていたようだから何かあったのかもしれないわね」

ドクンと心臓が大きく音を立てた

「とにかく早く広間に向かうわよ」

廊下に出ると使用人達があちこちから小走りに広間に向かっている
私達もその波にのまれ広間に移動した
使用人達の並びも、前列は執事や侍女頭を先頭に侍女やメイド達貴族出身の者達から並んでいる
平民の使用人は一番後ろだ
私はレイとサリーと一緒に一番後ろに並んだ
しばらくして主人のラリー・サマフォート公爵が入って来た
その後に長男ラウル、妻リリアーナ、娘のエリナが続いた
執事が全員揃ったことを告げると頷いた 
妻のリリアーナは後妻で、エリナを連れて公爵家に嫁いできた
ラウルの母は、ラウルが6才の時に亡くなったらしい
レイが教えてくれた
リリアーナとは王宮で面識があるが、私がここで使用人をしていることは知らない
知られてはいけないのである
公爵はコホンと咳をひとつすると

「忙しいところ、皆に集まってもらったのには訳がある。この度、隣国アルンフォルトから王太子殿下がおいでになられた。そこで、王家主催の夜会が開かれることとなった。
貴族は皆招待され、令嬢はデビュタントを終えた者が招待される
ただし王太子殿下は以前、王妃主催の茶会にいらしたことがある
その時の茶会に出席した令嬢は、デビュタントを果たしていなくとも全員招待される
たとえその令嬢が貴族でなくとも出席せよと命じられている」

ラリー公爵は目で私を探すように見回し、私と目が合うと僅かに頷いた

「お父様、貴族でないとはどういう意味ですの?その者がなぜ招待を?」

「まだ話は途中だ」

「申し訳ございません」

声を上げたエリナを強く制した公爵は話を続けた

「夜会は一ヶ月後に王宮で行われる。
その間、王太子殿下は四大公爵家を回り領地の視察もされる。
我がサマフォート家にも王太子殿下がおいでになる。
我が公爵家は四番目で三週間後だ。
皆には準備を進めて貰いたい。
晩餐の用意は間に合うか?ダン」

「はい、お任せください」

「よし」

「お泊まりになられるから客室も用意せよ」

「かしこまりました」

侍女頭が頭を下げる

「では以上だ。皆王太子殿下に粗相の無いよう準備せよ」

「かしこまりました」

全員が頭を下げる
使用人が次々と広間を出る
その流れに沿って私達も出た

心臓がドクドクとうるさい
私はデビュタントを果たしていない
その年を迎えているが出席を許されていなかった
私の存在など誰も知らないだろう
貴族ではなくなった私のことを言っているのだろうか
何かが動き出すような期待と不安が次々溢れ出てくる
何が起ころうとしているの‥


広間には主人のラリー、ラウル、リリアーナ、エリナの4人が残っていた

「お父様、王太子殿下はローズ王女と婚約されているのですよね?」

「あぁ今はな」

「では、我が公爵家を訪れて、もし王太子殿下が心変わりをされたら新たな婚約者になれるかしら?」

「さぁな、婚約者が変わるかもしれないな」

「まぁお母様!私自信がありますわ。
王太子殿下に見初められれば大国の王妃ですわ」

「そうね、エリナは美人だからきっと王太子殿下は声を掛けてくださるわ。早くドレスを仕立てなきゃいけないわね、何着いるかしら?夜会もあるから混み合うわよ。とにかく急がなきゃいけないわ。
今すぐ馬車を用意させましょ」

二人は興奮して慌てて部屋を出て行った

「哀れな人間だな」

「まったくです」

ラリーは大きくため息をつき、ラウルも嘲笑った
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※1/1アメリアとシャーロックの長女ルイーズの恋物語「【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者」が完結しましたので、ルイーズ誕生のエピソードを追加しています。 ※R18版はムーンライトノベルス様にございます。本作品は、同名作品からR18箇所をR15表現に抑え、加筆修正したものになります。R15に※、ムーンライト様にはR18後日談2話あり。  元は令嬢だったが、現在はお針子として働くアメリア。彼女はある日突然、公爵家の三男シャーロックに求婚される。ナイトの称号を持つ元軍人の彼は、社交界で浮名を流す有名な人物だ。  破産寸前だった父は、彼の申し出を二つ返事で受け入れてしまい、アメリアはシャーロックと婚約することに。  だが、シャーロック本人からは、愛があって求婚したわけではないと言われてしまう。とは言え、なんだかんだで優しくて溺愛してくる彼に、だんだんと心惹かれていくアメリア。  初夜以外では手をつけられずに悩んでいたある時、自分とよく似た女性マーガレットとシャーロックが仲睦まじく映る写真を見つけてしまい――? 「私は彼女の代わりなの――? それとも――」  昔失くした恋人を忘れられない青年と、元気と健康が取り柄の元令嬢が、契約結婚を通して愛を育んでいく物語。 ※全13話(1話を2〜4分割して投稿)

【完結】指輪はまるで首輪のよう〜夫ではない男の子供を身籠もってしまいました〜

ひかり芽衣
恋愛
男爵令嬢のソフィアは、父親の命令で伯爵家へ嫁ぐこととなった。 父親からは高位貴族との繋がりを作る道具、嫁ぎ先の義母からは子供を産む道具、夫からは性欲処理の道具…… とにかく道具としか思われていない結婚にソフィアは絶望を抱くも、亡き母との約束を果たすために嫁ぐ覚悟を決める。 しかし最後のわがままで、ソフィアは嫁入りまでの2週間を家出することにする。 そして偶然知り合ったジャックに初恋をし、夢のように幸せな2週間を過ごしたのだった...... その幸せな思い出を胸に嫁いだソフィアだったが、ニヶ月後に妊娠が発覚する。 夫ジェームズとジャック、どちらの子かわからないままソフィアは出産するも、産まれて来た子はジャックと同じ珍しい赤い瞳の色をしていた。 そしてソフィアは、意外なところでジャックと再会を果たすのだった……ーーー ソフィアと息子の人生、ソフィアとジャックの恋はいったいどうなるのか……!? ※毎朝6時更新 ※毎日投稿&完結目指して頑張りますので、よろしくお願いします^ ^ ※2024.1.31完結

妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。 国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。 「もう無理、もう耐えられない!!」 イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。 「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。 そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。 猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。 表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。 溺愛してくる魔法使いのリュオン。 彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる―― ※他サイトにも投稿しています。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

【完結】地味・ボンヤリの伯爵令嬢、俺様系王子様と一緒に魔女討伐に抜擢される

buchi
恋愛
親同士が決めた婚約者を勝ち気で派手な妹にとられた呑気でぼんやりのローザ。姉妹なら、どっちでもいいよねと言い出す親。王立フェアラム学園に入学し婚活に励むべきところを、ダラダラしてるだけのローザが突然、「膨大な魔法力の持ち主です! 魔女退治をお願いしたい、王太子殿下とご一緒に!」周りに押されて、無理矢理、魔女退治に出かける羽目に。俺様系王子のラブを生暖かく見守る有能側近、ゴーイングマイウェイの王弟殿下、妄想系脇役魔女が出ます。約10万字。63話。定番のハッピーエンド。

処理中です...