上 下
8 / 97

密会3

しおりを挟む
彼はそっと私を抱きしめた

「俺は諦めきれない、アリアンから離れることができないんだ。アリアンの側において欲しい。君を王族に戻すと約束する。だから俺の手を取って」

抱きしめる腕を解放すると両手で私の頬を包んだ

「愛してる俺のかわいいアリアン。
どうしたら頷いてくれるの?
君に触れていないとおかしくなりそうだ」

真剣な目で私を見つめるヴィルドルフ様に、私は正直に話す決心をした
彼の手にそっと自分の手を重ねると驚いたように瞳が大きくなった

「長い話になります、すべてお話します。けれど、人に聞かれては困ります。
誰にも聞かれない所で話したいです」

「わかった、用意しよう」

「ありがとうございます」

「アリアンは今、あの屋敷にいるのか?」

「はい、サマフォート公爵家の使用人として働いております」

「何ということだ‥」

「公爵家は私の母マリアの実家です。
当主のラリー様と息子のラウル様以外は私の素性は知りません。
私のことは皆没落した貴族の娘だと思っております」

「そんな」

「公爵様とお父様が私の命を守る為、平民の使用人としました。私の命を狙っていた者達は、私が死んだと思っております。ですから、見つかる訳にはいかないのです。
誰が敵か、どこまでが敵かわからない為そのように‥」

「なるほど、わかった。
私は国王と公爵と話し合おう。私が味方であることを伝えれば、事は動く」

「ヴィルドルフ様がそんな‥」

「公爵に話をつけてアリアンに連絡するよ。それまで待っていて。
俺は君を離すわけにはいかない。
分かってくれアリアン」

「ヴィルドルフ様」

「ヴィルと‥ヴィルと呼んで欲しい。
父と母はそう呼ぶよ」

私の指を掬い上げると口付けを落として微笑んだ

「では、私のこともアリーと‥
母が呼んでくれていたので。
今はアリーの名で屋敷におります」

「分かったアリー。心配しなくていい。
俺を信じていて」

「ヴィル様、分かりました。連絡をお待ちしております」

名残惜しそうに私を抱きしめた
ヴィル様との夢のような時間
もう一度会って全てを話したら、終わりにしなければならない
私は平民に落ちた娘で彼は大国の王太子
巻き込むわけにはいかない
ヴィル様まで危険な目に合わせたくない
だからこそ、次でお別れしなければ‥
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈 
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので 結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中

婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました

青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。 しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。 「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」 そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。 実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。 落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。 一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。 ※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております

【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。

海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】 クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。 しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。 失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが―― これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。 ※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました! ※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

【完結】婚約破棄!! 

❄️冬は つとめて
恋愛
国王主催の卒業生の祝賀会で、この国の王太子が婚約破棄の暴挙に出た。会場内で繰り広げられる婚約破棄の場に、王と王妃が現れようとしていた。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

【完結】指輪はまるで首輪のよう〜夫ではない男の子供を身籠もってしまいました〜

ひかり芽衣
恋愛
男爵令嬢のソフィアは、父親の命令で伯爵家へ嫁ぐこととなった。 父親からは高位貴族との繋がりを作る道具、嫁ぎ先の義母からは子供を産む道具、夫からは性欲処理の道具…… とにかく道具としか思われていない結婚にソフィアは絶望を抱くも、亡き母との約束を果たすために嫁ぐ覚悟を決める。 しかし最後のわがままで、ソフィアは嫁入りまでの2週間を家出することにする。 そして偶然知り合ったジャックに初恋をし、夢のように幸せな2週間を過ごしたのだった...... その幸せな思い出を胸に嫁いだソフィアだったが、ニヶ月後に妊娠が発覚する。 夫ジェームズとジャック、どちらの子かわからないままソフィアは出産するも、産まれて来た子はジャックと同じ珍しい赤い瞳の色をしていた。 そしてソフィアは、意外なところでジャックと再会を果たすのだった……ーーー ソフィアと息子の人生、ソフィアとジャックの恋はいったいどうなるのか……!? ※毎朝6時更新 ※毎日投稿&完結目指して頑張りますので、よろしくお願いします^ ^ ※2024.1.31完結

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈 
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

処理中です...